123 王の判断
街での用事をすませバルメス家の屋敷に帰ってくるとラッカさんがソファーで項垂れていた、綺麗なドレスを着崩し顔には疲れた様子だ。
「今帰りついたのかい?私もついさっき王城から帰り着いたところだよ、やっぱりあそこに行くと肩が凝っていけないね」
「お疲れ様でした、俺達の方は良さそうな装備品を手に入れる事ができましたよ、ラッカさんの方はどう云った話になりましたか?」
「ラオンの奴…じゃなかった、陛下は青の書状を使って反乱分子を炙り出す事に乗り気だったよ」
このままダラダラと今の状況が続けば侯爵派に戦力を整える時間を与える事になる、ライノさんに大金をチラつかせ七星核を売る様に言ってきたのも戦力補強の為だったのではないだろうか。
「そうですか…国王様は侯爵派と戦いになるなら早い方が良いと判断したんでしょうね」
「あぁ、私も今日陛下から聞いたんだがどうやら侯爵派の奴ら最近盗賊や傭兵団と接触しているらしい、青の書状の存在を知らなくてもその内武力蜂起を起こしちまうだろうよ」
俺が考えていたよりも王家と侯爵派の関係は緊張状態にあるみたいだ、こうなればもう小競り合いなんて言ってられない。
「それで書状の件も含め陛下が一度ユイトと話をしたいって言いはじめてね、公の場じゃなくこっそりとだ、場所や日時が決まり次第連絡を寄越すって話だったが構わないかい?」
「国王様が俺と話を?構いませんが一体なんの為に?」
「アイロンスティールの事件でアンタ達の活躍を知った時から一度会ってみたいと思ってたそうだよ、自分の目でアンタがどんなヤツかを見定めたい様子だった」
「そう言えばカッパーさんが俺達の事を国王様に報告するって言ってたな…すっかり忘れてしまってました」
「カッパーって密偵のカッパーかい?ホラ、こう小太りで恵比須顔の?」
カッパーさんは国王様の命令でビズミスの悪事を探っていた時に俺達と出会った、懐かしいな、今頃何をしているだろう。
「多分その人です、見た目からは想像も出来ない程素早い身のこなしでした、お知り合いなんですか?」
「そうそう、あんなナリで身体を動かすセンスは抜群なんだよ、アイツが若い頃一緒に旅をした事が有ってね、いやー懐かしいね」
うんうんと笑顔で頷くラッカさん、カッパーさんとの旅を思い出しているのだろう。
「なんにせよ陛下から連絡がくるまではやる事がないね、そろそろ夕飯の時間だ、どうだい?今日も一緒に飲まないかい?」
昨日の惨状が頭をよぎる、ダメだ、この提案に乗ってはいけない、その時誰かが部屋に入ってきた、ペーギさんだ。
「なりません奥様、今朝も申したではありませんか、大体奥様は昔から…」
叱られたラッカさんが大人しくなる、ペーギさんの説教は夕食が運ばれてくるまで続いたのだった。