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愛歌 <紫穂&水葵 ゼファー&メサイア>

夢愛

作者: 紫

 水葵と紫穂の容姿生い立ち


≪紫穂≫


 ロガスターのGAグレートアサシンになる為に組織を総括する水天の血族の下、遺伝子操作で生み出された。

GBCグレートブラッドチャイルドである。

容姿:

 優雅で気品に満ち溢れた心の透き通る女性。

 水の様に滑らかで全体的な漆黒の艶髪を、浮かせる事無く綺麗な背に伸ばし下ろしている。

玉子の顎上の、赤く熟れた上品な形の大きな口元は潤い、制御され尽くした高いソプラノは空間にそっと余韻を残す。

高い鼻立ちと巨大な瞳は黒ダイヤのような大きな瞳が艶を持ち光り輝き、分厚く長い睫はカールし、全体的に美しく麗しい派手顔だがあくまで潤う気品のある顔立ちだ。

スッとした細い首から、美しいラインを描く鎖骨が覗き、緩いVを描くドレスはブラックビロードで、それはなだらかな肩から、上腕を包み白の下腕からの七部を緩く開いている。

整った胸部と括れた腰を包み、彼女の肉着きのよい腰元から細長い足首まで緩く広がっていて、シックでエレガン度な形をしたドレスだ。

 彼女の首元からは、ユリアの形見である半透明の黒い石の鋭い形をしたブラッククロスが揺れている。

クリスタルの白雪肌は張りと弾力があり、182の長身はグラマラス。その彼女の綺麗な足元を黒のヒールが包む。


 同じGBCであり、元戦闘員GA、コードネームブラッククロス、最高幹部長水天ユリアに紫穂の部屋で育てられ続けた。

殺しを嫌い続けてきては20で体力低下から殺しを引退し、最高幹部長に就任したユリアは、とても心が純粋な女性だ。

彼女が幼い頃から秘密で仲良くしていた隔離された純粋な青年と接しつづけてきた事から来る。

 ユリアは彼が組織体制の元、殺されてしまった青年の形見のグランドピアノの銘器、ベーゼンドルファーと、彼から貰ったブラッククリスタルの十字架のネックレスを大切にしている。

 彼は幼いユリアにずっと殺しへの恐ろしさ、罪を続ける者はいつかは黒い十字架に上げられる。

そして、心もこの黒の十字架が透き通ることも無く闇に落ちてしまってはいけないといいつづける。この十字架のように頑なな純粋な硬い心を大切にしつづけるようにと言い聞かせつづけた。

 その青年もGBCであったが、様々な体の不都合からデータを全て搾り出されるまでを生かされていた青年だった。

そのため、紫穂もとても純粋な少女である。


 GAを凌いだ初のグレード、TGAトップグレードアサシンの称号を持つコードネームWALSS。

240の信じられない長身にも関わらず、顔身体共に完璧に左右の対照と均等が取れている。彼はよく姉に連れられ組織内エステに通っている。

彼は完璧なる無感情で無表情、本名は早鬼籐由佳里さきとう ゆかり。頭脳にも長け、WALSSの傍ら司令棟情報部でも16の年齢から働きかけていた。

 彼が組織に介入したのは13であり、それまで元気で人気者で優しいという普通の小学生だったのだが、組織まで連れてこられた。3年間で急激に驚異的力を手にし世に出た。

その3年間で完全に記憶を喪失し、感情も削げ落としてしまっている。その為に実に瞳が冷めた色をしていて、人から恐がられているものの、規律有るしっかりとした綺麗な顔立ちだ。その頃から彼の常語は敬語謙譲語だった。

 無駄口が嫌いで大体無口を装っているが、一言言う辛口に姉は毎回悔しがっている。もし許されて口を開きつづけようものならその静かな口元から信じられない辛口がガンガン出てきて停まらないだろうと思われる。姉に思われている。彼は動物好きなので愛護協会に大金をはたいている。

 毎回の姉との掛け合いは半漫才化する勢いで、元の性格が天然だった為にそれは残っていて、冷静沈着で最後には姉を負かせる冷めた辛口ボケの弟と、そんな弟の天然にずばっと突っ込んでは毎回キレ始めて負けて悔しい!!と叫ぶ半自虐泣きのお洒落好きで派手な性格の綺麗なイタリーハーフのお姉さんである。狐花がよく忙しい弟にちょっかいだしてショッピングの荷物持ちやエステなどに連れまわってからかっているので、2人は実に仲がよい。ように見える。と紫穂によく言われている。

 彼は組織血族GBC達の中でも頭脳清栄部隊から選抜される司令塔での司令上層陣、最高幹部で初めて血族外の人間として最高幹部副長に任命された。ボス水天恵也から3歳の紫穂を、最高幹部長、ユリアと共に育成するよう命ぜられる。

 彼はブラッククロスだった時代からのまだ見ぬユリア、最高幹部長をずっと憧れ深く尊敬しつづけていた。


 純粋な紫穂は美しく成長を遂げて行く。黒豹の様に、輝く漆黒のダイヤモンドの様に。最も美しく高貴とされる紫の名と、豊かな力強い黄金の麦穂の様に、そして。クリスタルで出来上がった鋭い剣の穂先の様にだ。


 早鬼籐という最高の監督の元、紫穂は順調に腕を磨いて行くものの、やはり、ユリアに育て上げられた為に殺しを嫌っていた。

早鬼籐に紫穂は大いに懐いていて、彼にいつも、いてあたりまえ、いてくれなくては困る酸素のような大切な人。私の最大に尊敬する人と認めている。ユリアも彼を第一に信頼、信用している。


 そんな中でも、ユリアの体は限界に来ていた。

原因の完全に不明な病魔は20の頃から彼女を襲いつづけていた。最高の腕を持つ名医でもある早鬼籐は、医療部長の兄ドクターセロウと共に彼女の病原体の究明を続けていた。

 だが、紫穂がプロになる間近、11才の時にユリアは遂に亡くなってしまった。

ブラッククロスネックレスが原因だった事を、ユリア、早鬼籐達、彼女に贈った青年自身も誰も知らないことだった。

 その原石はロガスターが開発した原子パワーを最大限に増大させるという強大破壊武器の心臓部の石材だった。

だが、それは開発中、多くの欠点、危険要素が発見されたために研究は急遽打ち切られ、完全に厳重処分された。それを、まだ開発途中、青年が持って来た。その漆黒で美しく透き通り幾重にも輝きを屈折させる原石を十字架の形に堀削ったのだ。

その時代はまだ早鬼籐は組織に介入していない時期で、その危険な研究物のデータも消去されていた後だった。

 その黒の原石は人体に強大に影響を与えつづけた。分子を原石に吸収して行き、そして機器心臓部から原子を何倍にもして発させる代物だ。その為、人体を形成するパワー、分子を十字架は吸収しつづけことごとく奪って行った。

彼女は体内が、まるで何かに全ての色彩を吸い取られたかのように真っ白になっていた。


 ユリアをいきなり失い、初めて感じた怒りの感情に対処しきれずに向け所も分からずに、早鬼籐に辛く当たってしまう事にももどかしさを抱えていた。そして、どうしても哀しくないわと強がってしまう自分にもだ。

それでも彼女は怒りの向けどころを全て訓練に向けてがむしゃらになった。

 そしてユリアを失った1年後、彼女は12の年にプロへと転身する。そして、そのパートナーに当てがられたのが、2流ステージの男である、16才の森長水葵だった。

 彼はロガスタースポンサーの株であった為にステージ入りしてはいたものの、その腕前はプロ以上である事は分かっていた。だが、精神性格上の危険性からプロ入りさせる事は無く、同時にプロしか入れない組織本部棟にも入ることは出来ずにいた。



