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遊園地の小悪魔

 今僕は休日だというのに早起きをしている。

 休みが欲しいと言って休日をもらったら遊園地に行く羽目になった。

「あんたが休日に早起きするなんて珍しいわね」

 自分でもそう思うけど、その言い草はひどくはないか。それではまるでいつもはこの時間は寝てるみたいないい方じゃないか、最近は練習のせいで早起きしてるような気がしなくもないというのにひどい親である。

 軽く食事を済まし、部屋に戻り準備を進める。

 準備を進めていると携帯が鳴る。

 彼女からメールが来ている。

『今日は最高の一日にしよう』

 彼女のこの言葉に僕はなら休日をくれと送っておく。

 すぐに彼女から返信がくる。

『私という美女のお誘いがある。そして今日は休日ダブルな癒しだね。にしし』

 彼女は何か特別な頭の中をしているのかもしれない。自分で美人なんて自称する奴ほど大した奴じゃないのは僕の経験的に実証済みである。

 なのでこれは触れずにいるとまた彼女からメールがくる。

『ツッコんでよ‼これじゃあ私ヤバイ奴になっちゃう。あ、それとちゃんと遅刻なんてしないように遅刻したら今日の昼はおごりだから以上』

 取り合えずもう面倒になったので遅刻はしないと返して外に出ることにした。



☆☆☆☆



 待ち合わせは駅近くの噴水である。

 どこにいるかはすぐに分かった。スカートを履いているのはちょっと意外である。バンドの練習ではズボンが多いので動きやすい格好で来ると思っていた。そんなその子はショーケースがある方を向いて何かをしている。

