180 王制廃止
「辞めろ!何故儂が処刑されなければならない!?えぇい!その汚い手を離さんか!」
壇上で手脚を拘束されているトーラを数名の兵士が取り押さえる、力の限り抵抗するが所詮は只の老人、屈強な兵士達に腕力で敵う筈もなくやがて見るからに頑丈な椅子へ括りつけられてしまった。
「本来ならば処刑は専門の者が行うのだが…今回は私自ら引導を渡す、お前の様な臣下を生み出した責任は王である余にもあるのだ」
「ひっ!辞めてくれ!謝る!平民供に謝るから!儂を殺さないで下さい!」
兵士から一振りの剣を受け取った国王様がトーラへと歩み寄る、国王様は本気だ、本気で自らトーラの命を断とうとしている。
「余を非難するだけならば許す事もできた、しかしそんな段階はとうに過ぎてしまったのだ」
「嫌だ…死にたくない!死にたく!!」
椅子に括り付けられたトーラの首目掛けて剣が振り抜かれる、そして…トーラの首がポトリと地面へ落ちた。
「ここに逆臣トーラは討ち滅ぼされた!トーラ侯爵家は現時刻を持って廃爵、残された財産については今回の件で被害を受けた者の遺族へと分配する事とする!」
静まり返る聴衆、自分達の望んでいた事とはいえ目の前で人間が死んだ、その事実を飲み込めず混乱している様だ。
「ざまぁみろ、これでウチの親父も浮かばれるぜ、流石は国王陛下だ、まさか自分でトーラの首を刎ねちまうとはな」
「妹の仇よ!ありがとうございます国王陛下!」
「国王陛下万歳!!」
「陛下!ありがとうございました!」
我に返って人達が1人、また1人と拍手を始め広場は熱気に満ちていく、これだけ多くの人々に死ぬ事を望まれたトーラ、一体ヤツの人生とは何だったのだろう。
「皆、続けて聴いて欲しい事がある、少しの間私の話に耳を傾けて欲しい」
再び広場が静かになっていく、今回これだけ多くの人々を集めたのにはトーラの処刑の他にも理由がある、このグランズ王国の未来に関する重要な話だ。
「先程も申したが今回の騒動の責は私にもある、自分達を特権階級と思い込み身勝手な振る舞いをしていた一部の貴族達、その者達が増長するのを見逃し続けていたのは他ならぬ国王であるこの私だ」
前もって国王様からこの話を聞いた時は俺達もかなり混乱した、ラッカさんやペーギさんも驚いてはいたが反対はしなかった、国民達はどの様に考えるだろうか。
「私は…このグランズ王国より王制、貴族制を廃止しようと考えている、歴史ある我が国は国自体が年老いてしまった、既得権益にしがみつき際限無く自らの利益を追求する一部の人間がいる限りいつかまた必ずトーラの様な人間が現れる、それを防ぐ為には国民の1人1人が権力を持つ人間を監視し罷免できる権利が必要なのだ」