≪水葵≫


スポンサー管理枠。2流クラス・ステージ8。実力プロ以上。コードネームシルバーウルフ。人種フランス系ロシア人。別名MM。

容姿;

 のべた金属のような純銀色の髪をいつもハードに流れるようにセットしている。2メートルの長身をいつも白シャツ、首に銀アクセ、牛黒の皮パン、ブーツで装い、耳に黒鳳凰の羽根の小ぶりの輪ピアスを嵌めて愛車の漆黒と純銀ハーレーで行動。冬はショットのワンスターライダースを羽織っている。

真っ白な肌の全身に入墨が入っていて、黒鳳凰、黒龍、黒豹が上半身と両腕に入り、項に蜘蛛のタトゥーとインプラント、左手の甲に不気味で灰水色の運命の歯車、腰から骨盤、大腿部上部に掛けて対の鮮やかな睡蓮とそれに絡まる蛇が入る。睡蓮から長く真っ直ぐな両足に細い足首まで対の鮮やかな細い龍が水の流れの様に入っている。

黒墨で肩甲骨の間に『葵』の字、溝内上に『紫』、へそに『死』、背骨腰上に『愛』が入り、紫穂と水葵の愛情の形を現したようなものである。

 顔立ちは極めて派手で、エジプト人の血も入っている為に目元が艶やかでエキゾチックな大きな猫目をしているが、顔全体の印象は性格も相まって冷めた涼凛とした風雅。二重が広くでかい。睫が長く多いので、まるで黒のアイラインを入れているように際が黒く、彼の銀のような瞳を尚一層際立たせている。 すっと通った綺麗な鼻梁としの下の唇は厚くでかいが、品がある。


 軽めに説明すると、彼はフランス系ロシア人貴族の女がエジプトの王と浮気をして産まれた双子の兄である。

日本で秘密出産されたと共に切り捨てられ、日本人の男森長に育てられつづけ、互いに本物の親子だと信じつづけていた。父の職場でも在る新宿歌舞伎町で幼い頃から育ち、物心ついた2歳の頃から危険な遊びや殺しにギャンブルにアングラに身を投じていた。

 彼は13の時に貸切百貨店に買い物に来ていた先の組織の秘蔵子、紫穂に出会った事から、14のバースデーにスポンサーに感づかれ父親を殺され組織に引き入れられた。

彼の声音は冷めて荒涼としている。

 だが彼は元々精神的混沌とした異常さがあった。それでも狼の様に唯一父親を信頼し尊んでいた。

彼は低俗な世界を毛嫌いし続けていたために最上を追い求めつづけ、毎日こんな見合わない世界など消えればいい、完全に興味ないと思っては生きて来たものの、彼には外面の良さとウィット感があった。

馬鹿な振りをして連れと共にはしゃぎ馬鹿をしては自分の力量を仲間達には見せなかった。低俗の世界にいなければならないのならそれに合わせてやっていた。

だが元々、醜い存在が大嫌いで許せないし、極めて冷めたクールな性格な為にそれはよく覗いていた。

 その一方、自分の理想とする世界観と服装、貴金属、持っている物、遊び、享楽、全てに関してプロデュースし体現し続けて来た。

共に、最大の対人、人体的潔癖だった彼は自分の最上の理想の女が現れるまでは絶対に体を許すことは無く、色男だから言い寄ってくる女にも絶対に目を向けなかった。そんな彼の2才時はと言うと、あの顔のせいもあり、超!雅で可愛かった。


 14で組織入りすると宮城という、どうしようもないジャンキーをパートナーに与えられうんざりしていた。

だが、半年後に新しくまともなパートナー臣倉凱と組むことになって極稀に信頼を置いた人間にはとことん親しくするタイプの水葵は父親以外ではじめて臣倉に信頼を置くようになり、兄貴の様に思うようになるものの、水葵の力の異常さには彼も気づいていた。

あいつは雑魚のステージ8,9には見合わない。凱自身もプロの腕前を持っているたものの、やはり秩序あるまともな風貌の者以外は本部入り出来なかった。水葵も凱も危険地帯に足を普通に踏み入れ行動地帯にするアウトローだ。

 臣倉は彼の隠している闇中の銀色の全てを業火で焼き尽くすような一触即発の鳳凰のような精神的異常さ、危険な程破壊神に身を投じようとしている、宇宙観念に危険な精神を重ね合わせている事を感づいていたから、力にも一目置きながら、水葵からは兄貴の様に慕われながらもふざけあって水葵によくまんまと悪戯半分に嵌められながらも心では畏怖しいつも様子を窺ってきていた。

だが彼はあくまで連れ達の前では馬鹿を演じつづけていた。

 自分を最大限に体現しつづけ、殺しを首尾よくこなし、遊びに趣味にギャンブルに豪快に体現しながらも、まだ世界には当然全く満足していなかった。

 彼は姿無き伝説の悪魔的破壊力と勢力を見せつづけるWALSSの存在を追いつづけていた。


 そんな彼も16になり、プロへなるようにお上から言われると本部に足を踏み入れ、新しいパートナーの元へ案内するというお堅いお偉方、早鬼籐にしょっぱなから敵意を向け、気に食わない存在と置いた。無口無駄口一切無し真面目なお偉方の上層、無感情一切の無表情大の潔癖、完全主義者、常の敬語謙譲語で恐く冷めた目元の無情な男、早鬼籐を一瞬でこいつ絶対嫌いと思った。

 紫穂を紹介され、その今まで見たことも想像出来もしなかった麗しく美しき最上の女に、一気に引き込まれた。

紫穂も共に、初めて見た人間種類だが、凄くいい男、水葵に強烈に一目惚れした。

 全てに規制を強いて来る早鬼籐に、完全自由奔放主義の水葵は事在るごとに反抗しつづけ口論が続くものの、ただ頭が働くだけのお偉方のくせに一切の隙の無いきつい冷めた目の男、鉄のような冷たさの早鬼籐には口でぴしゃりと負けてはあの糞鬼と悔しがっていた。

 水葵はお偉方だとか、きっちりした一編の隙も無いほど整った散り一つ無いスーツ人間という物が神経的に大嫌いで、その完全完璧潔癖主義者の代表格とも言うべき隅々まで均等に整った辛口完璧男、早鬼籐を最大限に毛嫌いしていた。

水葵は大切に鳥かごに入れられ、外の世界にも触れさせなかった世間知らずの美しきお嬢様、紫穂は普段の上品なエレガントさからは想像も出来ない程の鮮やかな身のこなしと腕前にも惚れ込んでいた。

 紫穂は外界から完全隔離され、月に一度だけボス、血族専用駐車場から、内側からも完全スモークの張られた豪華なリビングのようなリムジンで、地下駐車場からエレベータで海外の高級百貨店に総支配人一人のみがつき、完全貸切の中をユリアと共に、運転の早鬼籐のボディーガードの下、ショッピング、貸切個室の高級料理店かシャトーでのディナーが許されて来ていた。

豪く身なりの上品で格調高い3人の関係を総支配人側は推し量れずにいた。

 その他には組織内定期検査の時に通路を完全封鎖し、他のものは完全立ち入り厳禁体制を取った上でドクターセロウの下検査と調査を行って来たために、10歳になるまでをボス、ユリア、早鬼籐、彼の姉の狐花、総支配人以外の人間を知らなかった。

それもプロへ転身した事で組織本部中を早鬼籐の監視の下でなら行動出来るようになった。それでもよく7歳の頃から紫穂は部屋を抜け出してハンドビデオカメラを持ちながら司令塔内に出没してははしゃいで、早鬼籐に見つかると怒られても笑って笑って~!とはしゃいでいた。

