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回胴式優義記  作者: 煙爺
第二章
69/171

平日

2月13日 火曜日 15時22分


終わりのHRの時間

担任の松センが声を張り上げる


「エエか!?何回も言うけど学校には持ち込み禁止や!絶対アカンぞ!」


(ハッハッハ

そんなアカンアカン言うたらフリみたいに聞こえるやんけ

まぁ言えば言う程逆効果やろ

女子の皆頑張りや!オッチャンは応援してるで!普段は大人しい子も頑張るんやで!

さ、今日は久しぶりのS店や

のんびり行こか)


S店のハズシが解禁されたあの日以来

基本的に火曜日は組み打ち無しの休日となっていた

それというのもアタルは夕方からしか打ちに行けない為にS店に行ったとしても狙い台が空いている可能性が低いからだ

勿論前日は少し早めにN店を上がりS店の下見に行っては狙い目を決めてはいるのだが…

という訳で火曜日はS店に行き狙い台やビガーのハイエナ台を探し無ければ無理をせずに帰るというのがパターンとなっていた


「起立!」


(おっと…終わりか さぁ今日は何か空いてるかな)


学校を飛び出し

裏の公園に隠した自転車で家に帰る

学生服の上からMA1風のジャケットを羽織り

軍手を2枚重ねても寒さは厳しい

熱い焙じ茶でも飲みたい……

そんなオッサン臭い事を考えながらアパートに到着した


服を作業着ではなく

[休日のパチンコ屋先頭並び風]

別名バージョン3.0に着替え

部屋を出た

(山村さんはチンピラ風言うてたけど認めんぞ)



店内をグルッと周り、暫く眺めていたが

今日は狙い台も埋まっており

ハイエナ出来そうなビガーも見当たらない

(まぁそらそうやわな…しかも狙いのニューパル211番はキッチリ出てるし

あの常連さんは粘る人やから空かんわ帰ろ)


店を出て自転車に乗った後

少し進んだ辺りで頭のタオルとサングラスを外し、そのままスーパーに向かった


店内に入り、安い商品を探す

すると魚売り場でアタルの足が止まった

(おっ?子持ちイシガレイ348円か…

2切れ半入ってデカイし安いな

久しぶりに煮付けにしたろか…

残り汁メシに掛けて食うのも旨いし

決まりや)

メインのオカズが決まり

続いては野菜売り場

しかし

(な、何やて…白菜428円!?高い!!アホか!)

白菜の高さに憤慨するアタル


「あ、あれ?ひょっとして…か、神崎君?」


「あぁ!?」

急に声を掛けられた為

怒り状態のまま振り向いてしまったアタル

声を掛けて来た相手から謝罪の言葉が漏れる

「ひ、ヒッ!!御免なさい!!」


(あっ!ヤバっ!!)

咄嗟に謝るアタル

「あっゴメンやで!!怒って無いから!謝らんといてや………あれ、佐藤さんか?」


声を掛けて来た相手は隣の席の佐藤さんだ

「えっ…あっうん…ホンマに怒って無いの?」


「いや佐藤さんに怒ってる訳やなくて…

あのー…正確には白菜の高さに怒っててんけどな…ゴメンやで」


「は、白菜?そんな高いの?」


「高すぎや!こんなん買われへんわ!…

あっ…ゴメンゴメン…また…」


「そうなんや…ホンマにスーパーで買い物してるんやね…」


「ハッハッハ…いやー恥ずかしいとこ見られたわ、ほんで佐藤さんも白菜か?今日はやめとった方がエエと思うで悪い事は言わんから

今日はカレイの煮付けに」


「ち、違うよ!私はお、お菓子買いに来ただけ…」


「あ そうな……お菓子?……ほほー…

佐藤さんも女の子やねぇ……そうかそうか

誰に渡すか知らんけど頑張りや!」


「あっ!ち、違う!」


「いやいやわかってる……

オッチャンはわかってるで佐藤さん…

松センになんぼアカンと言われても

伝えなアカン時はあるんや

今伝えな絶対後悔するからな

誰にも言わんから大丈夫やで!

頑張りや!」


「そ、そうかなぁ……やっぱり神崎君もそう思う?」


「当たり前やがな…もし言わんかってみ?

その子が今回の事で佐藤さん以外の誰かと付き合うなんて事なったらどないすんの…

その時なってやっぱり気持ち伝えといたら良かった思ても遅いんやで?

もしアカンかってもエエがな

その時はツラいけど後から後悔するより絶対エエから伝えときや」


「で、でも私…背も高いし…あんまり可愛無いから…」


「何を言うてんねや…エエか?

男っちゅうのはな

自分の好みや無い女にでも好きや言われたら嬉しいもんなんやで?」


「そ、そうなん!?」


「そらそうやがな…

ただ今回は付き合ってまでは言わん方がエエと思うで?あくまでも気持ちを伝えるイベントやからな」


「え?ど、どう違うの?」


「いやいや全然違うがな 今回は意識してもらう為のイベントやろ?」


「い、意識って?」


「あのなぁ…オッチャンもそない詳しないけどこれぐらいは知ってるで…

つまりやな男に好きやって伝えるわけや

ほんなら言われた男はあの子に好かれてるって意識しながら過ごすやろ?」


「う、うん」


「ほんなら段々その子の仕草や言動を見るわけや

ほんでエエなってなったら好きなるし

ちょっと合わんなってなったら残念てなるし

つまり今回は自分を見てもらう為のイベントやがな、付き合う付き合わんはまだ先やで」

(って昔なんかの雑誌で見た気がする…)


「へぇー…じ、じゃあ言った後が大事なん?」


「そうそう…まぁでも無理矢理かわい子ぶっても付き合ったらバレるから自然でエエんちゃう?まぁ西岡君は優しいから大丈夫やで」


「うん…ありがとう…」


「まぁ頑張りや!ホナまた」


そう言うと素早く撤収するアタル

どうやら気付かなかったようだ

(完全に舞い上がっとるな…やっぱり西岡君なんや流石やねぇ…多分10…いや15はあるか

違うクラス入れたら25いくかもな…)

アタルの記憶にある西岡君は確かそのぐらい貰っていた筈…

そんな事を思いながらアパートへと帰った




2月14日 水曜日 8時30分


「なぁ神崎」


「おー?どないした?」


「…貰ったか?」


「いいや聞かんでもわかるやろ

俺らは基本的に嫌われてんねやで?」


「…そうやな…」


「まぁお前らはまだ可能性あるんちゃうか?

ヤンキー女子からの投票に期待せぇや」


「俺はヤンキーちゃう!普通や!」


「だからヤンキーは大体そう言うねんって」


他愛も無い会話をしていると


ガラガラガラ


と後ろの扉が開き

朝練を終えた本日の主役が入って来た

途端にピーンと張り詰める教室

しかし

その空気を無視してアタルが声を掛けた

「いやー西岡君おはよう

突然やけどコレ必要になると思うから渡しとくわな今日は大変やろけど…頑張りや!」

そう言って紙袋を渡す


「お、おはよう神崎君…ありがとう…」


(おっ?こら既に何人か渡しとるな…)


いつもなら変な挨拶をするアタルの事情を聞く筈の西岡君も黙ってそれを受け取り

そのまま席に着いた


隣にいた柿本が言った

「なぁ西岡て…何個ぐらい貰うんかな……」


「25個ぐらいちゃうか?たぶん」


「……世の中て…不公平やな…」


「当たり前やんけ」

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