Imperfect Day
閉じている瞼を通り抜けて目に届く光が鬱陶しくて、堪らずに目を開けると、いつの間にか朝になっていた。
目の中に入って来た鬱陶しい光が、まるであの少女と同じように私を邪魔していると言う偏見が生まれ、余計に腹立たしくなってくる。
自分の胸の上に少し透けている腕が回されているのを見て、慌てて上体を起こす。
少女の体勢を見ると、私を抱き締めていたように見える。
朝から気味悪さでいっぱいで、すこぶる寝起きの悪い日になった。
テレビを点けてチャンネルを変えて行くと、私の隣に座った幽霊が、猫特集のニュースに反応した為、チャンネルをそこで止める。
時々立ち上がったり前のめりになったり、この少女は私よりも人間らしいのかもしれない。
元は人間だから当然か、と勝手にひとりで嫌な気分になる。
時計を見るといつの間にか七時を過ぎていて、このままのんびりしていると遅刻確定だった。
段ボールからバスタオルを引っ張り出して、ワイシャツとジーンズを乱雑に置いて、素早く服を脱いで浴室に入る。
シャワーを浴びて一通り全て洗って出ると、洗面所に少女が立っていて、私の体を見て両手で目を覆う。
何で同性なのに恥ずかしがるのか分からないが、見えないフリを続ける。
狭い空間で少しでも一緒に居たくない為、少し濡れたままでワイシャツを着る。
全て着終えて荷物を取りに行こうと廊下を歩くと、体を通過した少女が、私の前に飛び出る。
「わぁっ!……またやっちゃった」
突然の不意討ちに思わず声が出てしまい、その声を聞いた少女はこちらに振り返る。
「やっぱり見えてたんだ! お姉さん少しお話し……」
「もうこんな時間、急がないと」
精一杯の誤魔化しをして廊下を抜け、リビングの鞄を掴んで少女を通過して一気に玄関まで走る。
電子ロックの鍵を解除して、タイミング良く通り掛かったタクシーを拾う。
「研究所までお願いします」
家の窓に視線をやると、少女が私に向かって笑顔で手を振っていた。
背筋が凍りつくような感覚が走り、震える手で携帯を取り出す。