10歳の頃から、同じように許されていたことは、組織内の室内プールを貸切で早鬼籐か狐花が付き添う場合により泳ぐことだった。

 だから水葵は組織内すら滅多に自由に行動出来ない、人生の9,99割を広い部屋の中でのみ生きて来た紫穂を外に出すべきだと早鬼籐に言うが、毎回無下に却下されていた。

 第一水葵が早鬼籐の最も気に食わない事は、自分が愛し合っている紫穂と、大嫌いな早鬼籐との間の深い信頼関係だ。普段一切の弱音を吐かなく絶対に泣かない女、紫穂がユリアを失った悲しみと殺しを嫌い不安そうに彼に泣きついては優しく髪を撫でられていたのを見て、嫉妬心爆発で気が立っていた。自分ではどうしても埋められない溝があるようで悔しがり早鬼籐に深い怒りを感じていた。


 水葵は15の頃から再会した片割れと共に実に幅広いネットワークを形成し趣味ビジネスを形成していた。

そこで名乗っていたのがMMという互いの頭文字をとった名称だ。

2人の信条は、最高級、最上級の本物を見合ったロイヤルハイヤー達に。だった。

 由緒在るロシア上流貴族出の片割れは上品で高級な奥深い多くの趣味を持ち、水葵は奥深い深部のアウトローな趣味を多く持っていた。世間にはMMは一人であると思わせ続けてネットワークを形成してはロイヤル趣味団体時には姿を見せない謎のビジネスマンと言われつづけては大きな成功と富を築き収め続けていた。

そして幾つもの島、城、私営ヘリポートなどを持ち始める。

同時に、ロガスター内ですら同一人物であると騙しきりつづけていたが、彼等が男女の双子であると紫穂のみが気づき、片割れを親友、水葵を恋人として接していた。

 紫穂は割合冗談をよく言うしウェット感があるし、しっかりした人間だからたびたび(というか常の)お馬鹿なナチュラル小悪魔な片割れには飽きれては、水葵の冷めているいろいろな無謀さにも、全く、と飽きれ返っていた。

片割れの方は、司令棟の心臓部CKUでも情報部でも女達から人気がある早鬼籐を割と嫌っている風も無く、いい男で格好良いわよねと紫穂と言い合っているものの、水葵を演じる身分上完璧に出さない。第一水葵は最大限に彼を毛嫌いしている。


片割れは独自の魔神を崇拝する教祖でもある。

彼女は毎日の宇宙との交信と簡易崇拝を怠る事は無く、定期的に彼女の持ち島での宮殿の中での本格崇拝も怠らなかった。一つの信条の元精神安定しているので、揺らぐことも無く身体宇宙も整っているのはそれらの賜物である。ある意味精神的には水葵よりも何千倍も強い。それは趣味団体のMMネットワーク上でもロイヤルハイヤー達にも提供されていた。

ロイヤルハイヤー達は、王族、王侯貴族、最上流貴族以外の介入は入会厳禁で許されていない。

姿を完全に見せなく、一人であり、正体不明、本名、国籍、性別も不明にしている理由は、水葵が親族の間では赤子の時に病院内で死んだ事になっているからだった。母親が双子なんか不吉だから医者に殺しておくようにと命じていた。

組織での殺しの傍ら、MMとして着実に巨万の富を築き上げてきた彼等2人は、稀に自宅である自然のままの島中に荘厳巨大な城に帰ってはゆったりと過ごしていた。


 片割れ、メサイア・ムソンの容姿は金属純プラチナのような美しい髪をいつも流れる水の様に緩くブローしている。鈍い水銀色の瞳で白目は薄くジャスパー掛かっている。大きな唇の色はローズクオーツ色だ。彼女の歯は奥に行くほど鋭い牙になっている。

水葵とは同じ顔ではあるが、極めて華のある派手顔で、凛として鋭い艶があり男顔を意識しなければ充分な色気もある。水葵ともに悪魔の様に美しい顔立ちだ。

狼のような兄に比べると、まるで立派な白馬アンダルシアンのような女だ。

 大体を彼女はプライベートでは、柔らかいスレンダーな肢体を柔らかい白で包んでいて、鎖骨肩からへそ下までをいつもゆったりと覗かせ前で併せプラチナで停めている長袖の上着を着ていて、長い首からプラチナチェーンで腹上でシンプルな青などの石がプラチナ台で揺れている白パンツスタイルで、当然スカートなどというものなど履いたことは人生で一度も無い。

 ロガスターでは、いつも吸い付くような黒の皮パン、黒や白や焦げ茶なのど同じく緩いVの併せのシルクなどのシャツを羽織、腰に重厚なアクセをまいてブーツで行動。首には重厚で大振のエメラルドやサファイアスクエアの連なるネックレスをしていて、プラチナのブレスレット、たくさんのリングを嵌めている。

冬はその上から狼や猫などの白銀や黒、動物色そのままの毛皮ショートジャケットを羽織り、紫や黒やプラチナのハーレーで行動する。


 臣倉を毎回からかいふざけて意地悪するのは彼女である。

彼女の性格は茶目ていてナチュラルでからかい好き。仲間想いで装わない性格。笑顔が爽やかで可愛い。いつも完璧主義者水葵からは抜けている所をきつく言われてはいじけている。自由奔放で適当主義の彼女はあまり完璧に頭を使いこなす事は無い。水葵ほど頭を回転させられないから、時にドジると兄貴にどうしよう、どうしよう、と言っては呆れられている。彼女は元から多少ボーイッシュな性格をしている。

大好きな色はやはり柔らかい白だった。趣味は真っ白なアンダルシアン馬で草原で乗馬して駆け回る事と多くのネットワーク上での活動。

好きな相手にはとことんなんでも与えたい性分で、何でも素敵な時間を共有したがり、モーションもかけまくる。

本当は女らしく、美しい髪を伸ばしたいと思っているのだが、水葵を装う出前、長くても緩い流れの長めのナチュラルなボブ程度だ。


 彼女の白い肌には一切墨は入っていなく、常にプラチナ製品とカザンラクの持ちダマスク薔薇栽培園の製品に包まれている。その薔薇から作った黒の高級葉巻をロイヤルローズとしてネットワーク上で購買していて、薔薇部門には全ての高級薔薇製品が連なっている。共に宮殿のような高級チョコレート(彼女の大好物)製造所などフランスに構えネットワーク上で購買している。




森長水葵~Mizuki Morinaga~

紫穂を探すために世界で情報を集めようと、謎で通すつもりでもあったが念願でもあったネットワーク拡張の為に豪華な社交に進出する事にする。

日夜、豪勢なパーティー、宴に趣味にと世界中を駆け回っている。


水天紫穂~Shiho Miama~

組織を去らざるを得なくなった紫穂の気持ちとその辺りの行動。

居候している広大な水天宮敷地内でのみ行動し、森長との再会の時を静かに待ちつづけている。


紫穂の夢 華麗にStep ! 

紫穂が組織を去った後、森長と共に過ごしている豪華なダンスの夜の夢を見ている。


紫穂の夢 華麗にDream !

