141 神靴ヘルメス
念話を飛ばし宝物庫の入り口にある広場に皆を集める、探し物が見つかった事を知らせると5分程で全員が集合した。
「主さま、それが探していた装備?それにその女の人は誰?」
「あぁ、間違い無くこれは俺が探していた装備の一つだ、この影が探し出してくれた」
「皆がユイトのお仲間さん?はじめましてだね、ボクは影、グランズ王国で密偵の仕事をしてい…やっぱり今のナシ!密偵ってバラしたら師匠に怒られちゃう!」
「あらあら、面白い子ね、私達の探し物を手伝ってくれてありがとう、良かったら私達ともお友達になってくれないかしら?」
メリッサが差し出した手を影が照れながら握る、影の正体は密偵だったのか、それにしてはすぐにボロを出していたな、師匠とやらに怒られなければいいけど。
「へへ、歳の近い友達って初めてだからなんだか照れちゃうよ」
「皆仲良くなったところで新しい装備の実験を初めよう、この靴は『神靴ヘルメス』VRMMOでも猛威を振るっていた正真正銘のブッ壊れ装備の一つだ」
「知ってる、主さまが100円で当てて凄く喜んでいた、正直あの踊りはちょっと引いた」
「そうか…アイギスは俺が当てたガチャ装備の中でも古参だからあの時の事も見ていたんだな…出来れば忘れて欲しい、1発でお目当ての装備を当ててテンションが変になっていたんだ」
基本的に俺はガチャ運が悪い、新しい装備が実装される度に給料の大半を叩いてガチャを回していたがこの神靴ヘルメスの時だけは違った、俺にとって思い出深い装備だ。
「ガチャ?VRMMO?何の話をしているのかな?でも何だか聞き覚えがある様な…」
「話せば長くなるからまたいつか機会があれば話すよ、それよりも神靴ヘルメスの実験だ、皆、良く見ていてくれよ」
俺は先程履き替えた神靴ヘルメスに意識を集中しVRMMOで履いていた時の感覚を思い出す…来た!この感覚だ。
「ユ…ユイトさんが浮かんでいます!」
「よし!コツを思い出せるか不安だったけど大丈夫みたいだな、これが神靴ヘルメスの能力の1つ『飛翔』だ、空に浮かぶだけじゃ無くてこんな事もできるぞ」
俺は宝物庫の広場を縦横無尽に飛び回ってみせる、この世界でも飛翔の力は問題なく使える様で一安心だ。
「ザラキマクで魔族と戦った時は空を飛ばれてちょっと苦戦してしまったからな、これで空を飛ぶ敵との戦いも安心だ」
ある程度実力の拮抗した相手との戦いで空を飛べるか否かは死活問題だ、戦闘面以外でも旅を続ける上で空を飛べる事によるアドバンテージは計り知れない、神靴ヘルメスを手に入れた事で出来る事の幅はかなり広がったと思って良いだろう。