128 火災
夜の城下町を騎士達と走る、急に国王様が現れた事に混乱した詰所の騎士達だ、国王様は騎士達へライノさんの店へ向かう様に指示を出してくれた。
「ユ…ユイト様!もう少し速度を落とせませんか?この速度ではついていけません」
あまり速度を出しているつもりは無いが騎士達は息も絶え絶えだ、しかしこれ以上速度を落とせばそれだけライノさんの店への到着が遅れてしまう。
「俺は先行します!後から会いましょう!」
「なんて速度!馬でも追いつけないんじゃ…」
他の皆を置いて全速力で道を急ぐ、しばらく走るとライノさんの店の方角の夜空が赤く照らされている事に気付いた。
「あれは…火事か!?嫌な予感が当たってしまった!」
店に近づくに連れライノさんの店の方角から逃げてくる住民が増える、人の波を掻き分けライノさんの店へ到着すると店の前でドワーフ達が呆然と焼け崩れていく店を眺めていた。
「店が…俺達の店が燃えていく…畜生!どこのどいつだ!こんな事しやがって!絶対に許さねぇ!」
「親方!近所の連中が店に火を付けた男達を見たって言ってやした!捕まえてぶっ殺してやる!行かせてくだせぇ!」
「馬鹿野郎!危ない真似するんじゃねぇ!折角怪我人が出ずに済んだんだ!俺は商品や店が燃えてもお前達が無事ならそれでいい!それでいいんだ…」
自分に言い聞かせる様に店員のドワーフ達を怒鳴りつけるライノさん、しかし握られた拳からは血が滴り落ちている。
「ライノさん…もっと早く気付くべきでした、火を付けられる前に店に着いていれば…クソっ!」
「ユイトさん?何故ここに…?」
「さっき街でならず者に襲われそうになったんです、事なきを得たんですがライノさんの店も危ないんじゃ無いかと思い駆けつけました…すみません、間に合いませんでした」
「謝らないで下せぇ、ユイトさんもご無事でなによりでした、さぁ、落ち込んでる場合じゃありやせん、近所に燃え移る前に店を壊さないと、もし良かったら手伝ってもらえやせんか?」
ライノさんは無理に強がる様な笑顔で語りかける、痛々しい笑顔だ、俺は沸々と湧き上がる怒りを誤魔化す様に乱暴に昨夜を抜き放った。
「…青龍」
赤く燃えるライノ武具防具店の上空へと青い竜が昇っていく、赤く染まる夜空とマッチして幻想的な光景だ、青い竜はしばらくすると消滅しその下に有る店へと滝の様な雨を降らせた。
「火が消えていく…これはユイトさんの仕業ですかい?」
「ええ、今の俺に出来る事はこれくらいですが…」
何故ライノさん達ドワーフがこんな目に遭わなければいけない、侯爵派の仕業だとすると絶対に許す事は出来ない。