146 変貌
魔族らしき反応は間違い無く広場の方へと近づいて来ている、そうはさせるか、再び飛翔の力を使って空を飛び禍々しい気配の元へと向かう、しばらく飛ぶと俺と同じ様に空を飛んでいる人影を発見する事ができた。
「アイツが街をこんな有様にした犯人か…これ以上街に被害を出したくない、適当な場所へ誘導できればいいけど」
俺と魔族が戦闘になれば周囲に被害が出る可能性が高い、できる事ならどこか人が居なくて広い場所で戦った方がいいだろう。
「こっちに気づいたか!?いいぞ、こっちだ!付いて来い!」
魔族が俺の存在に気づいた様だ、スピードを上げて一直線にこちらへ向かって来る。
「あの公園にするか…!?イージスッ!!」
城下町の外れに有る公園へヤツを誘い込もうした時突如背後から殺気を感じた、慌ててイージスを展開すると背中から衝撃が襲って来る。
「危ない危ない、間一髪だったな、コイツはお返しだ!真空波!」
空中で反転し咲夜を振り抜く、放たれた真空の刃が魔族目掛けて飛んでいく、狙いが良かった様だな、これは直撃コースだ。
「今の私にそんな技が通用すると思うな!」
真空波は再び魔族が放った光線とぶつかり相殺された、辺りが一瞬眩しい光に包まれる。
「なっ!?お前は…なぜお前がここにいる!?」
「やはり貴様か…会いたかった…会いたかったぞぉ!」
光が収まると知った顔の男が空中に浮いていた、そんな筈はない、確かにヤツは人間だった筈だ、それが何故翼を生やし空を飛んでいる?
「ブーチ!?何だその姿は!?お前が城下町をこんな風にしたのか!?」
「そうだ、私を騎士団の詰所の様な汚しい小屋に閉じ込めた罰を与えたのだ、たかが騎士の分際で侯爵家の嫡男である私の命令を聞こうともしなかった、当然の報いだな」
「やり過ぎだ!お前のせいで大勢の怪我人が出たんだぞ!?きっと命を落とした人だって…第一住民達は関係ないだろ!?」
「関係ない事は無い、どこぞのドワーフを筆頭に平民共は最近少しばかり調子に乗り過ぎていた、これも私からの罰だ」
なんてヤツだ、以前から貴族は平民に何をしても許されると云った考えを持っていた様だが今回の件は度が過ぎている。
「しかし私が本当に罰を与えたいのは…お前だぁぁぁ!ユイトォォォ!!」
ブーチが俺の名前を叫びながら突撃して来た、肌の色は赤黒くなり背中からは同じ色の翼が生えているが間違い無い、姿が変わっているがこの男はエナハイ家の嫡男、ブーチだ。
「疾いっ!間に合うか!?イージス!」
向かってくるブーチに対して再びイージスを展開する、俺達は縺れ合いながら町外れの公園へと落下していった。