組織を去った後、毎夜のように彼女は自分の森長との時間を豪勢に過ごしたいという望みが夢として現れ、組織での第一線を生き続けた仕事での事も交差しながら見つづけている。

自分が絶対に助かると信じつづけている。その後に過ごせるはずの森長とのゴージャスな夜を思い描きつづける。



 森長水葵~Mizuki Morinaga~


 彼は白パイソンのシューズに足を通す。

薔薇の黒葉巻を灰皿に置いた。

彼のペットの白ライオンは黒のビロードと金縁装飾の巨大なソファーから飛び降りて彼のところまで来た。

白のパンツの上に来た白のゆったりした併せの衣装を前で交差させた。腰にプラチナの装飾品でアクセントをつけた。

「餌を後からやる。少しは待てよ」

嫌々する様に大きな顔を振っては鬣を不満そうに揺らした。

水葵は銀の髪を後ろへ流すように緩く風のようにセットし、鋭い横顔が露になった。

首に豪華でプラチナの重厚モチーフのネックレス、両方に同じデザインを蛇の物にしたブレスレットを嵌めた。

 ライオンは餌をもらえないと分かると唸ってからそっぽを向いて歩いて行った。自分で城の外のジャングルに降りて獲物でも捕まえてくるつもりだろう。そんな気まんまんの背中だった。

2メートルの長身を振り返らせるとナイトテーブルの上の黒金属の鳳凰羽根ワッカピアスを両耳に嵌めた。

この黒の鳳凰は親父の形見だ。

彼の白い肌の背にはその黒の鳳凰の刺青が圧巻させられる繊細さで入っていた。


 父を事故で失ったのは14の誕生日だった。事故に遭った親父は手に彼へのプレゼントを握り締めていて、手術でも離さなかったと医者は駆けつけた彼に言った。

親父のバイクに細工し、事故に合わせたのはロガスターの人間だと知らされた時、怒りが爆発した。

 確かに相棒の話では、彼の本当の父親では無かったらしかったが、そんな事関係無い。

新宿でホステスバーを経営していた親父は水葵が7歳の時にようやくマイホームを構えた。その事で新宿で生まれ育ってきた水葵は2人で横須賀に移った。親父は見た目はちゃらちゃらしていたくせに心配性で、そんな親父を大切に思って来た。大好きだった。

男のくせして親父は多少頼り無い感じでもあったが、彼を男手一つで育ててくれた。

休日は毎回、キャンプ、野球観戦、海、ハーレーでツーリング、パラグライダーなんにでも連れて行ってくれた。それに、毎回息子の極真空手の大会に応援に来てくれた。


 瞳を一瞬閉じ、キャンドルの炎を吹き消した。

一瞬、揺れた炎に開かれた銀色の瞳が艶を持って強く光った。

辺りを闇が包んだ。

彼はホールから歩き、今から社交の宴だ。

MMのイニシャルで昨日社交に初進出した。

当然、何の情報も無かった。

 彼の人種はエジプト系フレンチロシア人だ。

白人であって、睫が多い事から黒い際の鋭い目元はエジプト人の魅惑な色香が強い。そして、フレンチ的な繊細な丹精さと極派手な華のある顔立ちを持ち合わせている。

色彩はまるでシベリア狼の様にアイスカラーで淡色だ。未熟児で産まれたものの、銀色の瞳と髪は本家のムソン家でも特異だった。病院で受けて来た強力な育成薬品の副作用とも言われている。

特殊な白さのある肌はやはり日焼けに随分弱い。血流が関係するわけでも無いものを、シベリアなどの極寒はいくらでも耐えられた。

だが、日焼けは大嫌いだ。彼は敏感肌だ。

だから日焼け道具がことさら多い。

 MMのトレードマークは純白とプラチナシルバーだ。そしてロイヤルローズの薫り。悪魔の様に美しい顔。それが彼だった。


 MMネットワークのイニシャルの入った白のジェットに乗り込む。星の空を駆け抜けさせた。

まるで一つ一つが黄金の珠のように星々は荘厳だ。

深みを持っていた。

紫穂……。

紫穂……。

 闇の様に艶めく。漆黒の夜空が、黄金を従えてジェットの横を流れて行った。

空虚の豪快な世界を生きる。どこまでもゴージャスになる世界。

殺し合いの時を、辛抱良く俺は待ちつづけることが出来るのか。

 だが、本当はこうしたいから、あいつとこうしたいからかもしれない。

俺は何でも考え込む性格だった。宇宙の事だとかを考え出すと全く停まらない質だ。永遠だとか、死だとか、宇宙の生命的リサイクル、感情の死の行く場所、最上の愛とはなんなのか、至上の時とはなんなのか、真の破壊神とはどういう物なのか、いろいろな事だ……。

 そんな事もう考えずに、あいつと遊びたいのかもしれない。

考えつづけてきたそんな至上最高の存在の女と共に、だからこそ何ももう考えずとも。


ただ、ただはしゃいでステップを踏み……。


 俺には想像できた。

幾らでも想像できた。

あいつがまだ行った事も無いような豪華な美しいダンスホールで、2人きり、硝子の先は夜で、踊りつづける。

あいつの笑顔の隅々まで。あいつがドレスを翻すそのこまやかさまで。漆黒の長い髪の上品な流れにいたるまで。強く輝く巨大な瞳も。

 潤う綺麗な唇。エレガンスな風雅。お前のクリスタルのような弾力ある肌。健康的な肢体。あの美しいビロードのドレスを翻し、首から下がる黒のクリアクリスタルの十字架もシャンデリアに連動し、光り輝き舞う。

ターンするお前……。

翻る艶髪……。

 俺は、全てを体現する。

誓いの時までをずっと。

そして思う事。

連れ出して、共に生き続けるという未来。そして望み。

そんな夢……。

俺たちの夢。


闇は静かに充ちている。城内の静寂は凍てつく空気を思わせる。ジェットに乗り、寂れた空を行く。



 華麗にDreame  水葵


シャンデリアの下の銀色の瞳 艶めく銀色の髪

貴方の胸に抱かれて

ブラックダイヤモンドの瞳が輝く 漆黒の髪を揺らし

笑い合っては戻り行く


華麗にparty! はしゃいでStep !

黒豹の様に貴方を見据えて 

狼の様に貴方は私をその目に捕らえて微笑する


二人で生きよう

二人で踊ろう

終わりなど考えなくていいから


空に飛ぼう

セスナに乗ろう

海にダイビングしよう


船上パーティー!

豪華な黒い銃

カジノではしゃいでシャンパン飲んで

銀色の瞳

ダイヤモンドブラック!

黄金のキャンドル グラスのワイン

闇の炎に水の囁き 


グランドピアノの旋律


銃の轟き 

華麗な爆破

打ち鳴らされるマシンガン

貴方と共に 貴方と共に 

戦場のダンス! ピンクエルボキック! フラッシュバック


鳳凰のように舞え


荒野駆け抜け ヘリからダイブ!

