151 王国諜報室
「ところでサクヤちゃん、ここに残ったのはアンタ達2人だけかい?」
「はい、ユイトさんは城下町で暴れている魔族を止めに行きました、テミスちゃんとメリッサさんも一緒です」
「やっぱり侯爵派と魔族が繋がっていたって考えは正解だったみたいだね、兵士が出払ったタイミングを狙って蜂起したに違いない、本当にロクでもない事を考えつく連中だよ」
「主さまは私達を信じて城下町へ向かった、その信頼に応える為にも必ずお城を守り通してみせる」
ラッカさんの言った様にきっと侯爵派の貴族達は街で魔族が暴れるタイミングに合わせて蜂起を決意したのでしょう、だとすると城に攻め入る戦力にも気を付けなければいけません、ザラキマクの時の様に魔族が1人だけとは限らないのですから。
「陛下、奥様、私は城壁の外へでて彼奴等の進行を少しでも遅らせる工作を行おうと思います、何卒お許し下さい」
「ペーギ、先程も言ったが私も先生も今回の件お前に落ち度は無いと思っている、責任を感じて命を粗末にする様な真似は許さないよ」
「陛下…しかし私は死ぬつもりでこの様な事を申している訳ではございません、私に出来る事をする為でございます」
「行かせてやってくれないかい?ペーギは自分の力を最大限発揮出来るようにこんな申出をしてると思うんだ、前王室諜報室の室長としての力をね」
王室諜報室?確かアイロンスティールでお世話になったカッパーさんも国王様に仕える諜報員さんだった筈です、ペーギさんはその諜報室に以前勤めていたと云う事なのでしょうか?
「わかった、必ず生きて戻ってくるんだよ、先代の影の力を連中に思い知らせておいで、国王としての命令では無く友人としてのお願いだ」
「勿体無きお言葉…王国諜報員最高の称号、影の名に泥を塗らない様に務めて参ります、と言ってももう影の名は返上致しましたが」
「影…ですか?さっき宝物庫で探し物を手伝ってくれた女の子も影さんって名前でした、もしかしてペーギさんがその子の言ってた師匠さんなんですか?」
「サクヤ様達はあの子に会われたのですな、確かに私はあの子に諜報員としての技を教え込みました、あの歳で影の名を継ぐに相応しい実力をの持ち主、末恐ろしい才能の持ち主です、そそっかしいところが玉に瑕では御座いますが」
やれやれと溜息をつくペーギさんの表情が優しく緩みます、まるで孫の事を話すお爺ちゃんの様です。
「それでは行って参ります、皆様、くれぐれもご無事でいて下さいませ」
ペーギさんが部屋から出ると入れ替わりで1人の兵士さんが部屋へ駆け込んで来ました、随分急いで来た様で息を切らしています。
「申し上げます!トーラ侯爵率いる一団が貴族街を通過中との連絡が入りました、間も無く王城へ到着するものと思われます!」