161 空へ
魔人の手から離れた偽核が落下していく、迷っている場合じゃない、魔人達を見逃す事になるがまずはこの偽核を人の居ない場所へと移動させなければ。
「よしっ!地面に落ちたら探し出すのに時間を取られるところだった、危ない危ない…」
なんとか空中で偽核をキャッチする事が出来た、後は人の居ない場所まで偽核を持っていくだけだがそれが問題だ、王都の街並みは広く、海に運ぼうとしても近海には往き来する船も多い為被害が出てしまう、偽核の崩壊までに人が居ない離れた場所まで運ぶのは無理だろう。
「イージスで崩壊を封じ込めるか?いや、玄武で遠くまで弾き飛ばした方が…」
ダメだ、冷静になれ、イージスで崩壊を封じ込めには失敗した場合のリスクが大き過ぎる、玄武で弾き飛ばすにしても見当違いの場所へ飛ばしてしまったらリカバリー出来ない、多くの人命を賭けて一か八かの方法に出る訳にはいかない、確実な方法を考えるんだ。
「クソっ!時間が無い!考えろ…考えるんだ…」
偽核の放つ淡い光が脈動する、時間が無い、確実に被害を減らす方法を考えろ、俺の持つ全ての能力で出来る事を考えろ、何か方法が有る筈だ。
「人の居ない場所…そうか!その手が有った!」
残された僅かな時間で王都の外へ偽核を運ぶ事は不可能、だが王都の外へ出なくても確実に人の居ない場所がある事に気付いた、俺は自分の頭上を見上げ飛翔の力を使い空へと舞い上がる。
『どうしちゃったんですか!?時間が有りません!早く人の居ない場所へ偽核を運ばないと…まさか!』
「そうだ、残された時間で被害を出さない方法はこれしか無い」
『でも…そんな方法じゃユイトさんが危険です!』
「安心してくれ、ちゃんと自分の身の安全も考えているって、とにかく出来るだけ高く飛び上がるんだ」
全速力で王都の上空へと向かう、俺が見つけた絶対に人の居ない場所、それは王都の空高くだ、遥か上空で偽核を崩壊させれば地上まで崩壊の余波が届く事もないだろう。
『もう…本当に大丈夫なんですね?ユイトさんはいつもいつも無茶ばっかり…でもそれでこそ私の大好きなユイトさんです』
「なっ!こんな時に何言ってるんだよ、動揺して偽核を落とすところだったぞ」
『ふふっ、いつもユイトさんにハラハラさせられてるお返しです』
手に持っている偽核の脈動が早くなる、ここら辺りが限界だろうか、遥か下には王都が小さく見えている、俺は上空へ加速しながら手に持った偽核を全力で空の彼方へ投げ飛ばした。