127 地下通路
「王都内に賊だって!?一体どこの差し金なんだい?」
「詳細は分かりません、報告を受けた姿からして傭兵や冒険者のはぐれ者達だとは思うのですが…」
「侯爵派の差し金の可能性が高いね…まったく何を考えているんだ、城下町を戦場にするつもりか?」
女店員が部屋の片隅に有る棚を動かすとその奥は通路になっていた、隠し通路ってやつか。
「陛下、ユイト様、お急ぎ下さい、こちらです」
「本来この通路は他人に知られる訳にはいかないんだけどね、今回は非常事態だからそんな事も言ってられない」
「他言しませんよ、まさかこんな所に隠し通路があるなんて思いませんでした」
「そうしてもらえると助かるよ、さぁ、急ごう、ユイト君は僕の後ろに付いて来てくれ」
女店員を先頭に国王様、俺の順番で隠し通路を進む、通路は大人2人がなんとか並べる程の狭い物だった。
「しかし何故僕があの店にいる事がバレてしまったんだろう?今回ユイト君との密会を知る物はそれ程多くない筈だ、店に来る時もこの通路を使ったし尾行はされて無かった筈なんだけど」
「多分ですけど今回は俺が標的にされたんだと思います、俺は少しばかり侯爵派に目を付けられてるみたいでして」
「確かにユイト君が付けられていたのなら合点がいく、キミが尾行されてるかまでは確認していなかったよ」
まさかこんなに早く侯爵派が仕掛けて来るとは思って無かった、恐らくだがブーチ辺りが俺が七星核を手に入れた事を知り怒り狂ったのではないだろうか、だとすると…
「マズい!国王様!どこか地上に出る道はありませんか!?」
「急にどうしたんだい?焦っている様だけど?」
「俺の知り合いの店が危ないんです!早く助けに行かないと!」
ライノさんの店が危ない、七星核の件が原因で俺に手下を向けたのならライノさんの店にも賊が向かっている可能性は高い。
「わかった、確かこの辺りに騎士団の詰所に繋がる出口が有った筈だ、一旦そこから地上に出よう」
少し通路を進むと梯子を見つける事が出来た、長い梯子だ、国王様の話によるとこの上に騎士団の詰所があるそうだ、俺は梯子を登りながら念話を飛ばした。
『テミス、館の様子に変わった事はないか?』
『どうしたの?こっちは特に何も無いわよ?』
『良かった、もしかするとそっちにも侯爵派の手下が向かうかもしれない、ラッカさんかペーギさんに警戒する様に伝えてくれ、異変が有れば念話を頼む』
『ちょっとユイト!一体何が起こってるの?』
『詳しくは後で話す、館の防衛を頼んだぞ!』
テミスには悪いと思いつつ途中で念話を止めた、流石の侯爵派もバルメス家には直接手を出さないと思うが念の為だ、今はまずライノさんの店へ向かわなければ。