148 再生
朱雀の爆炎の中から姿を現したブーチ、無数の触手で身体を守りダメージを負った様子は無い。
「さぁ、私を楽しませてみろ！」
無数の触手がこちらを目掛け伸びてくる、ビズミスの時もそうだったがあの触手の再生能力は尋常じゃない。
「厄介なヤツめ、五月雨！！」
「ムダだムダだ、いくら切り落としても私にはダメージはないぞ」
空中を飛び回りながら迫ってくる触手を切り飛ばす、このままではジリ貧だ、いずれ触手に絡め取られてしまう。
「マズいッ！イージス！」
触手の対応で手一杯になっていたところに狩猟神の耳飾りから警告が走った、先程ブーチが空中で放った物と同じ光線がイージスの障壁に阻まれる。
「フハハハハ！どうした？防戦一方じゃないか勇者ユイト殿？貴様の実力はこんな物か？いや…私が強くなりすぎたのかも知れないな」
ブーチが高らかに笑い声をあげる、悔しいがその通りだ、俺の攻撃はあの触手が有る限りヤツには通らない。
「はぁはぁ…確かにお前は強いよ…」
「急に殊勝になったな、命乞いのつもりか？」
「だがな…街の人達を酷い目に遭わせたお前を野放しにはできないんだよ！朱雀！青龍！」
２つの最上位剣スキルを同時に放つ、ブーチは全身を触手で包み込み防御体制に入った、とにかくあの触手をどうにかしないと埒があかない。
「貴様の攻撃では私に傷をつける事は出来な…何っ！？」
「触手ごとお前を消し飛ばす！？混ざれ！蒼紅爆烈波！！！」
ブーチの眼前で朱雀と青龍が軌道を変え衝突する、そこを中心に猛烈な爆発が発生した。
「どうだ…跡形も無く消し飛ばしてやったぞ」
土煙が収まった時そこにブーチの姿は無かった、あれ程の爆発でダメージを負って無いとは考えられないがまだ禍々しい気配は消えていない。
「あれは…ブーチの破片か？…動いている！？」
周囲に飛び散った赤黒い肉片が一箇所に集まる、肉片はお互いに合体し人の形になった。
「本格的に化け物だな…何でもアリかよ」
「今の攻撃は少しばかり慌てたぞ、やはり貴様は油断ならん」
どうする、触手だけでも十分厄介なのに加えてこの再生力だ、こっちも鬼神化するか？ダメだ、サクヤは今頃王城で侯爵派と戦っているだろう、今鬼神化すれば王城の戦力が手薄になってしまう。
「私があの程度で死んだと思ったのか？心外だな、まだ私を格下だと勘違いしている様だ」
「まさか、十分に強敵だと思ってるさ」
再生する肉体、昔MMORPGで戦ったスライムタイプのボスモンスターを思い出す。
「待てよ…スライム…？その手があったか、試してみる価値はあるな」
