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第二十話 兵士は過去の仲間と出会う


 時間は少し遡り、要が黛たちと別れた直後。


 要は荒れた地面をかけ種崎の元へ走っている。


 黛のおかげで要は種崎の元へ向かうことができた。もちろん二人は心配だがそれよりも種崎の方が気がかりである。

 一対一で戦っているというのもあるのだが、要は燃え上がった火柱に見覚えがあった。


「まさか……」


 嫌な予感がするが向かわなければならない。この予感も杞憂であると自分に言い聞かせるように押し殺した。


 そして要は左肩に触れると、

「……我、文字を司りし者。文字を纏いて此処に体現する」


 小さく呟くと右肩がぼんやりと光り、要の走る速度が上がった。


 要が通り過ぎる道は見覚えのある道もある。一年前のことが思い出され、顔を曇らせる。この戦いも覚悟はしていたが、覚悟していた時には知らなかったことを知ってしまっている。


 思考が駆け巡りまた要の心が黒く染まっていく。


「……余計なことを考えるな!」


 要は消し去るように首を左右に振った。


 こんな状態で戦闘に集中できるはずがない。今は戦場に立っているんだ、無駄なことは考えず集中しろ。

 一番危険なのは種崎である。走っている最中にも火柱や炎が上がっているのが肌で感じ取れ、急がなければ本当に種崎が死んでしまう。


 すると、またもう一度近くで大きな火柱が上がった。


 もうすぐだ、あと少しで種崎のところにつくことができる。


 より速く走り要は先ほど火柱が上がったところへ向かう。


 そしてついに、要の視線の先に人物が映る。


「種崎!」


 考えるよりも先に声が出てしまった。種崎は要の声に驚き一瞬こちらを見るが、すぐに前を向き身構える。

 種崎が話したくないのは要も分かっている。それは要も同じだが種崎の無事が確認でき一安心である。


 種崎の元にたどり着いた要は種崎の顔を見ると、顔は少し黒く汚れ服もいたるところが燃えた跡が付いている。よく一人でここまで戦えたと思わず内心では感心してしまう。


 当の種崎は要に見向きもせず、敵に集中しているのか目も合わせようとしない。


「よ、よく無事だったな……」


 要はしどろもどろに喋ってしまった。どこか気まずい気持ちになり何を言えばいいか考えていなかった自分を後悔する。


「……当然でしょ、それよりも敵に集中しなさい」


 相変わらずの素っ気なさだが、その言葉で要は敵の存在を思い出す。


 そうだ、今は敵から種崎を守るために来たんだ。


 要も種崎が向いている方向へ向き刀を抜く。


 視線の先には炎が広がっており敵がどこにいるかが分からないが、要はやはりこの炎に見覚えがあった。頭のどこかでそうであってほしいと願う反面、違っていてほしいと思う自分がいる。


 そして炎の向こう側から人影が近づいきた。


 シルエットが炎で映し出され要は息を飲んでしまう。


「あまり逃げないでよ。あなたが逃げ回るとここら一帯、燃やし尽くしてしまうんだから」


 戦争に参加しているのにもかかわらず落ち着いて話す女性の声が響いた。


 要はその声を知っている、そのシルエットも要は知っている。


 炎を操り道を作ると姿が現れ、要は驚きのあまり口を開けてしまう。


「あれ? もう増援が来たの」


 ミディアムに切り揃えらえた茶色い髪を後ろに軽くまとめており、見た目は凛としている女性が出てきた。


 炎を操る女性は種崎とは別の人物がいることに気がつき要に視線を移すと、

「え…………」


 その女性も言葉を失った。


 二人の視線が重なり固まってしまい、種崎は二人がなぜ動かず喋らないのか戸惑いながら不思議に視線を向ける。


「ちょ、ちょっと……どうしたのよ」


 要は種崎の声は聞こえていない。目の前にいる人物が要のよく知る、失ったと思われた人物だからだ。


「あ、あかね…………なのか……?」


 要の声は少し震えていた。


「かなめ、なの?」


 女性の言葉で、要の脳裏が鮮明になっていく。

 今、目の前にいる人物は要が西日本軍の訓練施設から一緒にいた、一年前の戦争で死んだと思っていた人物、志波茜だ。


 茜も要が死んだと思っていたのか信じられないように見る。


「本当に要?」


「茜こそ、生きてたのか……」


 一年ぶりの再会に二人は何を話していいか分からず戸惑ってしまう。しかしお互いに生きててくれただけでよかったと安堵する。何よりも要にとっては自分のせいで死なせていないということが分かり、それだけで救われた気持ちだ。


 すると茜は要の身なりに目を細める。


「あれ、でもなんで東日本軍の方にいるの?」


 茜の質問に要は固まってしまう。茜としては疑問に思うのは当然だが要にとっては聞かれたくないことであった。ここで茜に会うとは思っておらず、なんて言えばいいか分からない。


「私はあなたが死んだと思ってたから生きてて本当に良かったけど、これはどういうこと?」


 一番会いたかった人物なはずなのに、なぜ、ここで出会ってしまったのか。


 何も言わない要に茜は困惑する。せっかく会えたのに敵としているのがありえないよう視線を向ける。


 要が答えあぐねていると、

「ねえ、もしかしてあいつと知り合いなの?」


 横にいる種崎が投げかけて来た。


「そ、それは……」


 この質問にも要は黙ってしまう。

 二つの質問が要を押し挟み要の心音が速くなっていく。


 要を案じてか茜は心配そうに目を向ける。


「要、もしかして捕虜として捕まったの? だからそっちでこき使われているの?」


 それは違う。ここには自分の意志で立っている。

 しかしここには種崎もいるのに本当のことを言っていいのか。もし言ってしまえば東日本にも西日本にも入れなくなる可能性があるのに……。



 頭の中で思考が駆け巡る、が答えなんて見つかるはずもない。



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