097 咆哮
『どんな作戦ですか?また危ない事を考えてるんじゃないですか?』
「こんなに巨大な敵を相手にするんだ、危険じゃない方法なんてないさ」
いくら鬼神化してもこの巨体を倒すのは骨が折れる、それならばいっその事封印してしまう事は出来ないかと考えたのだ。
「この作戦には海竜様の力が借りられるかがポイントになる、テミス、聞こえるか?」
『聞こえてるわよ、どうしたの?』
「海竜様に確認して欲しい事があるんだ、実は…」
テミスを通して海竜様にある事を確認してもらう、海を統べる海竜様だから出来るかもと考えていたが返って来た返事は俺の期待通りだった、これなら考えた作戦が実行できる。
「…という事てメリッサは海竜様が存分に力を使える様に回復に専念して欲しい、タイミングはテミスを通して伝えてくれ、アイギスは何かあったら皆を頼む」
『皆にはアンタが言った通りに伝えておくわ、海竜様はいつでも大丈夫だって』
「よし、海竜様のタイミングで仕掛けてくれ、俺が合わせる、それじゃあ作戦開始だ」
海魔神の歩みに合わせ身体が揺れる、肩に乗っている俺はその一歩一歩に跳ね飛ばされそうになるのをなんとか堪えた。
「地震みたいだな、気分が悪くなってきた」
その時海魔神の動きが一瞬止まり今まで以上の衝撃が走る。
『ユイト!海竜様がアンタの言ってたクレバス?ってのを作ったって!今よ!』
「わかった!ヤツを二度と出て来れない様に海の底に送ってやる!」
海魔神を陽の光の届かない海深くへと封印する、ヤツは恐らく泳げないか泳ぐ事が苦手な筈、浅瀬を渡り遠回りしてザラキマクへと向かっているのがその証拠だ。
「このまま二度と外に出てくるんじゃないぞ、永遠にさよならだ」
海魔神の肩を蹴り空中に逃げる、海魔神を見ると泳げない子供の様に両腕を滅茶苦茶に振り回しなんとか浮かんでいる状態だった。
「浮かべるのか?まぁその為に俺がいるんだけどな、これで本当にお別れだ、青龍!!」
宙に飛んだまま海魔神へと青龍を放つ、鬼神化状態で最上位スキルを放つのは初めてだがとんでもない威力だ、自分自身が怖くなった、普段とは比べ物にならない大きさの青い龍が海魔神へと喰らい付いく。
「ウオォォォォォォォォン!!!!」
「うぉっ!?断末魔のつもりか!?イージス!」
空中で至近距離から叫ばれた俺は衝撃波をイージスで防ぐ、海魔神が全身を凍らせながら沈んでいく、もう海面に頭だけが出ている状態だ。
「陽の届かない海底じゃ青龍の氷が溶ける事もないだろう、できれば二度と会いたくないから永遠に沈んでおいてくれ」
海面に着地した俺にゆっくりと海竜様が近づいてくる、海魔神の頭が完全に見えなくなった事を確認した俺は鬼神化を解除した。