ホールに戻ればDance


貴方の瞳

貴方の顔に

貴方の腕に

貴方のSilver

私のBlack

艶の瞳 昇って行く


尽きない望みに

夢の中に

貴方の愛に

叫ぶ心に

探す瞳に

豪華な波に


抱かれて 貴方に抱かれて……夢の様に舞う


夢を見て 目覚めれば 貴方を想う

Black cross 輝いて

月の囁き 銀の煌き 貴方を想う


夢の中…… 夢の中……

夢の中 華麗に



水天紫穂~Shiho Miama~


 いつものシンプルでエレガンスなデザイン、クリスタルの肌のボディーラインを引き立てる漆黒のビロードドレス。

その滑らかな裾を撫でた。

胸元にブラッククロスが揺れて、私はふらつき、Bosendorferに手をかけた。

冷や汗が伝う。

ユリア……。

形見の黒クリスタルの十字架を握り締めた。

長い艶髪が、私の肩から頬にさらりと当たった。

ピアノの椅子に腰を降ろした。

もう少し……

もう少し共にいたい……。

ベーゼンに、涙が滴り落ちた。苦しい。苦しい……。

まだ彼と共にいたい。

彼といたい……。


 殺しにはとうとう力の差が出始めていた。

私は組織経営側水天家の人間としては、決断を下さなければ。

パートナーを解散してまで、森長が私と絶対に離れたがらない事は分かっていた。

互いに愛し合いすぎていて、私も離れることなどしたくは無い。

けれど、それではパートナーとしてこれ以上を切磋琢磨して行けはしない。

これも、水天の血筋の限界……。我等血族では耐え切れなかったレベルの超えにさえ、早鬼籐は難なくこなした。

 通常ならば体が耐え切れずに、短命、早老、早期体力低下などがGAの宿命だった。

それを始めて上回ったTGAが血族以外から出たとはいう事は、ロガスターの大きな飛躍でもあった。

それになるだろう事が、あいつには期待されているのだ。

気づかざるを得ない男女の力の差。

今、元GAランクだった2人、ボスも早すぎる寿命の為に死亡し、そして早期体力低下と共に原因不明の病に没したユリアを欠いた今、有力な水天の人間は、私だけ……。

GAの宿命は、私にも例外じゃ無い。

 私は今17歳で、最も早期に体力に微かな違和感を感じ始めた。

それに、妊娠をした。森長との子供だから、きっと、健康的な子に産み落とされるはずだったのに、あたしの体力は限界。

この事は、スポンサー陣に知られるわけにはいかない。

奴等はどんな物だろうが利用しようとする。体がぼろぼろになろうが、死ぬまで、死んだ後の子供さえ奪って貢献させようとする。

そんな手から水天を守らなければならない。

 早鬼籐がもしもロガスターに突如として現れてくれなかったら、水天の未来は完全に無かっただろう。彼はよく私たち血族を守り続けてくれている。

スポンサーを完全に黙らせる力も権力も手にしてくれた。

彼は、柱であるロガスターの水天一族に生かされているのだと、想っているようだけれど、私たち血族が彼の力に、存在に大きく助けられたのだ。私たちは彼に大きな感謝をしている。

でも、彼がGAとして強力に力を発揮し始めた私の今の体力にはまだ気づいていない。

組織内で口に出すわけにはいかない。どこに目があるかは分からない。

だから、組織から離れるまでは事実は彼には伝えられない。


 私は、研究所に降りるとドクターセロウ・ハンスに相談し、GBC育成所まで来るとカプセルを見回した。

「どの子がそうなの?」

ドクターは赤子の納まるカプセルを示した。

「まあ、とっても小さくて可愛らしい子ね。私にそっくりだわ。女の子?」

「いいや。男の子だよ」

森長がロガスター入りした時に採取されたDNAとGBCである私のDNAを掛け合わせカプセルで育成され続けたGBCだ。

「この子を連れに来るのは、きっと1年後になると思うの。きっと、このお腹の子は今の私では……」

「気をしっかり持つんだ。気を強く持つ事が大事なんだ」

「そうね……」

 ボスのいない今、早鬼籐は殺しの仕事も完全両立してくれているけれど、疲れを知らない彼でも負担が大きいはずだ。

私はロガスターを去らざるを得ない。

そうすれば、愛する森長はワンマンになり、何に押えられる事無くTGAへ躍進する筈。あいつには素質がある。

 最大な打撃は唯一の有力な今のところの血族である私が実際組織を去るという事。

一気にスポンサーはロガスターを乗っ取ろうとするだろう。

あたしは、歴代ボス達の受けて来た審査、ボス就任試験を早鬼籐の監督の下受けるべきだ。私がただ引退するだけでなくボスになる事で、かなり早鬼籐の仕事も軽減させてやる事が出来るだろう。

 何も、あたしがロガスターに完全に愛着が無いわけでは無い。

名残惜しさが多いに決まっている。

17年間、育ちつづけた世界だ。

でも、破滅の時までを続けるとしても、ロガスターには消えてもらう。

水天の血族と共に。

早鬼籐には、本当に申し訳ない。でも、彼の瞳の中の悲哀の彼をもう、全てを奪ったロガスターから開放してあげるべきかもしれない。

呪縛という名の存在なのよ。ロガスターは。

働きつづける者達にこそ。私たちにとって……ロガスターの存在は、悪魔だ。

産まれる我が子を守る為……

 もう殺しに泣かない。


 私は組織を去り、双子の弟が総括していて、ロガスターを経営する水天家の本家に当たる水天宮一族の屋敷に隠れ住むことになった。

ロガスターは水天宮から派生した分家の血族が明治時代に、ジル・ディルス・レガントの強力なスポンサーの元活動を開始し、基地が形成された。

その後時代と共にロガスターは力を強大なものにして行き、水天宮はロガスターの繁栄を我が権力といいように振舞った。

今の時代では、ロガスターと水天宮の深い血族関係は極上層だけだった。

「そんな信じられませんよ!社交に出ないとはどういう事ですか!」

「こんな美しいだけでどこの馬の骨とも分からないというだけでも水天宮一族の大恥物だというのに!」

 私がお世話になっている弟は、親族達に弁明をする。彼が今現在の当主だ。

「だが、シホは社交に出られる状態じゃ無いんだ」

「全く、こんな弱弱しいのを貰ってきて。後継者をどうするというの。そんな元からの病気持ちが本当に子供を産めるというの?」

社交会にあいつが進出した事を、私は屋敷で知った。

MMと名乗っていたけれどきっと……森長の事だろう。

社交……

社交………出たい!!社交!!!

ドンッ退いて!!!邪魔!!!

「シホ!!だ、大丈夫かい、ひ、酷いっ」

「うう、目が眩んで……」

「欲にでしょうがっ」

「あら。本当ね。そんなによくふらつかれたんじゃあ社交でも格好がつきませんからね」

墓穴!


「シホ。いいかい」

「ええ」

 ドアを開き、弟は私を見た。私は振り返った。

「どうかしら」

アフロ。マント。チョウチンパンツ。1954年サングラス。白タイツ。

「ネーさんっ!!!ーーなの?!」

これで私が私であると誰として気づかない。

「こちらとあちら、衣装はどちらがいいかしら」

「駄目です!そんな服……!しかも、1954年サングラスって、サングラスの役割が果たされていない……っ!せめて2000年になってからにしてくださいっ」

「やっぱり駄目なのね……」

「あ、当たり前です……。いいですか。貴女はご自分の立場を考えていただかなければ」


 分かっているわ。闇組織で生き続けては、そして今現在はボス。

社交になど表の場に出るわけにはいかない事。

彼に逢いになど……いっちゃいけないって

殺しを辞めた世界でも、それでも逢ってはいけない事……

彼は、今組織を去った私のことをどう思っているかしら。

怒っている?

探してくれている?

私を思ってくれている?

