134 謁見
「ラッカ=バルメス公爵夫人!旅人のユイト殿ご到着致しました!」
巨大な扉がゆっくりと開く、部屋の中で誰かが俺達の到着を知らせる為に声をあげた。
「しまった…アンタに礼儀作法を教えるのを忘れていたね、とりあえず私の真似をしとけば大丈夫さ」
部屋の中には多くの貴族や騎士が俺達を出迎える様に列を作っていた、皆ドレスや豪華な服に身を包んでいる。
「あの殿方が巷で噂の勇者様ですの?思ったよりお若い方ですわね」
「あぁ!バルメス夫人は今日もお美しい!バルメス公爵が世の男性のやっかみを受けるのも頷けますな」
「なんでもあの勇者殿はバルメス家の客人として招かれているそうだ、噂の勇者殿を招いたとなるとバルメス家は益々勢い付いていくだろう、羨ましい限りですな」
広間に敷かれているフカフカな赤絨毯の上を歩く、周りの貴族は皆俺達の噂をしている様だ。
「皆様!御静粛に!国王陛下のご入場で御座います!」
俺達が玉座の前に到着すると騎士の1人が声を張り上げた、先程までざわめいていた広間が嘘の様に静まり返る。
「ラオン=グランズ19世陛下ご入場!」
先程の騎士が再び声を上げると広間に銅鑼の音が響き渡った、その音を合図にラッカさんを含め広間に居る全ての貴族が玉座へ向かい跪いたので慌てて皆の真似をする。
「皆の者、今日は良く集まってくれた、楽にするが良い」
国王様の声が広間に響く、拡声器の様な魔道具でも使っているのだろうか、皆が立ち上がったのを確認し俺も立ち上がる。
「バルメス公爵夫人、其方の顔を見るのも久しいな、こうして元気な顔を見る事が出来嬉しく思うぞ」
「我が身をお気遣い頂いて恐縮の極みで御座います、陛下におきましても御息災でお過ごしの様でなによりで御座います」
「うむ、して本日は街で噂になっている勇者殿を連れて来たとの話だったが…隣に居る男が?」
国王様が俺に目配せする、話しても良いと云う合図みたいだ、それにしてもこの前酒場の地下室で会った時とは身に纏う雰囲気が違う、別人みたいだ。
「はい、俺…いや私は旅人のユイトと申します、この様な場に慣れていないんで失礼が有れば申し訳ありません」
「気にせずとも良い、私も其方とは一度話をしてみたかったのだ、其方の勇名は我が耳にも入っておる」
丁寧な言葉遣いや立ち居振る舞いなんて全く分からない、国王様や周りの貴族の反応を見るにそんなに失礼な事をしている訳では無い様で一安心した。
「まずは其方に礼を言おう、アイロンスティールにザラキマク、それに未確認だがイール村やエルフの集落でも其方は我が臣民の命を救ってくれたそうだな、この通りだ」
国王様が立ち上がって俺に頭を下げた、その瞬間広間にどよめきが走った。