100 熱狂
陽が沈み辺りが暗くなり始めた頃港の広場に作られた巨大な焚き火に火が灯された、港には街中の人が集まり賑わっている。
「諸君!集まって貰い感謝する、私はこの街の領主クラブ=バルメス=タルマイトだ」
広場に作られステージの上にクラブさんが登る、拡声器の様な魔導具を使っているそうで街中に声が響き渡る。
「知っている者も多いだろうが最近この街は魔族と呼ばれる者共に襲撃を企てられ危機に陥った!しかしそれを未然に防いでくれた英雄達のおかげで事なきを得たのだ!今日はその英雄達を諸君に紹介したいと思う!まずは以前にも一度街の危機を救ってくれた旅人のユイト殿だ!」
クラブさんに促されて俺がステージに登ると歓声が上がった、本当はこんな役目は断りたかったが何度もクラブさんに頭を下げられ根負けしてしまった、大勢の注目を集め緊張してしまう。
「只今領主様に紹介預かりました旅人のユイトです…えーっと、この度は犠牲者を出す事も無く魔族をやっつけられてとても嬉しかったです!」
緊張で声が裏返り途中で暗記していた原稿の内容も綺麗さっぱり忘れてしまった、我ながら酷い、子供並のスピーチだ。
「話下手かっ!!」
「ありがとうよ!旅人さん達!」
「綺麗どころを独占しやがって!羨ましいぞ!」
「アニキ!カッコ良かったです!抱いて下さい!」
街の皆が各々の言葉を返してくれる、半裸の男達の一団が一際熱い視線を向けていたが気のせいだろう、あの記憶は俺の脳内から消去されたのだ。
「そしてユイト殿の仲間のサクヤ殿!アイギス殿!テミス殿!メリッサ殿!ステージに上がって来てくれ!」
サクヤ達が姿を現わすと俺の時とは比べ物にならない程の歓声があがる、それぞの似顔絵が描かれた旗が振られサイリウムの様な物を持ち息の合った踊りを踊っている集団もいる、まるでアイドルのコンサート会場の様だ。
「落ち着いてくれ!そこっ!前の人を押すんじゃない!静まれ!お願いだ、話を聞いてくれ!」
クラブさんが注意するが皆の熱狂に気圧されている、サクヤ達が街の皆に人気が有る事は知っていたがこれ程までだったとは。
「はいはい、皆静かにしてください、お姉ちゃんと約束してくれる人はお返事して欲しいな?」
「「「はい!お姉ちゃん!」」」
メリッサの問い掛けに皆が息を揃えて返事をする、先程までが嘘の様に広場が静まり返った、お姉ちゃんパワー恐るべし。
「これでユイト殿一行の挨拶は終わりだ!ユイト殿、例のアレを頼む」
サクヤ達の挨拶が終わりクラブさんが俺に合図する、俺はアイテムバッグから青白く光る大きな鱗を取り出した。
100話達成致しました、飽き性の自分が連載を続けられたのは読者の皆様がいてくれるからこそだと思います、この場を借りて厚く御礼申し上げますm(_ _)m