不安で仕方が無い。彼に逢いたい。

 組織の世界から任務以外でまともに出たことが無かったお嬢様な私を、彼がどこにでも連れて行ってくれた。

一番好きだったのは海へのスキューバダイビング。

一度だけ、早鬼籐の目を盗んで2人で森長の巨大なバイクで共に乗って走った事があった。

八方が真っ青な海上で泳ぎまわったり、思い切りはしゃいだりした。

 どれくらいかに一度行われる組織内で血縁と上層陣のみの美しい宴で、初めてパートナーになった事で彼も加わった。

初めて正装を着ていて、私の手を取って彼は華麗に踊った。

とても、面白かった……。

まだまだ、いろいろな世界が、あたしの知らない世界がたくさん世界にはあるんだという事をあたしにたくさん聞かせてくれた……。

 私は思いを馳せつづけた。大きく夢を抱いた。

絶対に早鬼籐はあたしに悪影響を及ぼすような外界には行かせなかった。

唯一許された事は誰も目も無い海上のスキューバダイビング。

それも、始めはなかなか許しをもらえなかった。

 森長は早鬼籐は過保護過ぎだといつも言っていた。

女だからといえ、世間を分からせなければ、ならない年齢だからと。確かに門外不出にしなければならない存在だが、余りに遊びを知らないと、本当に殺人兵器になっちまう。

そう早鬼籐にいつも言っていた。

 彼との出会いは私にはとても新鮮な物だった。

任務も毎回腕を上げて行く。豪快に。脅威を互いに見せつづけた。


 私は、唯一持ち込んだ家財道具であるベーゼンドルファーの蓋を開いた。

あいつとずっといつづける事は許されなかったのだろうか。

滑らかに深くピアノの旋律を滑らせる。静かに。静かに。深音がどこまでも銘木全体を震わせホール中に音が浸蝕する。

とても美しい音。心の奥まで、体の底まで、重厚に響く。

 もしも、殺し屋として私達が互いに出会わなかったら、全ての望みは、叶えられたのだろうか。

森長と共に。

楽しかった全て、楽しかった彼との事、全ての時間……。


 でも、病気が治ったら、ようやく私は彼の元に帰る事が出来るわ。

その時にこそ、必ず私は彼と共に素敵な世界を満喫出来るのよ。

だから、もう少しの辛抱だわ……。

もうすこしの辛抱……。

 あいつは、メサイアさんの方もよく約束を守り続けてくれた。早鬼籐の目を盗んで、あのWALSSの目ざとい目をかいくぐってだ。

 何時の間にか、5メートルの巨大なシャンデリアを買ってきてくれて、12メートルの天井上から吊るしてくれた。

早鬼籐がいない間にそれを吊るして、メサイアさんと2人で満足そうに見上げた。

私のずっと育ってきたこの部屋は、プライベートルーム以外はとてもシンプルで無機質なものだ。

そのシャンデリアだけが、とてもきらきらしてた。シャンデリアはリビングルームの白の天井を黄金で埋め尽くし、私は無機質だけだった自分の部屋にはじめて現れたそんな美しい豪華な物に、目がきらきらしていた。

 翌日、森長の方が巨大なポンプを持ち出して、私のプライベートルームに、プレイングルームのビリヤード盤やソファー、テーブル、グランドピアノを運び込んで、そのシャンデリアが頭上高く下がる高い吹き抜けのリビングルーム。

水で埋め立ててしまったのだ。そしてゴムボートを浮かべた。

私ははしゃいで初めてのスキューバダイビングを楽しんだ。その一番底の闇の方には持ち出したという巨大な濃い青のスポットライトがゆらゆらと回転して、本当に海みたいだった。

シャンデリアが触れられる程の水位になり、水面に星のようなシャンデリアが荘厳に映し出された。

お酒も駄目だったから、ジュースグラスを2人で傾けて、とても幸せだった

 それが徐々に水位が下がっていき、2人で顔を見合わせると、そこには目元を引きつらせた無表情な早鬼籐がズブ濡れで立っていた。どうやら、ドアを開けた瞬間水鉄砲に襲われたそうだった。

その事でその階の基地は司令塔を含めて突如のとんでもない水鉄砲にやられ、SHATH情報部のコンピュータがいかれて被害が膨大だった。最高幹部員達の部屋の並ぶ豪華な廊下は見られたものではなく、森長はそこで逃げ、いつもの様にメサイアさんを呼び出すと、可愛そうに彼女はたった一人雑巾一枚で基地の水浸しになった階全てを水拭きさせられ、その騒ぎにより邪魔された一つのミッションを彼一人でやらされ、その報酬を全て修理費に回されていた……。

早鬼籐はシャンデリアをすぐに取り外すように言って、私は落ち込んだ。

 そんな翌日、私を励ましてくれる為に森長は筒と癇癪玉という物を持って来てくれた。

これは豪華だからきっとお前も喜ぶぞと彼は言った。

私が森長が点火した横でわくわくして言われたとおり、天井を見上げた。

ゴオオオオ、ガンッボンッ

強烈な音と共に爆破した大きな花火が天井で打ち鳴らされたのだ。

私はバラバラに振り落ちてくるきらきらのシャンデリアの雫に、どんどん打ち鳴らされる色とりどりの花火の輝きに、熱めのいろいろな色な肌に落ちてくる火花に、舞い散るシャンデリアの黄金の破片の数々に、驚喜した。

 その午後、出張から帰って来た早鬼籐は私達の部屋の上階である医療棟の器材という器材、ベッドの上の戦闘員という戦闘員が突如襲われた地震に吹っ飛んで行き、大きな被害を受けた事を緊急報告された。森長はさっさと片付けて逃げた。

もしやと思い早鬼籐は部屋に来たが、天井の花火の焦げも既に森長が落とした後だったし、言っていたシャンデリアもしっかり『取り外されて』いたので、何度か頷き出て行った。

結局はばれる事無く、今回は早鬼籐はロガスターの災害保険を使っていた。

そして森長は去っていった早鬼籐の背を見ながら私の肩を持ち言った。

「いいか紫穂。これが吹き抜け天井の正しい使用法だ」(メサイア)


 彼とまた再会する時が待ち遠しい。

あいつは私が立てた誓いでどうにか開放したけれど、きっと納得してはいないだろう。

でも、今彼に知られるわけにはいかないのだ。組織が消えるまではスポンサーの目がある。全く安心出来ない。この今隠れる場所も絶対に知られるわけには行かない。

社交には出られない……。

 あたしは漆黒の猫の毛皮の仮面を目元からはずし、重厚な円卓に置いた。腰掛ける椅子のビロードの膝元の上の白い手腕を、テーブル上のランプシェードがマスクを通って照らした。

涙が暖色に煌き手に落ちた。

裾から覗く足首の先の黒のハイヒールが、絨毯に足を揃えさせた。

 ロガスターが消えるまで、待つのよ。

子供をどうにか健康に産んで、あのカプセルの子も引き取って、そしてどうにか私への愛情への継続を誓いでいつかせた森長を、迎えに行く……。


 敷地内の屋敷で、今まで動きつづけて来た事への今現在の暇をもてあます為に様々な趣味と習い事を始める。

今までは毎日の厳しい訓練、激しい任務、森長との時間、一人の時間に明け暮れてはピアノを弾いていたけれど、やはり任務と訓練の抜けは暇を持て余した。

 お琴、茶道、着付け、日本舞踊、華道、お聴香、京料理、三味線、お唄、紅茶、乗馬……

優雅に舞う。美しく舞う。雅に、私は舞う……

着物の袂を持ち、扇子を翻し、首を傾げ、足袋を返す。回り、膝を折る。凛とする。

 あいつを思わない日は無い。でも、想っているばかりでは涙が絶えない。

私は趣味に没頭する。

茶道で心を清めて、着流しの羽織の裾を押え、顔を向ける。

小さな入り口から覗く美しい庭園をふと、見つめる。

煌く水の流れ、光を受ける緑の葉。

わび寂びの世界を堪能する。

 敷地内で焚き能を見て、流鏑馬を私もやりたいとそそられ、プライベートジェットで弟と共にプラハへ向い、オペラ座でオペラやクラシックバレエを観て、ウィーンでオーケストラを聴いて、美術館や芸術品を見て、それら全ての美しさに感銘を覚える。人の織り成す時間の美しさ、生物のとこしえからの悠久の調度品、一身に込められた絵画。

