09 魔核
冒険者パーティ「赤き炎」のメンバーと俺達はベータさんの家で今後の方針を話し合っていた。
「こんな場所にトカゲちゃん達の巣があったなんてねぇ、普通誰も気付かないぜ、流石は大将のおっ母さん『百目のシータ』だ、俺達偵察の間で語り草になってるのも納得できる」
ガンマさんが机に広げられた地図を眺めながら感心している。
「アルフ、それでどうするの?巣の場所がわかってもあんなに大勢のリザードマン私達だけじゃどうしようもないわよ?」
肩まで伸びた絹の様なブロンドの髪先を指でクルクルと弄りながらイオタさんがたずねる。
「これを使おうと思っている」
そう言ってアルフさんは腰のポーチから拳サイズの宝石の様な物を取り出し机に置いた。
「魔核?って何なのこの純度!?何処で手に入れたのよ!?でも確かにこれなら…」
魔核と言われる石を見ながらイオタさんは考え込んでしまった。
「昔自暴自棄になっていた時に全財産を使って買ったんだ、もう使う機会は無いと思っていたんだが処分せずに取っておいて良かった」
アルフさんは自嘲気味に笑うと魔核を手に取る。
「これには起動から30分後に崩壊する術式が刻まれている、コイツをヤツらの巣の奥で崩壊させるんだ」
「確かにそれならトカゲちゃん達も全滅だろうな、だが巣にはヤツらがウジャウジャいるぜ?更にオルトダイルの縄張っておまけ付きだ」
地図に印されたリザードマンの巣の横には首が2つあるワニの様な絵が描かれていた。
「オルトダイルの縄張りを大勢で歩くのは自殺行為よ、そうなると騎士団も頼りにはできないわね」
「少数精鋭で行くしかない訳か…つってもこんな時に限って街の手練れ連中は揃って遠征に出かけてやがるしなぁ、残った奴らの実力は俺達と似たり寄ったりだぜ?」
「そうね、私達3人じゃ良く見積もっても成功率3割ってところかしら?」
「3人じゃなく5人です、俺とサクヤも同行します」
「坊主と嬢ちゃんが?やめときな、今回は条件が厳し過ぎる、付いて来ても守ってやれる余裕がない」
そう言ってガンマさんは手をヒラヒラと俺達を追い払う仕草をする。
「そうね、手伝ってくれる気持ちは嬉しいけど連れて行けないわ、危険すぎるの」
ごめんなさい、とイオタさんが謝る。
「お前さん達この村がリザードマンの襲撃を受けたって話聞いてるかい?」
ニヤニヤ笑ったベータさんが2人に問いかける。
「聞いてますぜ、ウチの大将もその話を聞いてすぐに街を飛び出してったんだ、そういや誰がトカゲちゃん達を追い払ったんですかい?」
「この2人だよ」
アルフさんが並んで座っていた俺とサクヤの肩に手を乗っけた。