131 嘘
「騎士団風情が我ら貴族に命令するとは何事だ！しかし丁度良い所に来た、先程の無礼は許してやるからこの平民を切り殺せ、これは命令だ」
ブーチの仲間達が駆け付けた騎士団へ命令を飛ばす。
「その様な命令は聴けない、もう一度繰り返す、武器を収めよ」
「貴様等騎士団は我ら貴族を守るのが仕事だろ！？何故命令を聞かぬ！？」
騎士達は命令を聞くつもりは無さそうだ、剣を抜こうともしない、この場は大人しく騎士団に従った方が良さそうだ、俺は咲夜の柄から手を離す。
「それは騎士団の職務は王都の治安維持だからだ、彼らは決して貴族の私兵では無い、お前達はその様な事も知らないのか？」
「誰だ貴様…！？へ、陛下！？何故この様な場所に！？」
騎士団の後ろから馬に乗って国王様が現れた、乗っているのは騎士団の詰所に居た馬の様だ、隣には同じ様に馬に乗った騎士達が控えている。
「お！畏れながら申し上げます！この平民はエナハイ家が長子ブーチ殿へ斬りかかり狼藉を働いたのです！我らがこの者を殺す事をお許し下さい」
「ふむ…この者が城下で武器を取りエナハイ侯爵家の者に乱暴したと申すのか？」
「はっ！間違いございません！」
「それが誠であるなら由々しき事態、して証拠はあるのか？」
証拠と云う言葉に貴族達がピクリと反応した、さて見ものだな、一体どう答えるつもりだろう。
「私達ははっきりと目撃しました！確かにその者が！？ヘブゥ！！？」
「何事だ！？総員陛下をお守りしろ！何者かに襲撃を受けている！」
俺は先程の様に無拍子を発動し嘘をつこうとした貴族の鳩尾へ咲夜の柄をめり込ませた、騎士団も俺の攻撃を見切れなかった様で慌てて国王様を守ろうとしている。
「さっきも今みたいに『謎の襲撃者』が貴族様に攻撃を仕掛けたんです、俺にもどんな攻撃かは見えませんでしたが」
「うむ、何者かが侯爵家の子弟を襲撃したのは間違いない様だ、騎士団に告ぐ、至急『謎の襲撃者』の手がかりを追え！」
国王様と目が合う、どうやら俺の考えを汲み取ってくれた様だ。
「この場にいる貴族は全員騎士団の詰所へ向かえ、身の安全を守る為にしばらく詰所にて身柄を預かる、この者達を連れて行け」
国王様の命令で残っていた騎士が気を失ったブーチとその仲間達を連れて行く、流石のヤツらも国王様の命令には逆らえないらしく騎士達に囲まれて渋々と従っていた。
「ユイト君、悪いが今日は一旦クラブの屋敷に帰ってくれ、火災の事も含めて後日また話をする時間を作りたい、日時が決まったら使いを寄越す」
国王様は俺に近づくと小声で呟き騎士団と共に詰所へと帰って行った。
