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Phantom Song  作者: 聖 聖冬
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獣人化

時計を確認してそろそろ友希が来る頃だと思っていると、珈琲が入ったカップが机に置かれる。


いつもみたいに響夜かと振り返ると、割烹着姿の友希がお盆を胸に抱えて立っていた。


いつもどこから入って来るのか気になるが、それよりも珈琲の中に何が入っているのか気になる。


「毒味」


置かれたカップを友希に差し出すと、「えっ」と言いながら受け取る。


息を吹きかけて口を付けるが、なかなか飲もうとしない。


「まだ?」


「熱いのは苦手なんです」


「さーん、にーい……」


「あつー!」


カウントダウンに焦って珈琲を飲んだ友希は、机にカップを置いて水道で下を冷やす。


毒味の済んだカップを持って珈琲を口に含むと、無糖の苦味が口全体に広がる。


「苦いし」


机に置いてあったチョコを口の中に入れて、砂糖を大量に入れる。


なかなか帰ってこない友希が流石に心配になって見てみると、ズボンの後ろが膨らんでいる。


見て見ぬ振りをしようと決めてデスクに向き直り、人工知能の課題を見直す。


「酷い目に合いました、うっ……やらかした」


「どうしたの、主にズボンの中?」


「それもありますが、なんか嫌な言い方ですね。頭の上もですよ」


「ふーん」


少し意味が分からなかった為、友希の頭の上を見てみると、何故かリアルな猫耳が付いている。


試しに遠くにペンを投げてみると、耳がペンが地面に落ちた音の鳴った方に向く。


「えー」


「ん?」


私の声に反応した友希は、鏡から視線を私の方に向ける。


「それ本物?」


「はい、病気ですよこれも。まだ多く見られてないので呼称は決められていませんが、獣人化って私は呼んでます」


「特異体質過ぎるでしょ、アルビノと獣人化と見た目マジ女って、一部の人からしたら好物では?」


「やめて下さい、見世物じゃないんですから。困るんですよ結構、例えばその白衣の裾とか」


ひらひらと白衣の裾を揺らすと、顔はそっぽに向けているが、目で確実に追っている。


暫く続けているが、なかなか飛びついてこない。


ここまで来たら意地のぶつかり合い、響夜の机の中にストックしてあるマタタビを拝借して、ポケットに居れて椅子に座る。


「白衣借ります、尻尾が窮屈です」


ズボンを脱ぎ出した友希を見ていると、居心地が悪そうにズボンを下げるのを止める。


「どうしたの? 尻尾が気になるから続けて」


「いや、恥ずかしいですから見ないで」


「分かってるって、冗談よ」


友希に背を向けてポケットに入れていたマタタビを開けると、背後から腕を回されて手に持っていたマタタビの袋を取られる。


引っ込もうとする腕を咄嗟に掴み、友希の手からマタタビの袋を取り上げる。


友希の方を向くと、何とか自分を抑えて座っているが、私の手にあるマタタビしか見ていない。


「不意打ちは駄目だ思うなー」


「マタタビ……とは卑怯、ですね。白衣も何かスースーしますし」


「それは穿いてないからでしょ」


「なら尻尾が大丈夫な服を下さい」


白衣の下でもぞもぞと動く尻尾が、たしたしと床を叩く。


手にマタタビを出して顔の前に差し出すと、手も使わずに直接口で食べる。


無くなったにも関わらず手を舐める友希を見ていると、本当に猫なんだと実感する。


「まぁ、取り敢えず帰るか」


「聖冬さんの家に?」


「それぞれ自分の家に」


「えー」


「えー」


パソコンをシャットアウトさせてマタタビを机に置くと、友希が飛び付いて口の中に流し込む。


満足そうな顔をして咀嚼して、口をもぐもぐさせながら付いてくる。


研究所を出て友希の方を向くと、首を傾げて微笑む。


「隠さなくて良いの? あと下履いて」


「良いですよ白衣で隠れてますし、耳はぺたこーんって出来ますし。バレないバレない」


「なら気を付けて帰ってね」


「そうですね、行きましょう聖冬さんの家に」


言ってもどうせ無駄なので、猫のように気ままにさせた方が早く帰ってくれると判断する。

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