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嫌な予感がする、アイロンスティール、パフィン村、ザラキマクでも魔族達は人々を連れ去ろうとしていた。
「少し嫌な予感がします、さっき話をしたパフィン村の件でもそうでしたが俺が今まで遭遇した魔族絡みの事件では魔族は人間達を連れ去ろうとしていました」
「そうかい…今回の騒動には不自然な事が多いんだよ、侯爵派の貴族達が犯人だとすると何の為にリスクを犯してまで誘拐をしたか分からない、例え貴族でもそんな真似がバレたら厳しく罰せられる」
「もしかすると魔族が絡んでいるかもしれません、貴族が国王を非難する事は良くある事なんですか?それも派閥まで作って」
「いや、滅多に無い…と言うか前代未聞かもしれないね、このグランズ王国は数百年前に初代国王が他の国々を統合して作った国だ、そりゃ建国当初は小さな争いが有ったみたいだがここ100年程は平和そのものさ」
「バックに魔族がいるから強気な行動に出たのかもしれませんね、証拠が無い以上なんとも言えませんが…」
証拠は無いが魔族が王都に入り込んでいると考えて行動した方が良さそうだ、後で単独の行動は控える様にサクヤ達に言っておこう。
「そんな事が有って以来侯爵派の貴族は貴族街に入って来る平民を取り調べてるのさ、『平民の振りをした国王の密偵に違いない』ってね、本人達は勿論そんな事は直接言わず治安維持の一環だと主張しているけど警戒の仕方が異常だよ」
「貴族街を出歩かない方が良いと言ってたのはそれが原因だったんですね」
「街へ出る時は誰かに言ってくれれば貴族街の外まで馬車で送り迎えする様にしておくよ、窮屈な思いをさせてすまないね」
「いえ、俺達も不要なトラブルを起こす事は望んでいません、街へ出る時は送迎をお願いする事にします」
気軽に出かけられらいのは少し不便だが仕方ない、俺達がトラブルを起こせばラッカさん達に迷惑をかけてしまうだろう。
「失礼いたします、奥様、少しお話をよろしいでしょうか?」
先程のメイドさんが部屋へ入り何やらラッカさんへ耳打ちをする、俺達に聞かれたく無い話の様だ。
「…分かった、ユイト、アンタ達は部屋でゆっくりしといておくれ」
ラッカさんが部屋から出て行く、少し怒っている様だったが何が起こったのだろうか。
「ユイト、私耳がいいから今のメイドさんの話聞こえちゃったの…私達のせいで侯爵派の貴族達がこの家に押しかけて来てるみたい」
テミスが気まずそうに呟く、俺達に気を使わせない為にラッカさんは何も言わなかったのだろう、しかし参ったな、下手に出て行って話を拗らせてもマズい、どうしようか悩んでいたその時、屋敷の庭から爆発音が響き渡ったのだった。