108 消えた気配
「今まで色々な魔法が施された武器や魔道具を見てきたけどどれとも全く違う、魔力とは根本的に違う力を感じるね」
鬼神刀咲夜を手に取りマジマジと見つめるラッカさん、失われた装備品についてどの様な物か説明する為に咲夜を差し出すと思いの他喰いついて来た、そう言えばこの世界で他人にVRMMOの装備品を間近で見せるのは初めてだったな。
「俺が探しているのはその剣…正確にはカタナって言うんですがそれと同じ様な力を持つ装備品です、王都に恐らく靴か外套が有る筈なんです」
「うーん、こんな不思議な装備品なら魔力や魔道具の知識を持つ人間が手に取れば異常だと気づき騒ぎになってると思うんだけどね、ペーギ、不思議な靴か外套の噂が街に流れていないか調べておくれ」
「かしこまりました、手の者達に街での情報収集を命じます、何か情報が入ればすぐにユイト様にお知らせしましょう」
ペーギさんが一礼し客間から出て行く、これで俺達が情報収集をする必要は無くなったな、ペーギさんに任せておけば大丈夫だと思える不思議な安心感があるな。
「途中まではテミスが装備の気配を感じ取れていたんですが王都に着いた途端に気配を感じ取れなくなってしまったんです、テミス、やっぱりダメか?」
「えぇ、何となく近くに有るって事は判るんだけど…ダメね、何かに邪魔されているみたい」
こめかみを押さえながらテミスが唸る、意識を集中しても気配の出所を辿れないみたいだ。
「まぁペーギに任せておけば大丈夫だろうよ、アンタの装備が王都に有るならばペーギは絶対に見つけ出すだろうよ、ウチの執事はとびきり優秀なんだ、アンタ達はしばらくウチで旅の疲れを癒してな」
「何から何までありがとうございます、少し街を見学しに行きたいと思ってるんですが大丈夫でしょうか?何か貴族達の間で揉め事が起こっているみたいですけど…」
「そうだねぇ、貴族街の外なら大丈夫だと思うよ、実は今一部の貴族が手下を雇い街の住人を付けて連れ去っている疑惑があるんだよ」
貴族と誘拐、アイロンスティールの事を思い出す、嫌な思い出だ、助け出された女性達は酷い目に遭わされていた、また同じような目に遭っている人達がいるかも知れない。
「それで国王が今回の事件を重く考えて疑わしい貴族連中を問い詰めたんだけど奴らは無実の罪で国王に名誉を傷つけられたと派閥を作ったんだ、旗頭にトーラって名前の侯爵を据えて侯爵派と呼ばれているよ」
ペーギさんが言っていた貴族間のいざこざはこの事だったのか、住民が攫われていると言う話が気になるな。