衝撃のRRダブルアール
何かが聞こえる
…タル………ア…ル………
ユサユサと揺さぶられる体
アタル……
「アタル!起きぃアタル!!」
「ウワォァア!!?」
バッっと跳び起きる
と…目の前にいるのは
眼つきの悪い白髪の老人
「ジィちゃん!?!?何でや!!?」
思わず叫ぶアタル
(何でジィちゃんがおんねん!?
俺が27の時に死んだ筈やのに!!)
死んだ筈の祖父が口を開く
「何でてお前……
もう起きな電車間に合わへんぞ?
明日の終業式遅れるやないか…
21時18分の電車乗るて言うとったのに」
全く理解が追いつかない
「え……いやいや
そんなことちゃうねん!!
…………は?……………終業式?」
「何を寝ボケとんのや…エエから早よ顔洗ろてこい ホンマに間に合わんようなるぞ」
そう言うと祖父は立ち上がりトイレへ向かった
「あ……うん」
(いやいや どういうこっちゃ!?
ジィちゃんが生きてて終業式?)
困惑して周りを見渡せば色々な事に気が付く
(仏壇に畳……それに大量の歌詞カード
ここはジィちゃん家か!?でも何でや
夢か?いやそれにしてはリアル過ぎるやろ…
それに終業式って何や?
子供作った覚えは無いぞ…ていうか結婚もしてへんわい!!)
ジャァー…バタン
困惑するアタル
しかし事態は絶え間なく進み
トイレの音にふと顔を上げると
「何やまだボォっとしとるんか早よ顔洗え」祖父が言う
「わ、分かった」
取り敢えず洗面所に行き顔を洗うことに
顔を洗ってタオルで顔を拭い、鏡を見た……
瞬間
思わず叫んだ!!
「何やコレ!!!?…顔ッ!髪も!?
何でや!!?」
そこに映し出されたのは…………………
髭も白髪も無くテカっと張りのある肌をした若い自分の顔
(若なってる!?何でや!?ツルツルや!!顔も真っ白やし髪も真っ黒やんけ!!)
益々困惑する
そんな孫の様子に
祖父が心配そうに尋ねた
「アタル…………お前大丈夫か?…
やっぱりあのロクデナシと何かあったんか?……………」
「えっ!?!?」
「なぁアタル…お前やっぱりコッチの中学に変わったらどうや?……ジィちゃんな………お前が」
突如始まった祖父の独白に慌て
「だ、大丈夫やって!!…アレや!…
あのー……顔に畳の跡が付いとったからビックリしただけや!!ハハハハ」
言葉を遮るように咄嗟に思いついた
苦しい言い訳を言い
そして何となく状況を理解した
(わかった中学生!!それも中1や!!
オトンにシバかれて御守りの5千円で
ジィちゃん家まで逃げたあの時!!
完全にわかった……ということは
今は95年夏の終業式前日7月19日か…
どうする…どないしたら……
でもジィちゃんに……いや……
…そうや……そうや!今はジィちゃんや!)
混乱する頭を無理矢理抑え
今の自分が優先する順番を決めていく
(夢でも何でもエエ!!後で考えたらエエわ
今は兎に角ジィちゃんに心配掛けたらアカンやろ!!
ジィちゃんも年金生活で余裕ないハズやし…その上あの頃の俺は気弱で心配ばっかり掛けとったもんな……
でも今は一味も二味もちゃいまっせぇ
見た目は13歳で中身は40歳じゃ!!)
少し考え…
決意して口を開く
「ジィちゃん」
「ん?」
「ホンマはな…昨日オトンにシバかれたんや ほんで逃げてきてん」
「やっぱりか!!あのロクデナシがっ!!
アタル!!お前やっぱりコッチの中学に」
激昂する祖父を遮り言葉を続ける
「でもな!今日1日考えたんや………
ほんでな…決めたことがあんねん」
「……………何や……言うてみぃ」
「僕な………いや……オレな…………
ヤラレっぱなしはもうヤメるわ!!
強なるわ!!
強ならなオトンにシバかれて
変なオバハンに嫌味言われて
泣きながらジィちゃんに心配掛けるだけやもんな!!」
「アタル……」
「大丈夫や!もう中学生やから……だから…もう心配せんといて!!」
思わぬ孫の言葉に涙ぐむ祖父
「そうか……僕はやめて…………オレになるか……強なるか…そうか………」
と その時
ボーンボーンボーン
静かな時間が流れる中
空気の読めない壁の時計が21時を告げた
「アカンもうこんな時間や!!