「おい、来たぞ」

「わっ!」

 驚いて彼女はこっちを向く。

 どうやら髪をいじっていたらしい寝癖でもついていたのだろうか。

「もう驚かせないでよね。まあそれよりも遅いんじゃない遅刻よ」

「バカいえ、時間より五分前だろうが」

「もう男なら三十分前についておくものでしょ」

「どんな奴だよ。そんな奴僕はただの危行にしか感じないね」

 全く持って何が悲しくて三十分前について人を待たなきゃいけないのやら。

「ちなみに私は一時間前からいました」

「じゃあ三十分前に来ても意味ねえじゃねえか」

 彼女は笑っている。本当に一時間前からいたのかはわからないが自分より先に来ているのは事実なので嘘だろっていうのが言えないのが恨めしくある。

「冗談よ。それよりどうこれ」

 そう言って彼女はまた笑顔を向ける。

「どうって何が」

「本当に言ってんのまず女の子にあったら容姿を誉めなきゃ」

「服じゃねえのかよ」

「なんだわかってるじゃない」

 疲れる会話である。

「まあとりあえず、行こうぜ」

「それもそうね。それじゃあいざ約束の地に」

 誰が約束の地だよ。

 本当に休日だというのに彼女は表情をコロコロ変えながら生きていると思った。



☆☆☆☆



 遊園地にやっと着くことができた。

「それにしても君は意外だったよ。まさか君が人に席を譲るなんて」

「なんでそこが意外なんだよ当然だろうが」

「いや最近の人は普通に譲れない人が多いからそれができる君は偉いんだよ」

「それだと君も偉いといっているようなものだな」

「そんなこと当たり前なんだよ」

 相変わらずムカッテくる奴である。

「まあもういいから行こうぜ」

「もう飽きないでよ。こんなバカみたいな会話きっといい思い出になるし、何なら私の作詞のアイデアにもなるのである」

 もう僕はほっといて遊園地に歩いていく。

「もう置いていかないでよ」

「置いていったんじゃなくてほっといたの」

「おんなじ意味だよ」

 舌打ちしたくなる。

「まあ、それより何乗ろうか」

「人はもう世界という荒波に乗っているのにもう乗らなくてもいいだろ」

「君はひねくれてるね。第一学生の荒波なんてたかが知れてるだろ」

「いやいやどう考えても人生的に高校生って人生の分岐になると思ってるんだが」

「かもしれないね~じゃあジェットコースターにレッツゴー」

 普通に流されて当然の内容なので仕方がない。

 ジェットコースターの列に並ぶ。

「それにしても意外に人がいるのな」

「考えていることはみんな同じってことだね」

「この暇人が」

「それはブーメランでしょ」

 そんな変な会話をしながら列は進んでいく。

 ジェットコースターに乗りこむと変な合図と共に出発していく。

「おおどんどん上がっていくね」

「そういもんだろ」

「もうこの上がっていく感覚が最高だよね。ああもう死ぬんだって感じがして」

「その感覚はおかしいだろ。それが本当だったら即世界にある遊園地のジェットコースターは廃止だな」

「……やっぱり君は面白いね。人とはちょっと違う感覚を持っているんだね」

 本当にそんな理由で連れまわされたんなら電話でもよくないとも思ってしまう。

「見てみて奇麗だよ」

 頂上に着いたことで遊園地の全体が見えるがそれも一瞬の事で、ちょっとした浮遊感と叫び声、それに風が落下を教えてくれていた。



☆☆☆☆  



「いやーやっぱりこの遊園地で一番怖いって言われてる物だから面白かったね」

 乗った後のこの子の顔は満面の笑みになっていた。いつもの三倍は顔がうるさい。

「女の子は絶叫系が好きっていうけど本当みたいだね」

「そうだよ~女の子は叫んだりするの好きだからね。逆に男の子は嫌いみたいだよねそういうのわ」

「まあそうだな。男の方だと苦手って言う人は多いらしいからな」

「てことは君も苦手なのかな」

「まあ次に乗るのはジェットコースターに乗るのは嫌になるぐらいかな」

 その発言に彼女はニターっといやらしく笑う。

「なら次もジェットコースターへ!」

 どうやら彼女はすごく喜んでいるようである。

 はっきり言って普通なのでどっちでもいいだけだが、やはり来たなら楽しくないと意味ないからな。

「言うと思ったよ」

「さあ行くぞよ」

 そう言って僕の腕を引っ張っていく。



☆☆☆☆



 それにしてもまさか全部のジェットコースターに乗ってその後お化け屋敷とは恐怖しかない周り方であった。

「いやー面白かった」

「それにしてもなんで全部絶叫系なんだよ」

「おいおいボーイまさかこの年でコーヒーカップなんて乗るきかい、お子ちゃまねえ」

 誰がボーイだ。

「別にコーヒーカップじゃなくてもメリーゴーランドとかもあるだろ。後僕らはまだお子様だ」

「メリーゴーランドかーあれは夫婦になった人と乗りたいんだよね」

 まさに謎の答えである。

「それに絶叫系はね。あれだよね死にそうな恐怖が味わえるからいいよね。死への耐性ができそうで」

 そんな耐性なんて作って何の意味があるのやら。

「それにしても結構遊んだし満足しただろ。そろそろ帰ろう」

 空は赤く燃え上がる様に夕焼けになっていた。

「う~んじゃあ最後にあれに乗ろっか」

 そう言って指を指したのは、観覧車だった。

「あれこそ恋人とかの方がいいんじゃないか」

「い~や関係ないね。あれは締めって感じでしょ」

 まさに謎の頭をしているこの子に従い、観覧車に向かう。

 観覧車はほかのアトラクションより空いていてすぐに乗れる。

 彼女とは対面同士で座る。

 始まって四分の一の部分に来た時に彼女は唐突に口を開けた。

「観覧車に乗るとさあ」

 僕は彼女に顔を向ける。

「なんか爆弾とか仕掛けられていてそのゲームに挑戦者が挑んでる一観客になれないかな~って思うんだよね」

「唐突だな。しかも観客の方なんだな」

「さすがに命を預けろなんて言えないでしょ」

「時間は人から奪うのにな」

 僕のその言葉に彼女はニッと笑う。

「でも今日は楽しかったでしょ」

 なんでそんな自信満々なのかはわからないが彼女は確信を持っているようだ。

「まあ、いつもの休日とは違って刺激はあったな」

「もう素直じゃないなあ」

 隣に座ってたら脇を突っついて来そうな調子で言う。

「ねえもし楽しくないっていうならキスしてあげよっか」

 その言葉を理解するのにちょっと時間がかかった。

 そして観覧車はてっぺんに到達する。

 夕日の光が彼女と僕の顔を射す。

 僕の顔は熱くなるのを感じた。それが夕日の光の熱さなのか、はたまた自分の体温なのかはわからない。

「ほらほら赤くなってるよ~」

 二っと笑う、そういう彼女もまた顔が赤くなっている。

「……楽しかったよ」

「もっと詩人ぽく」

 中々鬼である。

「……まるで……時間が加速していくように」

「うん、悪くないね。今度歌詞に入れておこうか」

「勘弁してくれ」

 彼女は笑う。まるでここに天使が舞い降りたように見目麗しく。それでいて人懐っこく。



☆☆☆☆



 観覧車にも終わり帰るときには少し暗くなっていた。

「夏も終わるね~」

「次は寒くなるのか。さらに布団が恋しくなる季節だ」

「だが今年の冬はただで寝れると思うなよ」

 彼女は冬も引っ張りまわすらしい。

「それよりもこれからどうすんのか決めてんのかよ」

「えっ帰るよ。もしかしてこのままホテルちょっと待って心の準備が」

 ふざけたようにお茶らけて言う。

「わかってんだろこの先のバンドだよ」

「……ああそっちね」

 なぜか影が射す。こんな彼女の顔は初めて会ったがすぐに元気になる。

「もう目指す道は決まってるんだよ。ならそれに一直線に進むそれだけだね」

 その宣言は何一つ迷いのない澄み切った眼差しである。

「それに君が入ってきたんだ。もうこれはトップ街道まっしぐらだね」

「そう思うならもうちょっと練習量を調整してくれ、焦ってもいい結果は出ないぞ」

「……わかってるけど~」

 彼女はうなっている。

「どうかしたのかよ」

「……やっぱ美人高校生バンドって言われたくない」

 深く悩んでいたみたいなそぶりを見せたくせにこれである。

「はあ、まあ確かにそういうのはわからなくはないが、まあ何でもいいけど早く金もらって楽したいから別にいいけどな」

 これからの楽な生活を夢見る。

 彼女は数歩僕よりも先に出て振り返りピースをしながら笑顔を向ける。

「ありがとね!」

 その顔で世の男子が何人騙されたのか、いまにも言及したいぐらいのいい笑顔であった。


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