137 身辺調査
国王様との謁見から数日経った、侯爵派がすぐに何か動きを見せると思っていたが今のところ特に何も起こってはいない、いつもの様にバルメス家の庭で日向ぼっこをしていると背後に人の気配を感じた。
「いたいた、こんな所でボーっとしてどうしたんだい?まるで年寄りの爺さんみたいだよ」
「ここは陽当たりがいいからのんびりするにはいい場所なんですよ、俺に何か用ですか?」
「あぁ、この前ペーギにブーチの身辺調査を頼んどいただろ?その事で皆に話したい事があるそうだ、サクヤちゃん達と一緒に居間へ集まってくれないかい?」
「わかりました、皆も屋敷の中にいるだろうからすぐに向かいます」
念話でサクヤ達に居間へ集まる様に伝えると5分もせずに集合できた、居間のテーブルにはいつもの様にお茶とお菓子が用意されている、どうやらペーギさんが用意してくれた様だ。
「皆様、急にお呼びだてして申し訳ありません、エナハイ家について調べていたのですが少し気になる事があり是非ご報告をと思いまして」
「何か掴んだんだね、些細な事でも構わないから報告しておくれ」
「かしこまりました、しばらく前からエナハイ家に接触している人物の中に身元不明の商人風の男がいるのですが…」
「貴族の屋敷に出入り出来る商人の身元が分からない?変な話だね、ウチもそうだが普通貴族はどこの誰かもわからない人間を屋敷に招いたりはしないよ」
確かに貴族ともなると誰かれ構わず屋敷に招き入れる様な真似はしないだろう、確かにその話は気になるな。
「街の商人達に話を聴くとエナハイ家で必要になる品は屋敷の使用人達が買い出しに行き、屋敷へ出入りしている商人など聞いた事が無いとの事でした」
「あの家は平民を毛嫌いしているからね、自分の屋敷に平民が出入りするのも嫌なんだろう、確か使用人達も田舎の貴族の子弟で揃えていた筈だよ」
「その通りです、それだけに商人風の男の存在が不自然なのです」
「もしかするとその男が魔族かも知れませんね、俺は今まで何人か魔族を見てきましたがパッと見は人間とあまり変わりがありません、もしヤツらが変装していれば誰も魔族だとは気づかないでしょう」
厄介な事になったな、今まで俺が戦った魔族は直接人間を襲ってきた、しかし今回の魔族は人間を使い何かを成し遂げようとしている。
「その商人風の男の家や寝ぐらはわからないんですか?」
「申し訳ありません、途中までは尾行できたのですが見失ってしまいました、おそらく私の存在に気づいていたのでしょう」
「ペーギの尾行に気づくなんて只者じゃないね、でもその男の存在が分かっただけでも収穫だよ、エナハイ家が魔族と繋がっていると考えて間違いなさそうだ」
人間と魔族が手を組む、今度の魔族は厄介な相手になりそうだ。