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170 顕現

エナハイ侯爵だった獣と睨み合う、少しでも気を抜けばヤツは即座に襲い掛かってくるだろう、狩猟神の耳飾りのスキルを発動しながらヤツを倒す方法を考えていた。


「グルルァァァ!?身体が燃える様に熱い!…意識が…薄れていく…」


「何が起こっている?偽核による変身の反動か?」


獣が身体に纏っている赤黒いオーラが膨張する、素となったエナハイ侯爵の身体に限界がきたのだろうか。


「嫌だ…記憶を失いたくはない…アード…ブーチ…お前達の事を…」


「なんだかわからないが今がチャンスだ、決着をつけさせて貰う!」


動きを止めた今が好機、咲夜を構え獣へと斬りかかる。


『!?ユイトさん!何か…何か凄くイヤなモノが来ます!気をつけて下さい!』


「この気配…今まで戦った魔族や魔人なんかとは次元が違う!」


猛烈に嫌な気配を感じ途中で脚を止めた、次の瞬間獣を中心に爆破が起きた、赤黒いオーラが渦巻き圧倒的な力を周囲にばら撒く。


「………………ここが現世うつしよか…」


先程までとは比べ物にならない程の圧倒的な力を感じる、ヤツに何が起こった?理解が追いつかない。


「ようやく現世に顕現できたと思えばなんだこの姿は?まるで獣ではないか…」


「誰だお前は?エナハイ侯爵…じゃ無いよな?」


「我はこの世を統べる者…お前達が神と呼ぶ者だ」


「神様だって?前に会った時とは雰囲気が…まさかお前が偽神ぎしんなのか?」


パフィン村でストークさんを介して話した神様は言っていた、自分をこの世界から引き剥がし世界を支配しようと企む者、偽神から世界を救う為に俺をこの世界に呼び寄せたと。


「偽神?我を偽物だとのたまうか…お前の身体から感じる忌々しい気配、そうかお前は創造神の加護を受けているのだな」


「お前を倒さない限りこの世界に平和が訪れないって事は聞いている、ここでお前を倒す」


「少々強い力を持っているからとつけあがるな人間、いいだろう、我を偽物だとのたまった罰を与えてやろう」


獣が俺を睨みつける、なんて威圧感だ、攻撃に備えて時詠みの力を発動する。


「ゴハッ!?なんだ…何が起こった…?」


未来が見えない、気がつくと俺は天蓋から弾き飛ばされ周囲に生えている木を何本もなぎ倒し近くに有った岩へと叩きつけられていた。


「脆弱な器だ、我を受け入れる事の出来る器を見つけ顕現したがこれでは使い物にならぬ、持って数分といったところか」


獣が俺へ近づいてくる、ダメだ、このままでは殺される、ヤツの強さは次元が違う、生き残る方法を考えるんだ。

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