放課後時間
分かっていた。
所詮は幼馴染であり、それ以上でもそれ以下でもないことを。
俺、中川 翔と道瀬 麗心は家が隣同士の幼馴染。
小さい頃までは二人仲良くしていた。
だけど、学年が上がっていくにつれて、麗心は俺から次第に距離を置くようになってきた。
そんな事が起こってからだろうか。
俺は麗心と一緒にいたいと思う。
けれどそう思えば思うほど、麗心は俺から離れていく。
いつものことだった。
明日までに出された課題を家でやるのは億劫だから学校でやっていこうと思って
一人で課題を解いていた。
ガラッ
という扉が開く音とともに、麗心が入ってくる。
教室に俺しかいないことが分かると入ってきたのにまた出て行こうとする。
「ちょ、待てよ!」
そういうと、片足が既に教室外に出た麗心は足を止める。
こっちを見ないけれど。
「な、何か用?」
「何で…―――――――――俺のことを避けるんだよ」
勇気を出した。
理由が知りたかった。
きっとそれは、“幼馴染”だからだけじゃないと思うような気がする。
何が気に入らないのかを聞いて、変わりたい。
「そんなの、中川君の被害妄想じゃない?」
それだけ言って、また出て行こうとする。
だから思わず手首を掴む。
一瞬肩がビクッと動く。
「やめてよ!離してよ!先生呼ぶよ!?」
「言えよ…理由」
力を入れないように注意を払いながら、そっと言う。
さっきまで暴れていた麗心も落ち着く。
「私なんかに構わないでよ」
「はッ!?何言ってんだよ!幼馴染だろ」
「だからッ……―――――――――幼馴染だから…」
わけが…分からない。
何で幼馴染だから避けるんだよ。
「幼馴染だから…何だよ…」
「中川君は…だって…」
昔は…
翔って呼んでいたのに、ランクが下がるような気がする。
遠い存在みたいに。
「中川君の隣にいるの…辛い…」
その言葉に掴んでいた手が離れる。
辛い、俺といるのが辛い。
「そっか。じゃあ、ごめんな。引き止めて」
俺自身振り返り、かばんを取って早く帰りたかった。
最悪だった。
「ま、待って!違う…っ!誤解しないで!」
いきなり後ろに、麗心がくっつく。というか、抱きしめられる。
「ちょ、お前何やってんだよ」
「ゴメン…違う…。だって、幼馴染って…意識しちゃって…。お願い離れていかないで…」
い…しき?
こいつが俺を?
「そっか。サンキュ。じゃ、送ってくよ」
「へ、返事は…っ?」
こういうときに限ってキザってやつになるのかもしれない。
後ろの密着度がどんどん減り、離された時、手を差し伸べる。
俯いていた麗心が顔をパッと向けて笑顔で手を握り返す。
「ありがと、翔っ」