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Phantom Song  作者: 聖 聖冬
13/17

忘れてしまうんだね

友希を研究所の外に連れ出して、デバイスを返す。


デバイスを受け取った友希は、頭を下げてポケットに入れる。


「そう言えば聖冬さん。お昼ご飯まだでした?」


「まだだけど。学校に戻らないの?」


「良いです、早退届出して来てないので」


「帰りなさい」


「今日はサボる気分なんです。そうだ、お昼まだなら聖冬さんの家まで作りに行きますよ。料理は得意ですから」


「勝手に決めるのは無し」


友希に引かれた手を振り解く。


「なら聖冬さんの家に作りに行って良いですか?」


「だから帰りなさい」


「学校に戻る気はありません。もう行き先は決めましたから」


「呆れたわ本当。研究所からあまり離れられないんだけど、三十分も掛かるから家に着いたら作るどころかすぐとんぼ返りだけど」


「なら学校には行きます、晩御飯作って待ってますから。帰りは何時くらい……」


「何で来る前提」


質問の意味が分かっていないのか、瞼をを何度も瞬かせる。


こいつ聞く耳持ってねえと判断して、仕方無く了承しようと思ったが、天音が何て言うか分からない。


スマホを取り出して天音に電話を掛けると、案外早く出てくれた。


「もしもーし。貴女の天音ですけど、そんな事より愛宕って人が来たけど。今上がってもらってるよ」


「愛宕さんが? 今日は早く帰るからそのまま居てもらって」


「分かった。天月さんが買ってきてくれた埋れ木出しとくよ」


「丁重にもてなしてあげて、多分喜ぶから」


「何かめちゃくちゃにこにこしてこっち見てる、出来るだけ早く帰って来てね。身の危険を感じる、同性に感じたのは初めてだから早くね」


電話を切って友希を探すが、いつも通りいつの間にか居なくなっていた。


ふらっと来てふらっと居なくなる猫の様な友希を、今度から目を離さないと決める。


「午後も頑張るか……怠いけど」


頭痛のする頭を押さえて研究所に戻ると、いつの間にか昼の休憩が終わっていた。


不味いと思って急いで一歩を出すと、意識が朦朧として地面が近付く。


衝撃がトドメとなって意識が飛んで、何も感じなくなった。


自分はいつの間にかバスに乗っていて、窓側に心桜、通路に鈴鹿、真ん中に私という配置で座っていた。


幽霊が隣に座ってるなんて面白い夢だと、もう少しだけ見てみることにする。


これから何処に向かうのか楽しみ半分、山道を走っている不安半分、非常にバランスの良い心境をしている。


バスガイドがお疲れ様でしたとマイクを使って喋り、最後にまたお待ちしておりますと言うマニュアル通りの挨拶を終える。


「あれ、終わりなの鈴鹿」


「あぁ、まだ足りないのか? イタリアとフランスの帰りだぞ、やっと家に着くじゃないか。私はもうくたくただ」


夢でも良いからイタリアとフランスに行ってみたかったと肩を落として、鈴鹿の肩に頭を置いて瞼を瞑る。


突然大きく揺れたバスの衝撃に堪らず目を開くと、崖の下に真っ逆さまになって落ちていた。


「やっぱり、貴女も忘れてしまうのですね」


心桜が発したその言葉が何故か背筋を凍り付かせ、夢から引き摺り出される。

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