154 守る為に
城壁の左翼へ近づいた私達の目に飛び込んで来たのは色とりどりの魔法が城壁へ迫っている光景でした、あんな数の魔法が着弾すればどれだけ頑強な城壁でも一溜まりもありません。
「ぐっ…攻撃の範囲が広すぎる…広がれ!イージス!!」
アイギスちゃんが展開したイージスの範囲を広げます、普段のドーム型とは違いオーロラの様に広がった光が次々と放たれてくる敵の魔法を防ぎます。
「た、助かったのか?あの光の壁は一体?」
近くで身を屈めていた兵士さん達が次々とイージスに防がれ爆破する敵の魔法を見ながら呆然としています、きっと自分はもう死んでしまうと思っていたのでしょう。
「長くは持たない、死にたくなかったら逃げるべき…はよ!」
何とか敵の攻撃を防ぐ事が出来ましたが攻撃が緩む気配はありません、イージスを展開するアイギスちゃんは辛そうに歯を食いしばっています。
「サクヤも…早く逃げ…て…」
「嫌です…私は自分のやるべき事をする為にここに来ました…鬼火弐式!!」
私は無数の小さな火球を敵の魔法を撃ち落とす様に放ちました、空中で互いが相殺され辺りの空が紅く染まります、その光景を見て混乱したのか激しかった敵の攻撃が止まりました。
「アイギスちゃん!もうイージスを解除しても大丈夫ですよ!」
「ぷはぁ!!正直もうダメだと思った、コレが無かったらとっくに力が尽きていた、感謝」
アイギスちゃんが自分の首に掛けられている首飾りを手に取ります、中心には黄色に輝く七星核が嵌められています、ライノさんに作って貰ったお揃いの首飾りです。
「私も七星核が無ければあんなに沢山の攻撃を撃ち落とす事は出来ませんでした、ライノさんに感謝しなきゃですね」
「今度火酒を持ってお礼に行くべき、ドワーフはお酒が大好き、本に書いてあった…サクヤ!アレを見て!」
アイギスちゃんに言われ城壁の端から敵の陣形を見下ろすと混乱が収まった様で再び魔法の詠唱を開始していました。
「サクヤ、逃げるべき、さっきの規模の攻撃が来たら長くは防げない」
「いえ、次は私が頑張る番です、アイギスちゃんは少し休んでいて下さい」
城壁の下に陣取る大勢の敵を見ながら私は再び沢山の鬼火を周囲に展開します、鬼火の数はどんどん増えてその数は1000を超えたでしょうか。
「貴方達に恨みはありません…それでも…私は大切な人達を危険な目に遭わせる訳にはいかないんです!鬼火弐式!!」
私の周囲に展開していた無数の鬼火が敵目掛けて飛んでいきます、できるだけ地面を狙い直撃は避けましたがこの攻撃で命を落とす人もいるでしょう、鬼火弐式が着弾した地点に次々と小さな爆発が起こり敵は陣形も滅茶苦茶に逃げ惑っています。
「逃げるなら追撃はしません!!でも…向かってくるのならば次は容赦しません!死にたく無い人は退いて下さい!!」