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179 罪の意識

審判の日が来た、王城前の広場に数え切れない程の人々が集まっている、今回の騒動で愛する者を失った者、住む家を失った者、その人々の注目を集めているのは壇上にいる1人の男性だ。


「この場は其方が自分の正当性を主張できる最後の場だ、グランズ王国国王ラオン=グランズ19世として今一度尋ねる、今回この様な騒ぎを起こした動機とは何だったのだ?其方には今回の件で命を落とした者の遺族に自分の口から説明をする義務がある」


集まった数万人の聴衆は誰一人として口を開こうとしない、静寂が広場を支配する、しばらくした頃拡声の魔道具を通し壇上の男がポツポツと語り始めた。


「…に食わなかった…気に食わなかったのだ、平民どもは我ら貴族に尽くす義務がある筈なのに陛下…いやそこの男は貴族と平民は等しい存在などと戯言をほざきはじめた、このままではいつか貴族の権利は失われてしまう、そうなる前にこの国を愚王と平民供から守る為に儂は決起したのだ!」


広場のあちこちにからどよめきがあがる、やがてどよめきは怒号へと変わり壇上のトーラ元侯爵へと向けられた。


「ふざけるな!!ウチの倅はテメェのワガママで死んだってのか!?アイツは来月に結婚を控えていたんだぞ!」


「返してよ…お母さんを返してよ…仕事が決まってこれから育ててもらった恩返しが出来ると思ったのに!この人殺し!」


「ぶっ殺してやる!この場でお前が無罪になったら俺の一生を掛けてでもお前をぶっ殺してやる!俺のダチは苦しみながら死んでいった!お前にはアイツの100倍の苦しみを与えてやる!」


マズい、あまりにも自分勝手な動機を聴いた人々が怒りの声をあげている、このままでは暴動に発展してしまう。


「静粛に!!トーラ元侯爵、率直に申してみよ、愛する者を失った民の声を聴き何を思う?少しは自らが起こした罪の重さを理解したか?」


「罪?何が罪だというのだ?儂は選ばれた者…貴族なのだ、平民供が幾ら死のうが知った事か、放っておけばまた勝手に増えるだろう?」


トーラは強がりや挑発でこの様な事を言っている訳ではない、平民に犠牲者が出た事が何故悪いか本当に理解出来ていないのだ、ヤツにとって人間とは貴族の事を指すのであり平民は謂わば家畜の様な存在、自分達の生活を潤す為の労働力としてしか考えていないのだろう。


「そうか…トーラ元侯爵、今よりその方の処刑を執り行う、最後に被害者へ謝罪の言葉が聞きたかったが残念だ、自分の罪を理解出来ていない者を無理矢理謝罪させてもそれは被害者への侮辱にしかならないだろう」

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