105 バルメス邸
「ようこそおいで下さいましたユイト様、サクヤ様、アイギス様、メリッサ様、皆様のご到着を今か今かと使用人一同心待ちにしておりましたわ」
馬車を降りるとメイド服を着た女性が俺達を出迎えてくれた、他の使用人らしき人達は道を作る様に2列に整列し頭を下げている、なんだか自分が貴族になった様に錯覚してしまうな。
「ありがとうございます、こんな大層な出迎えをしてもらえるなんて思ってもいませんでした、なんだか緊張しちゃいます」
「気軽に構えて下さいまし、ささっ、中で奥様がユイト様達をお待ちしております」
ペーギさんとメイドさんの案内で屋敷の庭を玄関へと歩く、広い屋敷だ、前に見たビズミスの屋敷が小さく思える規模だ。
「奥様ってクラブさんの奥さんですか？クラブさんからはあちこち飛び回ってる人で滅多に屋敷には帰ってこないと聞いてましたが…危ない！皆伏せろ！」
ペーギさんが玄関のノブに触れた瞬間殺気を感じた、屋敷の中からだ、玄関のドアの隙間から激しい閃光が走った、魔法による攻撃だ、俺はアイギスを構え皆を守る様にシールドを展開する。
「奥様、お戯れは程々にして下さいませんと、ユイト様達は旦那様の大切なお客様と申したではありませんか？」
俺達を守る様に前に立っていたペーギさんが屋敷の中の人物、攻撃を仕掛けて来た犯人へと言葉を放つ、咄嗟にこんな動きが出来るなんてやはり普通の執事ではなさそうだ。
「悪かったね、お客人から凄い力を感じて力を試したくなったんだよ、私の殺気に気付くなんて大したもんだ」
開かれたドアの中にはドレスを着た１人の女性が立っていた、美しい人だ、しかしあの特徴的な耳は…エルフ？
「お客人達も許しておくれ、私はラッカ＝バルメス＝タルマイト、クラブの女房でS級の冒険者さ、アンタ達が噂の旅人さんだね？歓迎するよ、我が家へようこそ」
ラッカさんと名乗った女性は満面の笑みを浮かべながら握手を求めて来た、いきなり魔法を使われたのには驚いたが敵意を持っている訳ではなさそうだ、さっきの魔法だって目眩しに使われる閃光魔法だったしな。
「しばらくの間お世話になります、えっと…色々と聞きたい事があるんですが」
「まぁ玄関先で立ち話ってのもアレだ、アンタ達昼飯は食ったかい？まだなら一緒に飯でも食いながら話をしよう、ペーギ、悪いけど人数分の昼飯を応接間に運んでおくれ、あっ！私の分は大盛りで頼むよ」
ケラケラと笑いながら握手したままだった俺の手を引っ張り屋敷の中へと歩いて行く、ペーギさんはやれやれと肩をすぼめてその光景を眺めていた。