アタル駅行くぞ!急げ!!」
「わかった!」
バタバタと玄関へ行き靴を履く
駅までは祖父の住む団地から徒歩15分
急げば18分の急行に十分間に合う距離だ
2人並んで駅へ向かう途中
祖父が孫へ優しく話しかける
「なぁアタル」
「んー?」
「やっぱりなジィちゃん お前が心配や……
でもな…強なるって言うたお前のこと
僕はやめて俺になるって言うたお前こと
ワシに心配掛けたないって言うたお前のこと
心配すんのとおんなじぐらい信用しとる
…だからな…だから…もう無理や!ってなった時は何時でもジィちゃんに言うてくれ……
電話でもエエ…家に来てもエエから……
約束してくれ……頼むわ」
「ジィちゃん…」
(アカン……泣きそうや…
こんなに心配してくれてたんやな
ありがとうジィちゃん……………
中身は40歳やから涙腺弱いねんで……
でも今は泣いたらアカン!!
例え夢でもこれ以上心配掛けへんようにせんと)
「わかった約束するわ!そうやな
これからは何も無かってもたまには電話するから大丈夫やで、それやったら安心やろ?
ありがとうなジィちゃん!また遊びに来るわ!」
「そうか!そんなら安心やな!ハッハッハ」
そう言った時に見た祖父の顔は
アタルの記憶の中でも最高の笑顔だった
暫くして駅に到着
切符を買い改札を抜けて改札を挟み
向かい合った祖父が何かを差し出した
「アタルこれ新しい御守りと小遣いや
持って行け」
祖父の手にあるのは
右手の1万円と左手の3千円
「ちょっとジィちゃん!?
こんな大金アカンて!!」
(何してんや金無いのに…)
「エエから持って行け!
前にやった御守りの5千円
帰りの電車賃で無くなってしもたやろ?
新しい御守りや
中学生やからな御守りも中学生料金や」
「ジィちゃん…でも…」
「それからこっちは小遣いや
中学生なったら色々あるやろ!
女の子とデートするとかな!ハッハッハ……ホレ何してんねん持って行け!」
押し付ける様にお礼を握らせる祖父
そんな精一杯の気遣いに
渋々アタルが折れた
「ジィちゃん……ありがとう!デートの予定は全くないけど…イザという時に使うわ!」
(そうか俺は今文無しか
言われるまで気付かんかったわ…
ジィちゃんありがとう…心配掛けへんて誓ったばっかりやのにいきなり心配掛けてもうたなぁ…)
遠慮がちな孫を見て笑う祖父
「何やデートの予定も無いんか?
ジィちゃんなんかこの辺では
団地のRR[ダブルアール]言われてんねんで
カラオケ大会には引っ張りだこでモテモテや!ハッハッハ」
「だ、ダブルアールて…何やそれ…初めて聞いたわ…」
(ジィちゃんのカラオケ好きは知ってたけど大会も出てんのか、元気やな…)
と、突然何か言いづらそうにする祖父
「それからなぁ………その……
今回はまぁ……言わんとこうと思っとったんやけどなぁ……」
そんな祖父の様子を見て
嫌な予感が走る
「ど、どないしたん?」
(何や?ひょっとして何かあったんか!?)
「いや…ジィちゃんなぁ……」
意を決し
強い口調で尋ねた
「どないしたんよ?ハッキリ言うてや!
強なるって言うたばっかりやん!」
すると……祖父の口から出た言葉は
全く想像だにしない内容だった
「そうかぁ?……
……実はなぁ………
……………
…ちょっと好きな女が出来てな……
……………
付き合う事になったんや、この前から」
時が止まった気がした
「ハァ!?つ、付き合う事にした!?!?
何で!?相手は!?いやいや待ってや!!
こんな別れ際にとんでもない爆弾投げてくるやん!!ジィちゃ」
その時
まるでタイミングを計った様にホームに響くアナウンス
「あー間もなくぅー
2番線にぃー急行列車がぁ到着致しぃます
黄色い線の内側までぇお下がり下さい」
プルルルルルルルル
「ホレ電車来たぞ!急げアタル!
またな!!」
「いや またなって…あーもう!ジィちゃん!後で電話するから!!」
「いや…今日はこのまま家帰らんから無理なんや、また今度にしてくれ」
「泊まる気やん!!完全に泊まる気やん!!
ダブルアールが本気出す気やん!!」
プルルルルルルルル
発車のベルが鳴る
「あーもう!!エエわ!ジィちゃん!!」
「ん?」
走りながらアタルが叫ぶ
「お幸せに!!」
そう叫びダッシュで電車に乗り込んだ
プシュー
扉が閉まり、ふと改札を見ると
手を振る祖父の口元は「が ん ば れ よ 」
そう言っている気がした
RR ダブルアールとは
ロバートレッドフォードという
海外の有名な俳優さんです




