116 昔話
この際だ、前々から気になっていたエルフの年齢について聞いてみよう、女性に年齢の話は厳禁だとは知っているが相手はあっけらかんとした性格のラッカさんだ、すんなりと答えてくれるかも知れない。
「あの~、大変失礼な質問だとは思うんですがラッカさんは今お幾つなんですか?パフィン村で聞きそびれてしまったんですがエルフの年齢って全然見当がつかなくて…」
「そうだねぇ、今170歳くらいだと思うよ、途中から数えてなくて詳しくはわからないんだけどね、エルフは大体300年以上生きるのさ、人間と夫婦になって1番寂しいのは相手が先に逝ってしまう事だねぇ…」
悲しそうな顔になるラッカさん、無神経な質問をしてしまったな、きっとクラブさんと別れる時の事を思っているのだろう。
「旦那からプロポーズされた時も人間とエルフの寿命の事が頭をよぎって何度も断ったもんさ、しかも当時は教師と教え子、本当にマセた生徒だったよ」
「それだけクラブさんはラッカさんの事を好きになってしまったんですね、良かったら詳しく聞かせてもらえますか?」
「旦那と陛下は当時の私の教え子の中でも優秀な生徒だったんだよ、授業の外でも2人に魔法の指導を良くやったもんだ、でもその内陛下が姿をみせる事が減っていった、後で知った事だけど旦那が私に惚れている事を知って2人きりになれる様に気を利かせたみたいだね」
「なんだか青春って感じですね、そんな友人がいるなんてクラブさんが羨ましいです」
「そんなある日突然旦那からプロポーズされたんだ、その時は断ったんだけど何度も何度も…しつこいったらありゃしなかったよ」
口とは裏腹にラッカさんが恥ずかしそうに微笑んでいる、クラブさんは随分おませな生徒だったみたいだ、美人教師と男子学生の禁断の恋、ちょっと淫靡な想像をしてしまう。
「それでつい言ってしまったのさ『魔法の模擬戦で私に勝てたらアンタの嫁になってやる』ってね」
「ラッカさんに魔法戦で勝利ですか、普通ならちょっと無理な条件だと思いますけど」
「私もそれで諦めると思ってたんだけどね…、あのバカ何回負けても次の日にはケロっとした顔で再戦を申し込んできたんだ、そんな旦那を見てたら考えてしまってね、この先ここまで自分の事を好いてくれる相手に巡り逢えるだろうか?って、そして何回…何十回目かの戦いで旦那の顔に見とれてたら隙を突かれて負けちまったんだ、手加減したつもりは無かったんだけど無意識の内に旦那に負ける事を望んでしまったんだろうね、その時はもう私も旦那に惚れちまってたんだよ」
「素敵な話を聞かせて貰ってありがとうございます、まさに純愛ですね、憧れるなぁ」
「つい話過ぎちまったね、今の話旦那や陛下には黙っておいておくれよ、アンタは不思議な男だ、相手にしてるとついつい話過ぎてしまう、さぁ私はそろそろ王城へ行く準備をしないと、アンタも寝坊助さん達を起こしてきな、ぼちぼち昼になっちまうよ」