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135 芝居

「へ!陛下!何を考えておられるのですか!?王族ともあろうお方が勇者といえ平民に頭を下げるとは!?」


どよめく貴族達の中から1人の男が悲鳴にも似た声をあげる、恰幅の良い初老の男性だ、白髪を後ろに流し立派な髭を蓄えている。


「トーラよ何故声を荒げておる?私はこの国の代表として臣民を救ってくれた勇者殿に礼を言っただけだ、何が問題が有る?」


「恐れながら陛下は王族の権威を軽視されておられるご様子、王族が平民に対して頭を下げる、それは即ち王族や、延いては我ら貴族の権威の失墜を意味するのです」


なるほど、あの爺さんが侯爵派のリーダー、トーラ侯爵か、良く見れば底意地の悪そうな顔をしているな。


「トーラ…いやジマタテ侯爵よ、今日私はこのユイト殿を客人としてこの場へ招いた、先の発言は私の客人に対する侮辱と考えて良いのだな?」


「そ…それは…出過ぎた真似を致しました…申し訳御座いません」


「謝罪の相手は私ではない、ユイト殿、トーラの無礼を許してはもらえないだろうか?」


「許すも何も別に私は何とも思っていません、大丈夫です」


トーラ侯爵が頭を下げながら俺を睨み付ける、ビズミスやブーチ、この手の貴族はプライドを傷つけられるのを何よりも嫌う、どうやら完全に逆恨みされてしまった様だ。


「ユイト殿が広い心の持ち主で良かったな、これに懲りて平民を馬鹿にする様な態度を改めるがいい、以前より平民に対するお前の態度は目に余ると感じていたのだ」


「…以後気をつけます」


それだけ言うとトーラ侯爵は俯いて大人しくなった、しかしその眼からは素直に反省している様子などまるで感じる事は出来ない。


「さて話を戻すとしよう、ユイト殿、今日はザラキマクにいる我が友バルメス公爵より書状を預かって来ているとの話だったが…」


来た、トーラ侯爵の横槍が入って話が脱線しかけたが今日の謁見の本場はこれからだ。


「はい、ザラキマクを発つ時にバルメス公爵から直接預かって来ました、この書状です」


俺は懐から青の書状を取り出す、下手をすると内乱の引き金になりかねない危険物、青の書状を目にした貴族達が騒ぎだす。


「…ユイト殿、確認するがこの書状はクラブ…バルメス公爵から預かった物で間違いないのだな?」


「確かに直接預かりました、間違いありません」


国王様が青の書状の封を開け目を通す、俺も何が書かれているかは知らないが国王様の表情は険しい、これも演技なのだろうか。


「皆、悪いが本日の謁見の儀はこれにて終了する、ユイト殿とバルメス夫人には詳しく話を聞きたい、後程私の政務室まで脚を運んでくれ」


険しい顔をした国王様の言葉を聞き貴族達の騒めきが一層激しくなる、これで種は撒かれた、後は侯爵派の貴族達がどの様な動きを見せるかだ。

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