美しいいつでも豪華な会場の客席は弟と私だけ。エスコートの弟と共に外側からだけのスモークの張られたリムジンで会場を後にする。

 水天宮財閥で貸しきった高級百貨店でお買い物。誰もいないデパート内。一人だけ総支配人が案内する。

リムジンに乗り、また誰も街にはいない闇に落ちた中を進んで行く。建物の荘厳な影は無気味に思えて、不動に佇んでいる。

許されない自由な行動。華美な世界を満喫したいのに。でも、弟はよく私が暇をしないために心配りをし続けてくれている。

 度々敷地内の迎賓館や本館で行われる親族を集めた宴で私は舞を見せる。唄う。お琴を弾く。魅せる。極美の賞賛を受ける。

親族の女達が華麗なる社交界の華、貴公子MMの名を、度々出す。

彼は美しき豪華な世界を生きているのだと。悪魔的に全てを魅了するのだと。

彼女達は話し合う。私相手に皮肉を言う。

「どうせ、アノ奥方には社交はお体がお悪くて出られないんだから、憐れなものよねえ。あの美しい彼を拝見する事すら出来ないんだから」

ひねり潰したくなる………。


 私は敷地内の多くの立ち並ぶ優雅な屋敷に囲まれた広大な広場の中、馬車を走らせてもらい、感謝をすると降り立ちその広場にあるベーゼンドルファーの置かれたガラス張りと白漆喰の円形ドームホールへヒールを踏み入れた。

黒皮の重厚なスツールに腰を下ろし、手を掛ける。

共に生きて来たグランドピアノ。

 白い透明な陽を受けて、夕方には幽玄な風を確固とした物にした。蓋を開いて、指を滑らせる。瞳を閉じて、奏でる。

私の一番愛するクラシック、ドビュッシーの幻想曲『夢』を奏でる……。そして唄う。


 煌く彼方の光が

 見詰め合う二人に射せば

 この青も充ちるわ

 夢 その光りから溢れ出す輝きは心

 時も充ちるわ



 着流しという物は便利なもので、腹部を上手に羽織で隠してくれる。

私は粋な女性物の着流しで過ごすようになる。

柄選びというものは楽しい一時という物で、多くの染め上げられた柄物の数々から選んで行く。

きっと、おなかの子に透視の能力があるなら、柄物の数々を見れているだろうか。華麗な牡丹や、橙と黒の縞、綺麗で可愛らしい毬、金色の鳳凰の丸、深い緑の龍の丸、薔薇もある。力強さが全ての柄にはある。鮮やかな紫の美しい色や、紅、様々だ……。

自然に微笑みになる。今日はどの柄を着よう。それを着てこの子をしっかり包んであげよう。


 出産を控え、敷地内の端にあり水天宮が院長を務める大病院へ移る。……赤子は、死産だった……

私は、何も考えることが出来なくなっていた。


 それでも、考えなければならなかった。多くのことを、しっかりと……。

早鬼籐を病室に呼び、様々な決定事項を話さなければならない。彼には絶対に死産は悟られてはいけない。ドクターとの極秘事項。


 退院後、本館の自室へ戻ると私はドクター・セロウと連絡を取る。あのカプセルの子を連れてこなければならない。それと共に、私は親族達から怪しまれないように2年間を本館から出ないように過ごさなければならない。当然、宴やパーティーの催されるパーティーホールへも行くことは出来ない。

 私はカプセルの中から連れてこられた子供に『亜紀羅』と名づけた。

彼は今3歳で、それでもとても体が小さく1歳児に見える。

GBCとして産まれた子には大きく成長過程に違いがあった。カプセルで育つ子は、とても成長が緩やか。母体ではぐくまれる子はとても健康的であり成長も早く、生後半年で英才教育を受けられては1歳児では既に様々な学びを受けられる頭脳があり、そして、3歳児では博士号を取得するほどだ。

 カプセルで育てられた亜紀羅の成長が、4歳児まで緩やかである事は逆に親族への不信感も煽られない事だった。6歳児になれば高い頭脳を持ち始める。そして、母体から産まれたGBC同様に強靭な戦闘能力を生み出して行く。

でもそれはあくまであの血の滲む鍛錬あってこその物。この子は絶対に普通に育てつづける。組織になど、絶対に奪わせない。私は彼を護りつづける。

 流石に親族達は、彼等の前にすら姿を見せなくなった私に不満を言いつづける。しかも、産まれた子供さえ見せないとくれば、もしかして死産したのではないか、それを騙しつづけて行く為に姿を見せないのでは無いかと噂しつづける。

 幾らでも言い続けさせておく。


 彼が親族達の前にも見せられる程になると、私はよく亜紀羅を連れて敷地内を出歩くようになった。体力の無さで、もう趣味はできない。

こんな辛さをユリアもずっと持ちつづけていたのだ……。

それでも、小さな亜紀羅はい続けてくれる。それに、彼に会いに行く望みも。

 愛らしい私の子。この体から生み出されたわけじゃなくても、あいつと私の子。大切な亜紀羅。私の愛する大切な子、亜紀羅。

彼は無垢で、とても良い子だった。多少甘えん坊で、それでも屈託無い笑顔の瞳は強い輝きを受けている。どういう子に成功して行くのだろう。とても利口そうな顔をしている。

私の幼い頃とそっくり。

よく思う。もしも、しっかりと私の子供がこの子の妹か弟として生まれていたらなら、そう思う……。

失ってしまった産まれることの出来なかった赤子。可愛そうな子……。どんな子に育っていただろう。もしも、生をこの世に継続出来ていたのなら。

私のおなかの中から、この世界へ。この世界は様々なもので溢れている。輝いている。まだ、私自身も羨望しつづけている世界が、煌びやかな物として。

共に、私達3人と共に、その子も世界を満喫出来る筈だった。

そうだったのに……。

森長に、その子に会わせたかった。抱き上げてもらいたかった。成長したその子をしっかりと、あの手で。

認識させてあげたかった。しっかりと、消されてしまった存在でなく、一度だけでも良い……私のおなかの中で、その子は確実に存在しつづけていたのだという事。たまに元気良く蹴ってきて、そして、動いていた。

継続させてあげられなくて、私は……。

その子を、輝きや、生命の煌きとして、変えてあげる事しか出来ない。

 私は常に亜紀羅と遊びつづけてあげる。彼とい続けてあげる。彼にピアノを弾いてあげる。お勉強なんて、やらなくていいのよ。普通の教育課程から学べば良い。

今はとにかく大切な時間を共に過ごしてあげる。この子も、まだ外には出られないから。

森長や組織には絶対に悟られてはいけないから。

再会するまでは待ちつづけなければ……。

 そして、3人で暮らす……。


 華麗にStep !  紫穂


風に騒ぐその声は貴方と共に私はいるから

守って来た心の風上に 偉大な海の様に感じるから


その手を取って その足を共にアゲハ蝶の様に舞う

ホールでダンスを踊ってみれば抱きあう

銀の星のように抱き合って


守られる心の強さに


見詰め合う梟のように 夜をゆく

貴方の目が輝きつづけて


Step Dance !

