017 神甲アイギス
間違いない、アレは神甲アイギスだ。
VRMMOでその勇名を轟かせた『神甲アイギス』その防御力は比肩するものの無い最硬防具、破壊不能のシールドを貼る『イージス』と使用者を一定時間無敵状態にする『金剛』、2つの固有スキルを有する最高レアのガチャ装備だ。
なんでこの世界に?って呆けている場合じゃない!
「んー?どうしたクソ猿?お友達をたちゅけたいんでちゅかー?にしてもこっちのサルの匂いはどこかで…」
ドラゴニュートが片手で持ちあげたアルフさんの顔をまじまじと見つめる。
「…!!お前はあの時のガキか!?あぁ間違いねぇこの匂い!お前は俺がクソのリザードマンだった頃に食いそびれたあのガキだ!起きろ!!」
嬌声を上げながら気絶しているアルフさんの頬を叩く。
「……?!いったい僕は?イオタ!イオタは無事か!」
「ヤーーっぱりあの時のガキだ、お前の事探したんだぜぇ〜、お前の母親につけられた傷が痛くてね〜!ずーっとお前を探してたんだよ〜」
「お前は…あの時のリザードマン…?」
恍惚の表情だったドラゴニュートは急に怒りの形相になり地面にアルフさんを叩きつけた。
「ガハっ…!!」
「あ〜ゴメンね〜!君だけは楽には殺さないからね〜っ?!目の前で大切な人を一人づつ丁寧〜〜っに殺した後最後に殺してあげるからねぇ」
大切な物を扱う様に再びアルフさんを拾い上げるとパンパンと叩いて埃を払う。
「お前の母親につけられた傷のせいで俺はあの方に見捨てられたんだよ?もうこれ以上強くなれないの!かあいそうだね〜」
ドラゴニュートが涙を流す。
「だからあのクソ女が最期まで大切にしてた君だけはいーっぱい苦しめて殺してあげるからねぇ、楽しみだねぇ」
紫色の長い舌を出してペロペロとアルフさんの顔を舐める。
「あのクソ女と一緒の味ダァ…あのクソ女は最期までお前の名前を呼んでたよぉ、生きたまま俺に食べられながらねぇ、『アルフ〜逃げて〜』って泣きながらね、もう1人…?思いだした!『べータ〜アルフ〜』って泣きながら俺に食べられたんだぁ、美味しかったなぁ〜」
「貴様ッ!!殺す!!貴様だけは!離せ!殺すっ!!」
半狂乱になったアルフさんが抱えれたままジタバタと暴れる。
「黙れ!下等生物が!被害者はお・れ・な・の!あの方に見捨てられた俺が被害者なの!!」
プツンと俺の中で何かが切れた、隣を見るとサクヤの周りに紅いオーラが漂って頭にはオーラが凝縮された角の様なものが生えている。
「ユイトさん…わたし今…すっっっごく怒っています!!!」
「奇遇だな、俺もだ」
アイツは俺を怒らせた。