171 玩具
「どうした?我を倒すのでは無かったのか?弱き者よ、その様な弱き力では我に傷1つ付ける事すら叶わんではないか?」
偽神が近づいてくる、今の俺ではヤツに敵わない、絶望的な実力差がある、鬼神化しているのにこのザマだ。
「そうしたいのは山々なんだけどな…お前の事を甘く見過ぎていた様だ、参ったよ、俺の負けだ」
「当たり前だ、人が神に敵うわけがなかろう、同じ次元に存在していると思う事自体が間違っているのだ」
このままだと間違い無く殺される、何か打開策は無いのか、策を弄して勝てる相手では無いが逃げる事くらいは出来る筈だ。
「死ぬ前に1つ教えてくれ、お前はこの世界をどうするつもりなんだ?人間を滅ぼす事が目的なのか?」
「何故我が人間を滅ぼさなければならぬ?人間は我の玩具だ、しかし我はお前達人間の好む平和と言う物が気に食わぬ、観ていて退屈であるからな」
俺の問い掛けが余程見当違いだったらしく偽神は笑いをこらえる様な声で語る。
「永久の時を生きる我にとってこの世界の行く様を眺めるのが唯一最大の娯楽だ、動きのない世界を見ていても退屈でしょうがない、それ故に我は魔族を創り出した、人と争わせる為にな」
「そんな…自分の退屈を紛らわす為だけに….」
「何が悪い?お前達人間にだって虫や動物を争わせる娯楽があるではないか?我がやろうとしている事はそれと同じだ、その結果人間か魔族のどちらが滅びようと知った事ではない、そうなればまた新しい種を創るまでよ」
言葉が出ない、偽神にとって人間も魔族も只の玩具、考え方のスケールが違う、パフィン村で話した神様は偽神がこの世界を支配する為に魔族を創り出したと言っていたがそれは間違いだった様だ、それよりも数段タチが悪い。
「そうか…そんなに暇つぶしの玩具が欲しいのなら今ここで俺を殺さない方がいいと思うぞ?」
「何だと?どういう意味だ、申してみよ」
「今の俺じゃあお前に敵わない、でも俺はまだまだ強くなれる、俺は力をつけて全力で人間を…そして魔族を救っってみせる、お前の企みを止める、今ここで俺を殺せばお前はゲームの相手を永遠に失う事になるぞ」
これは賭けだ、偽神が激昂すれば今すぐに俺は殺されてしまうだろう、しかし勝算は有る、永遠の時を生きるヤツは娯楽に飢えている、俺の提案に乗ってくる確率は高い。
「……はっはっはっ!脆弱な人の身で有りながら我の計画の邪魔をすると?面白い、面白いぞ弱き者よ!我が力を与えたあの男とはまた違った面白さだ、いいだろう、お前の提案に乗ってやろう」