Step Melody

ターンして 受け止めて この身を捧げるから


ヒールを踏み均し スカートの裾を翻し

ワイン色の恋に身を抱き 

シャンデリアの様に輝き続ける


飛び出そう2人で 何処までも 輝く世界が待っているから


ゴージャスに生きれば何もかも忘れられるわ 貴方と共に 

まだ まだ 夜の囁きに抱かれて

華麗にStep Dance ! 華麗にMusic ! 華麗に舞う


2人で石畳をけっては踊ろうよ

街並みは輝きと共に賑わっては 私は踊る

ピエロのDance 道化師のMask

炎のようにStep


貴方に抱き寄せられて

貴方を見上げて

私は見つめられて

頭上の月を共に見上げてる






The another story


もしも水葵と紫穂が通常の夫婦になり、普通に亜紀羅が生まれていたなら


紫穂 女性

水葵 男性

亜紀羅 少年

メサイア 女性

ゼファー 男性

カーベル 少女


 亜紀羅


 亜紀羅は両手を上げて背の高い父親に思い切り反発した。

また6歳の息子は実に強気だった。愛らしく光り輝いていた。

「んな事を言ってるとシャンデリアに逆さに吊るすぞ」

「ママ~!!」

亜紀羅は狼みたいに怖い顔をした父親から走って行き、カウチに横たわる母親の肩を揺らした。

「ママ助けて。パパがボクの言う事聞いてくれない!」

 今日はパーティーだった。

父親に着いて行く為に、息子は一人でせっせと身支度を終えた後だったからだ。

母親はゆっくりと起き上がると、艶髪を片方に流してくすりと微笑んだ。

息子の髪を撫でて夫の背を見上げる。

「ねえ。この子もそう言っているのだから、連れて行ってあげて。」

彼はくるんと振り返り、細めた目で溜息をついた。

「駄目だ。まだ早い。」

「もう6歳だもの。ボクだって、たくさん綺麗な子達と喋りたい。」

「充分喋ってる。諦めるんだな。」

そう言うと、どんどん歩いて行ってしまった。亜紀羅は母親そっくりの顔で、父親の様に目を細めて憮然とした。

 母親はまたゆっくりと体勢を変え、せもたれに寄りかかった。

亜紀羅は大きな開口部から外を眺め、ジェットが飛んでいったのを空を睨んで憤然と向き直った。

「ママ!」

彼は急いで走り戻って来た。

「横になっていて。ボク、ハニーレモン温めて来るから。」

「火傷したら大変だわ。ありがとう亜紀羅。さあ、ママの横に座って。」

「はい。」

亜紀羅はソファーに座り、目の前のテーブルを見下ろした。

「ママは、どうなっちゃうの?」

 病は一時回復を見せ始めたきっかけは、組織ロガスター医療部が、初めてMM医療機と共同開発を進めた事からだった。

ロガスター内にMMの調査団が入り、放射線物質検知機導入で基地内全ての悪害を検査していた時に、偶然に見つかった物だったのだ。

本部外厳重廃棄物倉庫から強烈な放射線が検出され、そして、あろう事か本部内の紫穂の部屋からも微かに。

彼女の胸元には既に、ユリアから貰った黒のクロスクリスタルは無かった。死の原因だったそれが徹底的に初めて解明され、医療のスポットライトが当てられた。その独自の放射能に反発させるべく独自の物質放射線を開発していた。

 解決の糸口はある。彼女の病は癒され始めていた。

「大丈夫。信じることが何よりも大切なのよ。信じることから始めなければ、力は生まれないから。」

息子はこくりと頷き、次にはしっかりと微笑みママを見上げた。

「ボク、16歳の社交デビューまでにはママを持ち上げられるように鍛えておくよ!それで、大きな階段から現れるんだ。ママをお姫様だっこして……。」

母親は彼の髪を撫でて頷いた。

「待っているわね。その時には私も軽く持ち上げられるようにポーズを練習しておくから。」


メサイア=ムソン


 ムソン家の実家。シベリアの空は凍てついていた。

 メサイアは美しい銀の長い髪を翻すとふわっと薔薇が香った。

「ハアイ兄貴」

そういった口調には、ムソン家の伯母は苦い顔をした。メサイアは水葵と共に全く同じ顔をして伯母に肩をすくめさせた。

「今日は亜紀羅を本家に預けないのね。」

背の高い2人の背後に続かない坊やを確認し、流し目で水葵を見た。

 彼が生かされていたという事実は3年前にメサイアから知らされた事だった。驚愕の事実だった。妹の産んだ双子は、片方が日本で殺されていた筈だったのだから。

「あいつは今回ばかりは、ここに連れてきた瞬間パーティーにも即刻流れ込んで来ただろうからな。そういう勢いが感じられただけだ。」

「パパらしく無いったら無いわね。」

メサイアは苦笑してやれやれ首を振り、水葵の肩から肘を外した。

「紫穂はどう?体調は良くなってきているんでしょう?」

「ああ。確実に。」

そう口端を強く上げ微笑んだ。

 今回のパーティーで息子に着いてくるべきで無い理由はあった。

組織メンバー上層が出揃う医学会だからだ。紫穂の病気についての定例会だった。

今や組織は紫穂の命令により、早鬼藤が医療開発系統の運営のみに幅を凝縮させた。

その医学会の後のパーティーにメサイアは出席するつもりでムソンの実家に帰って来ていた。

 元組織要人達の集まる会の中、新しく紹介するべく人物がいる事を聞いていた。

それが元組織運営上に関わる者なのか、それとも医療関係での紹介なのかは不明だった。

紹介される人物が男である事。それを早鬼藤から聞いてメサイアは大喜びで支度をはじめていたわけだ。

 兄の存在を知らせた事でMMの名は水葵のものだけになり、メサイアは趣味団体を続行し、そして一番嬉しい事には、女らしく自慢の髪をロングに出来る事。そして、ドレスを美しく着る事が出来る事、スレンダーな肉体をキープせずに済む事だった。

どんな男なのよと聞いた所、「あなたのおっしゃられる様な「いい男の部類」に入られるのでは」という事で、大いにドレスアップに力が入っている。

 そんな妹に、水葵はあきれ返って何も言わなかった。


ゼファー=ガルレ=ソワイ


 男ゼファーは黒の正装に黒スカーフを巻くと黒石で留めた。

黒髪のセットを流すようにすると顎の整った髭をそのままに、鋭い目の中の深青の瞳で、鏡の中に映る背後の空間をちらりと見た。

大いにふくれている4才の少女が一人いた。

「カーベルだってパーティーに行きたかったのに」

常に綺麗に着飾っているカーベルは身支度にと、黒薔薇の香水をエレガンスに噴き掛けては、小さな指に嵌る黒石のリングを煌かせて完璧だった。

小さな4才の足にハイヒールを常にはめ込んでいるのだから、いつも黒カラスの扇子で風を送りふわふわの黒髪をふわつかせている。

これは将来が思いやられるなと思ったものだ。

 彼はカーベルを大人しくさせて置き、彼女を黒猫に預けて部屋を出た。

黒猫はまるで「いいから大人しくしていろ」とでも言うかの様に、「ニャア」と鳴いた。

カーベルは憤慨してキャーキャーと騒いだ。

 W・T・ワールド・トップ・ダークネスという団体を立ち上げるリーダーである彼は、マーティーという仮名で団体経営をしている。いわゆる、暗殺請負団体だが、ロガスターの早鬼藤とも繋がっていた。

今回のパーティーはその身分で向かう。

 ロガスターは殺しはやらなくなった。その分、不都合も当然出てくる。その殺しの分野を新しく担う事になったのが、W・T・Dだった。今までW・T・Dの依頼人はロガスターの姉妹組織、情報組織ガジェスのみだったのだが、ガジェスがロガスターに1年前より協定を結び情報部が大きく躍進した。

ガジェスのボスの妻、早鬼藤の母親の計らいで、W・T・Dも専属契約させればいいという話が出た。

闇の中でのみ動いて来たW・T・Dはそれを断っていたのだが、上層の前でだけならと出番を請け負ったのだった。

 カーベルは黒猫相手に怒っていた。

「カーベルだって、新しい彼見つけたいのよ?!分かって無いんだから!」

黒猫は呆れて三角の聞く耳も向けずに、ちょこちょこと歩いて行ってしまった。

 ゼファーはそこで運命的な出会いをする事をまだ知らなかった。


紫穂と水葵の愛。そしてメサイアとゼファー。運命に操られては深く愛し合う。

互いを見詰め合っては、待ち焦がれた時間を超えた、そして次元を超えた再会の時には、涙を互いに流すというものだ。

 かつては、絶望と破滅を望んだ水葵と紫穂が、再び出会い愛し合う時を重ねる時間を、共有できる悦びを実感出来ると分かった瞬間に流した涙の様に。


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