二度目の初体験
まるでこちらを見つめているかの様な
カエルの視線に
缶コーヒーの甘さがわからなくなる…
(いやいやまさか、そんな偶然無いやろ
どうせ1枚掛けや…ないない………
………でも…1枚掛けでもあの目は止まらんと思うんやけど………
……ヨシ…ちょっと確かめるか)
そう決意したアタルはオバちゃんに声を掛ける
「なぁオバちゃんコイン1枚貸してくれへん?」
アタルの言葉を聞き
不思議そうにコチラを見るオバちゃん
「別に1枚ぐらいかまへんけど何すんの?」
「いや、この左の台リー…いやいやパターン出てる様に見えんねん
ほんでどうしても気になって…アカンかなぁ?」
するとオバちゃんは目を見開いて
「えぇホンマに!?ニィちゃん座り座り!!
ほら貸すなんてケチ臭いこと言わんと
1枚あげるから早よ座り!」
そう言って左隣の椅子をバンバンと叩き
コインを1枚差し出した
「ありがとう オバちゃん!ほんならちょっと確かめてみるわ」
コーヒーを台間に置き台に着席
貰った1枚を投入し初代ニューパルサーのレバーを叩いた
ガッチャ
重い音と共にリールが回転
オバちゃんと2人真剣に台を見つめる
(まぁそんな上手い事いかんやろうけどな)
半信半疑ながらも
まず押すのは中リール7下のBARを中段に
すると……
ズルっとスベって中段7が停止
それを見て一気に緊張感が増して来た
(ま、まだわからん!!ハズレでも止まるしまだや……まだ……)
逸る気持ちを抑えながら
次は右リール
7を狙うと音も無く7が中段にテンパイ
(まだや!!まだハズレでも止まる!!
………でも…!)
そして
運命の左リール
枠下あたりにBARを……狙う!!
(あっスベっ)
ジリリリリリリン!!!
見事777が中段に並び、台のファンファーレが鳴り響く!!
(やった!!やっぱり入っとった!!
ありがとぉぉお!!!
この台捨てた常連のオッチャンごめんやでぇ!)
と同時に大音量の店のファンファーレと
パーパラッパッパッパー!!
機械的な女性アナウンスが祝福した
「215番台スタートしました」
それらの音を聞いた瞬間
懐かしい木村のオッチャンとの思い出が
蘇る
あれは隣同士で赤いパネルの
ニューパルサーRを打っていた時
当時のアタルはニューパルをモーニング狙い以外で触るのは初めてだった
「おっ、ニィちゃんそれパターンや!
左の上に7があって真ん中のカエルが潜ったら当たりやで!」
「へぇーオッチャン詳しいなぁ」
「あったり前や!何年カエル打ってる思てんねん!7は押されへんけどパターンは大体知ってるでぇ!ハッハッハ」………
(木村のオッチャンありがとう
教えて貰った事こんなとこ来てまで役立ってるで
もし帰れたら1ヶ月ドリンク半額チケット進呈するわな!)
「ニィちゃん凄いなぁ!ホンマに7やんか
パターン全部覚えてんの?」
「いやいや そんなん無理やで この左上段7からのパターンだけや
いっつも左リールはこの辺狙って打つねん
ほんならこの左上段7からのパターンしか出えへんやろ?だから覚えててん
ラッキーやったわ オバちゃんコインありがとう!」
「何言うてんの1枚ぐらいで さぁ早よ打ち
放ったらかしてたら怒られるで ホラ」
「そやな!とりあえずBIG消化するわ」
思い掛けない幸運に恵まれ
笑顔でBIGを消化していく
…
しかし訪れた3回目の小役ゲーム中
妙な事に気付く
(あれ?何か出目がおかしないかコレ?
小役が取りにくい……あれこぼした!?
何でや!?前はちゃんと出来てたのに)
初代ニューパルサーのリプレイハズシに
悪戦苦闘するアタル
そんな時、となりのオバちゃんが焦ったように小声で話しかけて来た
「ニィちゃん!右から押して何してんの!?
店員がこっち見てるで!
私からコイン貰って7並べたんバレたらコトになるからやめとき!!」
「エッ!?わ、わかった!!」
慌てて順押しに戻す
(何でや!?ハズシぐらい誰でも………
あっ!そうかしまった!!
すっかり忘れとった!!
確かハズシが一般的に広まるのはコンドルが出てからやて言うてたんや!
