145 救助
「その怪我人は俺に任せて下さい!必ず救ってみせます!」
「ア…アンタは勇者様かい!?回復魔法が使えるのか?何でもいい!コイツを助けてやってくれ!俺に出来る礼なら何でもする!ガキの頃からの親友なんだ!」
血塗れの男の傍に立ち生命の指輪を近づける、指輪から癒しの光が放出され男を包み込んだ、以前メリッサが海竜様を癒した時と同じ様な光だ。
「ん…んん?ゴフッ…俺は一体…?」
光が収まり少しすると男が意識を取り戻した、良かった、なんとか間に合ったな。
「相棒!大丈夫か!?良かった…本当に良かった…」
「身体の傷は治ったと思いますけどしばらくは安静にしておいて下さい、俺は他の怪我人を助けにいきます、それでは」
これであの人は大丈夫だろう、しかし他にも怪我人はごまんといる、ここからが正念場だ、1人でも多くの人を救わないければ。
「ありがとう勇者様!相棒を救ってくれた恩は絶対に忘れない!いつか必ず礼をするからな!」
兵士の言葉を背に受けながら次の怪我人のもとへ向かう、何人か治している途中に広場の中央にに重症者が集められている場所がある事を教えて貰えた。
『メリッサ、広場の中央に向かってくれ、怪我の酷い人が集められているらしい』
『えぇ、私の方は重症者はもういないみたいだから大丈夫よ、ユイトくんの方はどう?』
『こっちも後は軽症ばかりみたいだ、回復魔法が使える人に任せても大丈夫だろう』
メリッサの向かった方が怪我人が多かったのに流石だな、俺の治癒の力は多人数を同時に治療する事が出来ないがメリッサのキュアーならば広範囲の人間を同時に治療する事ができる。
『ユイト!マズいわ!例の魔族が移動を始めたの、こっちに向かってくるわ!』
『クソっ、まだ広場には怪我人がいる、今襲われたら一溜まりもないぞ、喰い止めなければ…メリッサは怪我人を頼む!』
『無理はしないでねユイト君!怪我人の事は任されたわ』
まだ広場には怪我で動けない人が沢山いる、騎士団の詰所を壊滅させる様な力の持ち主に襲われれば全滅してしまうだろう。
『テミスもここに残って魔族の動きを兵士さん達に伝えてやってくれ、避難する時の助けになる』
『もう!アンタはまたそうやって1人で突っ走って!…でも仕方ないわね、確かに避難する時に敵の動きが判れば助けになるわ、約束して、絶対無事に帰ってくるのよ!』
『必ず無事に戻る、それじゃあまた後でな!』
テミスとメリッサに広場の皆を任せ禍々しい反応のする方へと向かう、今までに戦ってきた魔族よりも強い力を感じる、十分に気を引き締めなければいけないな。




