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168 ケモノ

エナハイ侯爵だったモノが語気を強めて叫ぶ、見た目は四足歩行の獣になってしまったが人としての意識はある様だ。


「なっ、何を言っておる!?其方と儂は一心同体、共に理想の国を創ろうと誓いあったではありませぬか!」


「一心同体?ならば何故わが息子は死にお前は生きている、妻を亡くした私にとってあの子は命よりも大切な存在だった!」


獣に牙を剥かれたトーラが後ずさる、今にも泣き出しそうな情けない顔だ、こんな男の企てで多くの命が散ってしまった、蓋を開ければ只の小悪党だったこんな老人の企てでだ。


「ひっ!誰か!この化け物を殺せ!打ち取った者には褒美を出す!」


トーラの私兵達が武器を構える、先程から天蓋の入り口で中の様子を伺っていた者達だ、何が起こっているか分からずに呆然としていたが目の前の獣を見てやっと自分達の主人に危機が訪れている事に気付いたのだろう、つくづく間抜けな兵士達だな。


「か!掛かれ!トーラ様をお守りするのだ!」


「でもあの化け物ってエナハイ様なんじゃ?一体何がどうなっているんだ!?」


獣の放つ圧倒的強者の空気と目の前で起きた出来事に兵士達が混乱している、だがそれでいい、彼らが幾ら束になっても目の前の獣には敵わない、無駄に命を散らすだけだ。


「お前達!トーラを連れて外へ行け!この化け物は俺が相手をする!」


『ちょっ!ユイトさん何を言ってるんですか!?ここで捕まえないとトーラは逃げてしまいますよ!?』


『さっきの話を聞くにコイツは国王様やこの戦いに関わった人間を全員殺さないと気が済まないらしい、この場で止めなければ取り返しがつかない事になる』


『それでも!トーラのせいで死んでしまった人や傷ついた人がたくさんいます!許す事は出来ません!』


『だからこそだ、トーラには生きて裁きを受けて貰う、ヤツが死ぬのはここじゃない、処刑台の上だ、それにどうせ遠くへは逃げられないだろうさ』


脚を縺らせながら逃げるトーラを兵達が天蓋の外へ連れ出す、この戦いの大勢は決した、逃げたところですぐに捕まってしまうだろう、王都の外に逃げる為には国王軍の兵士がいる城下町を通らなければならない、王城を墜とせ無かった時点でヤツは詰んでいたのだ。


「随分と優しいのだな、だがムダな事だ、お前を殺した後であの男も必ず殺す」


トーラが逃げて行った方を見つめながら獣が呟く、ヤツは完全に憎しみに支配されている様だ。


「俺は殺されるつもりは無い、出来ればお前も殺したくは無いんだけどな、大人しく裁きを受けるつもりは無いか?お前も侯爵位を持つ貴族、最期は潔く有るべきだ」


「あの男から偽核を受け取った瞬間に貴族…人間である私は死んだ、今ここにいるのは復讐に狂う…一匹の獣だ!」


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