しかもこんな裏とカエルしか無い店で
すぐビッグ当てた一見の客が逆押しなんか
したら攻略か、下手したらゴトと間違われるやんけ!!アカン今日はハズシは無しや)
順押しに戻し、すぐにJACイン
何事も無かった様に消化していると
シマの端でコチラを見ていた店員は
パチンコのシマへと消えて行った
少し咎めるようにオバちゃんが言う
「もうニィちゃん何してんの?変なことすんのやめときや私らカエルの客はエエけど
裏打ってる常連とか店員は怖い人も多いねんで」
「い、いや逆から押したらどうなるんかなー
と思って、ゴメンなオバちゃん普通に打つわ」
「そうしいそうしい普通にしてたら店員も怖い事ないからな、みんな優し…あっまた入ったわ!!」
すぐに横から手を伸ばし目押しする
「おっホンマや!どれどれ…オバちゃんまたビッグやん!ヒキ強いなぁおめでとう!」
「ありがとうニィちゃん!ホンマに助かるわぁ
またコーヒーでエエか?コーラもあるで?」
無事にビッグを消化し終わったアタル
「いやそんな飲まれへんから要らんよ
気にせんといてや、それよりトイレってどこにあんのオバちゃん?」
「あトイレやったらカウンターの左側やで」
「ありがとうちょっと行ってくるわ」
「いっトイレ言うてなハッハッハ」
オバちゃんの寒いギャグを華麗にスルーしつつ、トイレに入り用を足しながら考える
(今ヤメたら多分ナナロク[7.6枚交換]
やから4500円ぐらいか……
でもあの台は朝から1時間バケ6回のみですぐヤメた台や
ニューパルは4人中3人が適当打ちで箱使ってるからシマ全体の設定はありそうな気はする
今日は給料日前の20日で
客足が遠のく朝からの雨模様や
続行かヤメか…どうする…どうする…………
……ヨシ…10回ぐらい5以上の設定判別しよ
アカンかっても2千円分ぐらいはコイン残るやろ…ほんでそのコインは流す
判別落ちても飲まれたらヤメや
今の俺にこのコインはすんごい貴重やけど
ニューパルに56使う店かどうなんか分かったら収穫はデカいからな
とりあえずの4500円と
悪い情報プラス2000円or良い情報プラス0円やったら後者やろ!!
先の事考えたら家から近いこのS店の情報はどうしても欲しい
この時代の判別やったら店員にも怪しまれへんやろうし、決めた判別や!!)
そう決めたアタルは席に戻るなり56判別を開始する
(頼むで落ちてやぁ…
育ち盛りの中学生活掛かってんねん…
確か初代は1ゲーム消化の3の9で9繰り返しで24以降30の時やったな
懐スロゲーセンのオーナー舐めんなよ!?
店オープン前やったけど………
ニューパルとアレとアレだけは何回もやった判別やソラで言えるぐらいよぉ覚えてるわ)
そして次々と訪れる審判の時…
1回目…チェリー
2回目…ハズレ
3回目…チェリー
(良しエエぞ、油断大敵やけどこれはエエ流れや この調子で頼むでぇ)
そして4回目が来る前に上段7・7・BARが
一直線に並ぶリーチ目が出る
(よっしゃぁぁぁあビッグ確定の目や!これで首の皮は繋がった判別続行や!)
すぐにビッグを消化し
またリプレイ抜きで24ゲーム回して
判別を続行
4回目…チェリー
5回目…ハズレ
6回目…チェリー
7回目…チェリー
8回目…チェリー
9回目…ハズレ
そして10回目……を迎える前に
今度は右下がりにテンパった7にゲチェナが飛び込んで再びビッグスタート!!
(ヨシ!こうなったら判別20回までやって確実にしよう多分大丈夫やろうけど慎重に行かんとな)
「ニィちゃんの台も調子エエやんか!私の台も当たってんまた頼める?」
「当たり前やんか遠慮せんとドンドン言うてや!その代わりこの台の事
捨てた常連オッチャンには内緒にしといてな?」
「ハッハッハわかったわかった!内緒にしとくわ、でもあのオッチャンは優しいから大丈夫やで」
そんな会話をしながら、判別を続行する
結果は20回中13回チェリーが落ち
設定5以上がほぼ確定
更にその後の判別では設定6が確定するという最高の結果に
(おぉこの台6か!ニューパルの6言うたら
機械割113%ぐらいやで!あ、でもハズシ出来へんから112%ぐらいか?それでも十分や持ち玉やし打つしかないやろ!)
アタルにとっては久しぶりの
この身体になってからは初めてのニューパルサーの設定6に興奮し必死になって回し始める
(あれ?そういうたら…この身体なってから
パチスロ打つんは初めてか
初体験がニューパルの6とは幸せな身体やでハハハ)
そんな事を考えながら
フィクションです
中学生は打ってはいけません