表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨と少女と黒い怪物  作者: ローシュ
第一章 雨降りの街インベル
4/10

断章 夢の果てまで

『古代文明』

現代よりも優れた魔術を持っていた者たちの世界。

現代の人間には扱えない不思議な道具が遺されている。

この世界には、古き文明が栄えた跡がある。

人はそれに触れてはならない、きっと恐ろしいことが起こってしまうから。


ああ、だから言ったのに。




 彼らが持ち出した遺物は『アーティファクト』と名付けられた。

『アーティファクト』は人知を超える魔力を秘めた魔法道具だ。

ゆえに人が使える代物ではない。


「だからってなんで私なんですか……」


 白衣を着た少女が怒りに任せて机にファイルを叩きつける。

大量の書類が入ったそれは大きな音を部屋に響かせた。


「……ルナリス。これは決定事項だ。覆すことは出来ない。お前以外に適任者はいないんだ」


赤毛の男は、少女が叩きつけたファイルを机から回収しながらそう呟いた。


「そんな……わ、私がもし死んだらどうするつもりなんですか……!」

「……ならば、お前以外に適任者はいるのか」


男からファイルの中の書類の一つを手渡される。

書かれている条件を何度確認しても、自分以外に適任はいないと書かれていた。

それも、この男が書いた推薦状だ。

今目の前にいる男は自分より位が上の研究者、自分が刃向かって勝てる相手ではなかった。

悔しくても逆らえる相手ではない、そんなの知っているんだけど。


「どうした、ルナリス。もう何も言えないのか」


男は書類を見つめるルナリスをつまらなさそうに眺める。

もう少し何か言うのかと、期待していたらしい。


「……ルナリス。それを読んで満足したか?」

「出来るわけないです……でも、何を言っても無駄なんでしょう。あなたは私が死んでもいいと、そう思っているのでしょうから」


書類を彼に返し、ルナリスは渋々と言った様子で頷いた。

そして、肩をすくめて部屋を出ていった。

一人残された男は書類をすぐさまファイルの中に戻す。


「実に心外だな。死んでもいい、なんて一言も言っていないのだが。俺はそれよりも『アーティファクト』がどんな力を持っているのか気になっているだけなのだがなぁ?」


ぱらりと額に落ちる髪を優雅な手つきでかきあげ、彼は小さくため息をついた。

その視線の先に、どこからか持ち出したぼろぼろの黒い本を置いて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