113 残された可能性
「凄く美味しいです、俺の故郷にもカクテルは有りましたけどこんなに美味しい物は口にした事がありませんでした」
「お褒め頂き有難うございます、ユイト様の故郷にもカクテルが有るのですね、よろしければ私の知らないカクテル等有ればご教示いただきたいものです…いけませんな、話が脱線しそうになってしまいました」
ポリポリと気まずそうに頬を掻くペーギさん、自室で酒を飲んでいるためか少し気が緩み素が出ている様だ。
「結論から申しますが私と部下で街で情報収集した結果ユイト様の探し物に該当する情報を得る事が出来ませんでした、申し訳御座いません」
「そうですか…そうなると魔法について何も知らない人の手に渡っているんでしょうね、参ったな、しらみ潰しに探すしか方法が無さそうです」
「いえ、情報を得られなかった事で逆に探し物が見つかる可能性が高い場所が有るのです」
「噂話が立たないのに怪しい場所ですか?なんだろう?ちょっと想像がつきません」
人の目に付かないからこそ怪しい場所、ナゾナゾみたいだな、王都の敷地は広大だかそこに住む人間の数も膨大だ、人が寄り付かない場所でも有るのだろうか?
「王城でございます、王城の中には外部からの魔力や呪術等の干渉を遮る結界が敷かれており王に献上された魔道具について詳細を知る者はほんの数名のみ、噂になる事もそうそう無いと考えております」
「確かにそれならテミスが装備品の気配を辿れないのも納得できます、ラッカさんの見立てでは俺の装備品には魔力とは別の力を感じるとの話でしたがその結界のせいで気配を辿れなくなっていても不思議ではありません、王城の中に入る事はできるでしょうか?」
「王城への出入りには審査がございます、普段ならば申請をして問題なければ王城へ入る事を許されます、しかし現在貴族間のいざこざで貴族以外の人間を貴族街や王城へ入れる事に強く反対している者達がいるのです」
「侯爵派の貴族達ですね、実はペーギさんが留守の間屋敷に侯爵派の貴族達が押し掛けてきたんです、ラッカさんにあしらわれてすぐに退散しましたけど」
昼間屋敷にやってきた鎧姿の男達の話をするとペーギさんが憂鬱な表情になりグラスに残っていたカクテルを一気に飲み干した。
「不覚で御座いました、まさか侯爵派がそこまで礼を失した行動にでるとは、これほどまでに侯爵派が増長している状況では王城へ入る事も一筋縄ではいかないやも知れません」
「そう言えばザラキマクを発つ時にクラブさんから預かった書状があるんです、それを国王様へ見せたら力になってくれると言っていたんですが」
アイテムバッグから取り出した青い書状を机の上に置く、ペーギさんは書状を手に取り驚いた様に語りはじめた。