新たな時代へ
4月7日 水曜日 12時54分
フロントガラスに張り付くピンク色の花びら
正面入り口から見える五分咲きの桜が
駐車場の車へとその花びらを振り撒く
ラジオの天気予報によると昼からは雨
2日前の月曜日から急に上がった気温は
今日も薄着を要求した
グレーのヨレたツナギ姿で頭にタオルを巻き
サングラスを掛け薄っすらと顎髭を生やした男は口にタバコを咥え
183cmで89kgとやや肥満気味の体型を
成長期という理由で誤魔化している
新装開店の登りがはためくN店正面入り口
先頭に立つアタルは気合いを入れていた
(さぁ今日はやるで!!)
そんな男に後ろから
厳つい声が掛かる
「おっ、ニィちゃん今日も先頭か
若いモンは気合いがちゃうのう
ハァッハッハ!」
アタルにそう声を掛けたのは
最早お馴染みN店常連客の源のオッチャンだ
後ろを振り向き挨拶を返す
「ハッハッハ今日もやるで!
最近新台エラい人気で台取りも大変やからな
オッチャンも源さん頑張ってや!」
「そうかスロットも大変やのう
任しとかんかい!今日の71番台は一味ちゃうで!」
そう言って毎日71番台に座るオジサンに
ツッコミを入れられる者は誰も居ない
するとそこへ
遂に店員2人が現れた
(来たな!)
ガラス扉の鍵を開け
左右に分かれて入り口の客を止める
そんないつもと同じ光景に
何故か緊張感が増してしまう
「走らないようお願いしまーす!
それではどうぞー!」
それを合図に
先頭のアタルが猛ダッシュで右へ
後続の客達も一斉それへと続く!
真っ先に見えた赤い新台へセブンスターを投げ込み、しがみつくように席へと座り
見事にカドの525番台を確保して
心の中で雄叫びを上げた
(オルァァアアア!!!
カド台は俺のモンじゃあぁぁぁああ!!!)
千円札をサンドに入れコインを下皿に移し
新たなタバコに火を付け辺りを見渡すと
あっという間に新台は埋まり
次に背面のサンダーも埋まっていた
タコスロにはハチローさんこと畑野の姿と
ドラキュラには後輩2人の姿も見え
ニューパルサーやピンクパンサーも
次々と埋まって行く
(流石新装やな…)
「失礼しまーす」
「あっすんません」
台の電源を付けに来た店員に気付き
席を立つタイミングで通路の奥へと進み
精算ランプをチェック
(赤パルが508でピンパンが503か…)
すぐに自分の台へと戻り
席に座って新台の真新しい灰皿に
灰を落とした
(ハッハッハまさか入学式に新装とは
ケイもユウイチもついてへんなぁ)
ウルトラマンクラブ3
通称マンクラの愛称で親しまれ
98年春サミーから登場したBタイプCT機
Aタイプ技術介入機が主流となり始めた中に
突如として登場し革命を起こしたマシン
何といっても話題となったのは
BIG終了後2分の1で突入する
CTで終了条件は
99ゲーム消化or純増200枚越えorボーナス成立の3つ
これにより純増200枚獲得した状態を維持しつつ99ゲーム間コインを減らさずにボーナスを待ち続けるという
新しいゲーム性を世に知らしめた
更に設定6の機械割が140%を越えており
設定6=エクストラ設定をその後に定着させた事でも有名な一台
(確かケイはCT機好きやったなぁ
デカチリや万枚や言うて騒いでたっけ
でもあれは確か17ぐらいの頃やから
後1年ぐらい経ってからか)
そんな友人の言葉を思い出すと
もう1人の先輩も思い出す
(そう言うたらマサやんは
今年の冬辺りに色々と騒ぎ出す頃か
一撃がなんやかんや言うて)
首を後ろに倒し右を見ると
後輩2人も開店の合図を待っている
(ヨシキにもそろそろ判別教えたるか
夏前頃にはアレも出るし丁度エエやろ)
視線を前に戻し
タバコを消して腕を組む
(また夏にはカズヤさんのとこ行かなアカンなぁ……一応お礼の挨拶もせなアカンし
お歳暮でも贈ろかな)
コインを右手で掴み
掌でチャチャっと纏めた
(山村さんもカオルさんも折角誘ったのに…
[アタルが6掴むの分かってる店は嫌や]とか
言うんやから笑うわハッハッハ)
そのまま投入口にコインを入れると
ポワポワポワと独特な音が鳴る
(あーユウイチにCTの説明すんの面倒くさいな…ややこしいから打つなって言おか……)
その時
[アタルそんな事言わんと頼むわ]
と、三田の声が聞こえた気がした
(…ハッハッハ!やっぱりアカンかヨシヤ
まぁお前の頼みやからちゃんと教えるわ)
下皿からタバコを出して咥え
オイルライターで火を付ける
カキンッ……シボッ……
チリチリとセブンスターの先端が焼け
スーッと細い煙が上がって行く
カシャン
蓋を閉じたオイルライターを見つめ
ゆっくり煙を吐き出して
スッと視線を宙に外した
(ジィちゃん…俺の事なんか気にせんと
長生きしてや……金は何とかするからな)
祖父の家に預けた卒業証書
その額縁の裏にそっと挟んだ白い封筒
(……オカン……今度はちゃんと待ってるで
いつでも出て来てや……頼むわな……)
その時
ピィー………ガガッ……
っとマイクの音が聞こえ
店員がアタルの横へとやって来た
(よっしゃ!いよいよスタートや!)
「あー…はい、それではどうぞー」
その声を合図にレバーを叩く
チュイーンというスタート音を鳴らし
リールが回転
ホワッ…ホワッ…
っというストップ音と共にボタンを停めると
ブシッ!
っというテンパイ音が鳴り
青7が右上がりにテンパった
(…まさか…)
嫌な予感を感じつつ
右リールにも青7を狙う
ホワッ…
タタタッ…タララー…タララッタララー
タタタタターン!
軽快だか虚しい音楽と共に見事
CT無し確定の青7モーニングBIGがスタート
(……ま、まぁ6やから!いけるいける
さぁ張り切っていこか!!)
遂に登場したCT機
これ以降様々なタイプの台が登場し
スロットは益々盛り上がりを見せ
遊技人口を伸ばし続けて行く
そしてアタルもそれに伴い
新たな人生をスタートさせた
だが……
それはまた次の機会に
完結致しました
ここから先は修正作業に入りますが
大筋での変更は御座いませんので
ブックマークは外して頂いて結構です
稚拙な文章にお付き合い頂き
本当にありがとうございました
尚、続編は御座いますが発表時期は未定です
その際にはまた宜しくお願い申し上げます
2019年2月17日 煙爺




