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Phantom Song  作者: 聖 聖冬
8/17

あなたは誰

頭だけ柔らかい物の上で目が覚めると、壁に背を付いて寝ている、全く知らない白髪の人が座っていた。


静かに一定の寝息を立てて、天使の様な寝顔を見知らぬ私に晒している。


小さな口が口角を上げて笑い、幸せそうに顔を緩ませる。


落ち着いて立ち上がって、ダンボールの中から紐を探す。


「んー、紐なんてそもそもあったかな……お、ラップで良いか」


後ろで組ませた腕をラップで拘束し、警察を呼んで鈴鹿にも電話をしておく。


幸い天音はまだ起きていない為、白髪の不審者をトイレまで運ぶ。


運動なんてしていなかった体は悲鳴を上げて、腰の痛みと共に襲来した息切れが治るのを待つ。


リビングに転がっている見覚えの無いバッグを漁って、身元が分かるものを探す。


中から出て来たのはハンカチ、絆創膏、ポケットティッシュ、ウエットティッシュ、小さな鏡、日焼け止め、汗拭きシート、頭痛薬、ヘアゴム、折りたたみ傘、ハンドクリーム、チョコなどのお菓子、ソーイングセット、財布、スマホ。


圧倒的な女子力の高さに目が死ぬ。


女子力だけでも五十一万はある。


ふっ、雑魚かなんて言っていた人も、腰を抜かして逃げ出すに違いない。


次に玄関へ靴を確認しに行こうとすると、トイレのドアを開けて固まる天音の姿が見えた。


「みーちゃんってさ、これで何人目やったの。もしかして次は私?」


「常習犯みたいに言わないで。因みに今回が初犯ってのも可笑しいけど、初犯になるのかな」


「ふーん、やっぱり次は私かー」


「やらないって、すぐ警察来るから部屋に居て」


「でもトイレー」


「分かったから、今出すから待ってて」


トイレの扉をもう一度開けると、拘束した筈の不審者が立っていた。


手に持っていたピンで髪を止め直して、目が合うと「どうも」と挨拶をしてくる。


「остановить」


咄嗟に出たロシア語を聞いて、体をビクッと揺らして止まる。


「доброе утро」


笑顔でおはようと挨拶をしてきた不審者は、丸めたラップを私に手渡す。


インターホンが鳴ると、ノックと共に所在確認の声が飛んでくる。


鍵を開けた天音が警察官を連れて来て、私と不審者の間に立つ。


「警察官か、何の用ですか」


「不審者の通報が来た。特徴も一致している、お前で間違え無いな」


「失礼な、私のどこが不審者に見えますか」


「何だその白い髪は、どう見ても不審者だろ」


「酷いですね、白髪差別ですよそれ。私はアルビノなんですから、先天性のものです。人権侵害」


「良いから来い」


警察官に引っ張られた不審者は、引き摺られ気味に付いて行った。


「ここの住民の知り合いです。天月鈴鹿と言います。はい、有難う御座います」


警察官と会話をして部屋に入って来た鈴鹿は、涙目になりながら飛び付いて来る。


それを華麗に受け流してソファーに着地させて、うつ伏せになった鈴鹿の上に飛び込む。


「心配したんだぞ。突然電話が来て頭痛薬買って来てって言うから、風邪で死んじまうのかと思ったんだぞ。そしたら警察官がいっぱい居て、あぁ、手遅れだったんだって……」


「分かったから落ち着いて。不審者って言ったら何するか分からないでしょ」


「そんなの分かりきってるだろ、ぶっ殺がして川にポイだ」


「はいはいout。本当にやりそうで怖い」


鈴鹿が持っていた袋を机に置いて宥めようとすると、警察官に呼ばれる。


「私も同行する」


「天音をお願い、その為に呼んだんだから。じゃあ行って来る」


聴取の為にパトカーの中に乗り込み、あったことを全て話すと、あっさり解放された。

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