142 警報
「ユイトさん、神靴ヘルメスには私達みたいに宿っている人は居ないんですかね?」
「あれ?言われて見れば確かに、今までだと俺が依代を身に付けたタイミングで現れていたけど…」
どう云う理屈かは分からないが今まで俺がVRMMOで身に付けていた装備品には其々に宿っている女神がいた、今回に限ってはその気配が無い、何故だろうか。
「うーん…神様なら何か知っているだろうけど連絡が取れない以上どうしようも無い、気になるな」
サクヤを始め全員何故この世界に来てから具現化出来る様になったのかは解っていないままだ、皆で色々な考察を話し合っていると突然大きな鐘の音が響き渡った。
「何だ?やけに激しく鳴り響いているみたいだけど?」
「この鐘は!?皆ごめん、ボクちょっと仕事が出来ちゃったみたい、また今度色々と話を聞かせてよ、それじゃあ!」
「おい!一体何が起こってるんだ?…ってもう居なくなっちゃったのか、すばしっこいヤツだな」
影は俺達に別れを告げるとあっと言うまに姿を消した、流石は密偵、まるでアニメや漫画の忍者みたいだな。
「ユイト、何だか嫌な予感がするわ、ひとまず何が起こっているのか情報を集めましょう」
「そうだな、誰か事情を知ってそうな人を捕まえよう、この辺りは人が少ないから城の入り口辺りに向かうか」
宝物庫を離れ来た道を戻る、城のあちこちで忙しそうに走り回る兵士達を何度か見かける事ができた、その中で見覚えがある兵士が俺達を見つけ駆け寄ってくる、宝物庫へ向かう時に案内をしてくれた人だ。
「ユイト殿!こちらにおられましたか!陛下が大至急ユイト殿とお話ししたい事があるそうです、こちらにお願いします」
「一体何が起こっているんですか?それにさっきの鐘の音は?」
「申し訳ありませんが情報が錯綜して私にも何が起こっているのかわかりません、ただ…先程の鐘は王都内の全戦闘員を招集する警報、何か問題が起こっているのは確実だと思います」
このタイミングで王都内の全戦闘員を招集する緊急事態か、侯爵派が動き始めたのか?そうだったとしたら前もって何か情報が入ってそうだが。
「こちらの会議室に陛下がおられます、私は招集に応じる為ここで失礼致します、それでは」
「ありがとうございました、何が起きてるか分かりませんがどうかご無事で」
案内してくれた兵士に別れを告げ会議室へと近づく、部屋の前にいた見張りが俺達の姿を確認しドアをノックする。
「報告致します、ユイト殿御一行が到着されました」
見張りの兵士が中にいる人物へと俺達の到着を知らせるとすぐにドアが開いた、国王様なら何が起こっているか情報をつかんでいるだろう。




