096 巨山
身体に力が漲ってくる、持て余した力が陽炎の様に立ち上がり周囲に漂う、よし、これならば海魔神とも戦える。
『ユイトさん、かなり長い間鬼神化していても大丈夫そうです、1時間くらいなら大丈夫そうです』
「生命の指輪のおかげだろう、消費する体力と魔力を補ってくれているのが分かる」
「それが其方の真の力か、凄まじい力を感じるぞ」
「俺が先に仕掛けます、仲間を置いて行くので大掛かりな攻撃をする時は教えて下さい、仲間を通して連絡が取れます」
アイギス達3人を海竜様の頭の上で実体化させ海を駆ける、やはり鬼神化の力は凄まじい、まるで風になった様だ。
「はぁぁぁっ!真空波っ!」
走りながら真空波を放つ、普段とは比べ物にならない威力の巨大な風の刃が海魔神の身体に食い込んでいく。
「効果アリか?大きすぎてイマイチ分からないな」
『うーん、こっちを気にする様子がないですね』
「体に登ってみるか、このままじゃ埒があかない」
海魔神の身体はすぐ近くだ、遠くからは分からなかったが表面はゴツゴツとして岩山の様になっていた、これならば身体を登るのも簡単だろう。
『アイギス、海竜様にしばらく攻撃しない様に伝えてくれ、海魔神の身体に登っている』
『りょ、海竜様もしんどそう、攻撃で力を大分使ったみたい、メリッサが介抱してる』
『丁度良かった、もし何かあったら教えてくれ』
これで安心して海魔神退治に集中できる、さっき見た海竜様のブレスに巻き込まれたらシャレにならない。
「『兜割り』!『旋風』!」
海魔神の身体に攻撃をしながら身体を登る、手ごたえは感じるのだがヤツは俺を気に留める様子はない、しばらく身体を登ると広い場所へと到着した、海魔神の肩の様だ。
「全くダメージを与えた感じがしないな、自信がなくなるよ」
『そんな事はないと思いますよ、ほら、あそこをみて下さい』
「ん?アレは…攻撃した場所が崩れているのか?」
下を見ると登ってきた方の腕のあちこちがボロボロと崩れて海へと落下していくのが確認できた、痛がっている様子はないが確実にダメージを与えられているみたいだ。
「攻撃が全くの無駄じゃなかったと分かっただけで気が楽になったよ、良し、どんどん攻撃を仕掛けよう」
隣にそびえる海魔神の頭部を見上げる、頭部だけでも小さな山くらいの大きさがある、目や口は見当たらずゴツゴツした表皮があるだけだ。
「弱点らしい弱点は見当たらないな、体内に入って攻撃する事も考えていたんだけど当てが外れた」
『そんな危ない事を考えていたんですか!?もう!ユイトさん1人で行かせないで良かったです!』
サクヤが驚きの声をあげる、そんなに危ない作戦だったかな?
「未遂だったんだから怒らないでくれよ、それに作戦は他にも考えてる」