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回胴式優義記  作者: 煙爺
第一章
7/171

繋がり始めた細い糸


設定6であることが判明したアタルの215番台はその後も

7・カエル・7の右下がり一直線でビッグ


上段7テンパイからの右下段BARでまたビッグ


7・カエル・7の大V字これはバケ


7・カエル・カエルの上段一直線でビッグ


と次々とボーナスを引き順調にコインを増やして行く、また隣のオバちゃんの213番台も調子がイイ

「ニィちゃん頼むわ!」


「よっしゃまかしといて」

こんなやり取りがもう何度も行われている

…のだが…それに比例して215番台の上にある飲み物も増え続けていた

オバちゃんはトイレや自分の飲み物などで席を立つ時、必ずアタルに飲み物を買ってくる

勿論アタルは飲み切れないからと断るのだが


「何を若い子が遠慮してんの

飲みきられへんかったら持って帰り

ホラ、カウンターで袋もらって来たったからこれに入れ」

と袋まで貰ってしまった


更には…アタルの左隣の216番に座った常連のオッチャンの目押しもする事になり

貰う飲み物は更に増えた

それでも必死に回し続け

19時を過ぎたところで

「ニィちゃんありがとう、またな!」と

オバちゃんが帰り

それから1時間程して左のオッチャンもお礼を言って帰って行った

そこから更に3時間後

もうすぐ22時50分になるというところで

店に[蛍の光]が流れ

店員のアナウンスが始まった

「え本日も当パーラーSにご来店頂きまして誠にありがとうございます

当店は23時を持ちまして閉店となってございます、明日金曜日も全機種全台大解放の

10時開店となってのお出迎え

是非皆様ご家族ご友人お誘い合わせの上

奮ってご参加の程宜しくお願い申し上げます

繰り返しご案内申し上げます……」


(あーケツ痛い…でもこんだけ出たら上出来や流すか)

アナウンスを聞き下皿のコインを隣の台から拝借した2箱目に入れる

カチ盛りのコインが入る215と書かれた箱と共にシマの端に持って行き計数機に流す


ザラザラザラザザー…カラカラ…カラ


とイイ音が流れて

結果は3854枚

レシートを文鎮に変え換金所へ持っていくと出てきた金額は50500円だった

(よっしゃあ!!一気に手持ちが増えたで

文無し卒業やぁぁあ!!!

情報も手に入ったし万々歳やな

途中目押しする台が3台になって大変やったけど多分5千ぐらいは回せたやろ

明日も来て朝の状況見たいな…他にも色々問題点見つかったし明日はその対策しよ)


とりあえずの資金を手に入れ思わず顔が綻ぶ

さぁ帰ろうと思い店を出て帰り道を歩き始めた途端


グルォォオ


とアタルの腹が鳴った

(完全に忘れとったぁ……

もうスーパーは閉まってるし……しゃあないちょっと高いけどコンビニまで行こか…

家の反対側やから軽く2キロはあるで…

あーあ……)

すっかり空腹忘れていたアタルは端玉で貰ったアタリメを齧りながらコンビニへと向かう


いつ止んだのか雨はすっかり上がり

道は少し乾いていた



本日の収支(S店ニューパルサー215番台)

投資0円

回収50500円トータルプラス50500円

と飲み物9本と小袋アタリメ1袋

判別結果 設定6


重い袋と傘を持ちトボトボと歩きながらも

道程を半分過ぎたところで実家の前を通過

横目でチラリと家を見ると………

やはり明かりが付き

テレビの音が少し聞こえて来る

(あぁー…やっぱり帰って来とるか……

まぁそうやわな…そんな連日オトンが麻雀勝てる訳無いし…)

さっきまでの嬉しい気持ちが一瞬吹き飛びそうになる…が

今のアタルは13歳の気弱な少年ではない

中身は40歳の決意した中年だ

(今度は心配掛けへんって約束したもんな…もう逃げへんから大丈夫…安心してやジィちゃん)


決意を新たにしコンビニに到着

とにかく安上がりな食べ物を探す

店内を隈なく物色し、色々と探した結果

見事食パンが1番安上がりという結果になった

(120円で5枚やからコレと貰ったコーヒーでええやろ腹の中で膨らむしな決まりや…ん?アレは使えるな)

レジ前で何かを発見したアタル、一応値段をチェックしておく

(1000円か結構するな…やめとこ明日もっと安いのあったら嫌やし、今はとにかく節約や)

結局食パン2斤のみを買い

また実家裏の公園へと来た道を戻る

(しかしアレ使うのはエエアイデアや

あと要るのはアレとアレと……)


そんなことを考えながら暗い道を戻り

公園に到着

昼間も座っていた屋根付きベンチに座り

早速パンを食べ始める

(しっかし味も素っ気もないメシやな

ていうか朝から食パンしか食うてへんやんけ

ついでに栄養も無かったわハハハ)

あっという間に食パン5枚を食べ終わり

コーヒーとコーラを1本ずつ飲んだところで

何とか腹が落ち着いた

(ビックリするわ…食パン5枚食うてもまだ食えそうやもんな

まだあるけどコレは明日の朝用やし…

ヨシ面倒くさいけど帰ろか!

何時迄も会わん訳にはイカンしな)


そう今のアタルは父親が怖い訳ではなかった

ただ理屈の通じない人間の相手をするのが面倒なのだ

実際あの当時のアタルも14歳まではすぐに殴る父親が怖くて仕方無かったのだが

14歳15歳と成長していく内に

幸せそうな同級生を見て恐怖が苛立ちに

更に担任から言われたある言葉によってその苛立ちが怒りへと変わり

16歳になる直前頃には遂に父親に反抗し

殴られれば殴り返す様になっていた

それがキッカケで家にも帰らなくなり

パチンコ屋での知り合いや数少ない友達の家を泊まり歩くようになっていく

その結果たった1人の肉親だと思っている

祖父にも18歳まで連絡を取らなくなり

多大な心配を掛けてしまったのだ



雨上がりの湿気を鬱陶しく思いながら

シャッターの閉まった暗い酒屋の前で

光る自販機に群がる虫を避けながら

実家の前に立ち鍵を開けてドアを引く


ガチャ


っと開けた瞬間


「ワレコラァ!!!何時や思とんねんこっち来んかい!!!!」


この世で1番嫌いな人間の怒鳴り声が聞こえて来た

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