00 ナイト&アルケミー
「頼むぞ〜これが最後の10連だ」
俺、宮山結人は今月の給料を全てつぎ込みあるゲームのガチャを回していた。
彼女いない歴25年の25歳、大学を出てからは東京で営業の仕事をしている、趣味と言う趣味はなかったがここ1年は違う、夢中になれる物を見つけられたのだ。
大人気VRMMO『ナイト&アルケミー』、通称『ナイアル』
俺はこのゲームにどっぷりとハマり仕事と睡眠以外はほぼ全ての時間をプレイに費やした、その結果今ではpvpの月間ランキング1位になる事ができる程の腕前になれたのである。
俺の使うアバターは本名そのままの『ユイト』黒髪蒼眼のイケメンキャラで剣術スキルに特化した前衛職だ、ある日はクランの仲間達とレイドバトル、またある日はライバル達とpvpとナイアルでの日々を楽しんでいた。
そんなナイアルに突如としてぶっ壊れ装備が実装される。
『鬼神刀咲夜』
単純に武器としての性能も凄まじいのだがそれ以上に武器固有スキル『鬼神化』の効果がぶっ壊れていた、一定時間装備者の全能力値を100倍にするというとんでもない性能だ、完全なバランスブレイカーである。
実装が予告されてからプレイヤー達は混乱し大手ニュースサイトのトップニュースにも取り上げられる程の騒ぎになっていた。
「来い来い来い!!!」
目の前には10回分のガチャ結果が表示されていく、次々と現れる結果を見守っていると最後の10回目に最高レア確定の専用演出が流れお目当てのぶっ壊れ装備『鬼神刀咲夜』がその姿を現す。
「よっしゃあー!!これで来月も月間1位を狙えるな!」
俺は咲夜を手に取りガッツポーズを決める。
次の瞬間俺は突如刀から放たれた激しい光に包まれた。
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「ここは…どこだ?バグったのか?」
さっきまでガチャ用の専用空間に居た筈の俺はだだっ広い草原に立っていた。
「こんなフィールド見た事ないぞ…そうだ!咲夜は!?」
もし入手前にデータが戻っていたら大変だ、運営凸間違い無し、それでもダメならモチベーションが下がり引退を考えるかもしれない。
慌ててメニューから所持品を確認すると咲夜はきちんと入手状態になっている事が確認できた。
一安心して咲夜を装備する、装備後の能力値を確認する為にステータス画面を見た俺はギョッとする。
「表示が文字化けしてるじゃないか、それに咲夜以外の装備品はどこに行った?こりゃ一旦ログアウトして運営に確認してみるしかないな」
ログアウトする為にメニュー画面を開くがログアウトの欄がメニューから消えていた、フレンドやクランの項目も反応しなくなっている。
「なんなんだよ一体…」
何がどうなっているか分からず茫然としていた俺は後ろに何者かの気配を感じ振り返った。
「あなたが私の御主人様ですか?」