104 貴族街へ
グランズの大通りを俺達を乗せた馬車が進む、以前乗せて貰ったカッパーさんの馬車とは違い全く揺れを感じない、大きな馬車で室内も広い、下手な宿の部屋よりも快適だ。
「屋敷までにはしばらくかかります、よろしければ紅茶をお挿れ致しましょうか?」
「お願いします、気を使ってもらってすみません、それにしても立派な馬車ですね」
「お褒め頂き恐縮で御座います、この馬車はバルメス家に代々伝わる家宝の1つで魔道具になっており空間拡張と衝撃緩和の加工が施されています」
ペーギさんが無駄の無い動きで人数分の紅茶を配ってくれる、一口飲むと緊張が解れ自然と笑顔になった、何とも言えない優しい味だ。
「だからこんなに広いんですね、良かったんですか?俺達の出迎えの為にこんな立派な馬車を出してもらって」
「クラブ様より大切なお客様なので出来る限りのおもてなしをする様にと伝えられております」
クラブさんには頭が上がらないな、色々と俺達の為に手を回してくれたみたいだ、次に会ったらお礼を忘れない様にしないと。
「外をご覧下さい、グランズ城が見えて参りました、間も無く貴族街に入ります」
窓から外を見ると巨大な城が見えた、綺麗な城だが同時に力強さも感じる、街の雰囲気も先程とはガラッと変わり静かで荘厳な街並みになっていた。
「なんというか先程までとは別の街に来たみたいです、貴族じゃない人間が貴族街に入り込んで大丈夫なんですか?」
「我がバルメス家は国でも有数の大貴族、その当主たるクラブ様の客人に失礼な真似をする事は許されません、無用なトラブルを回避する為にもバルメス家の象徴であるこの馬車でお迎えにあがったのです」
何か含みの有る言い方だな、要は俺達みたいな人間が貴族街をウロつく事を嫌う連中もいるのだろう。
「何か訳アリみたいですね、良かったら俺達にも話を聞かせてもらえませんか?」
「そうで御座いますな、ユイト様達にもバルメス家の客人として王都に滞在する以上お話するべきかも知れません、実は現在貴族が2つの派閥に分かれて小競り合いが行われているのです」
「貴族達が小競り合いですか?いったいなんでそんな事に?」
「続きは屋敷に着いてからでよろしいでしょうか?少し長い話になります故、そろそろ屋敷が見えてまいります」
馬車の前方に大きな屋敷が見えて来た、屋敷の入り口には大勢の人間が整列し誰かを出迎える準備をしている様だが…まさか?
「到着致しました、段差が御座いますのでお足元には十分ご注意下さいませ」