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「もう、ダメ…」


あれから何一つ手がかりになるようなものは見つからず、サラは本棚に背を預けしゃがみ込んでしまった。


この部屋にある本は、一冊一冊が丁寧な作りであるがゆえに、地味に重い。

ここが何のための部屋なのかはわからないが、丁寧にしまわれている本の様子から、少なくともこの部屋の主人が大切に扱っていることが伺えた。


そう思えばサラがここの本を雑に扱うなどできるはずもなく、丁寧に本棚にから出し入れを繰り返していた。

その結果、サラの腕がプルプルと震え悲鳴を上げたのだ。


それだけかなりの数の本を手にとったはずなのに、終わりがまったく見えてこない。


のろのろと見上げた本棚は、まるで無限に続いているような気さえしてきてしまい、空恐ろしくなってくる。


そして壁一面の本の他に見えるのは、部屋を明るく照らす玉のような柔らかな明かりが、いくつか浮かんでいる。


ー『浮かんで』いる?


先程まで意識していなかったため、気がつかなかったが、通常明かりはどこかに固定されているものがほとんどだ。


このように中空に浮かべて使用するには通常の魔術式の他に、常に浮遊しているように関する術式も入れ込むことになるので、作る手間と維持する魔力がかかるものなのだ。


派手好きで財力に余裕がある貴族や魔力過多の魔術師には需要があったりもするだろうが、こんな只の資料室などに使用することなど、まずない。


そしてここの部屋が明るくなったとき、魔術が発動した気配もなく、サラ自身が何かをしたわけでもない。ただ、明かりがあればと思っただけだ。


サラは確かめるように本棚をもう一度目を凝らして見上げれば、先程と同じように天井が見えないほど本棚が続いていた。

正確に言うならば今回は比喩ではなく、本当に天井が見えず本棚も無限に続いていた。


ドクドクと自身の脈動が聞こえてきそうなほど、胸が早鐘を打っているのに、手足は血の気が引いたように冷たくなっている。

座り込んでいなければ、腰を抜かしていたかも知れない。


いくら探しても見つからない魔術式と媒介。

魔力を使わずとも光る明かり。

そして無限に続く本棚。


それらが示すのは、ここがどこかにある場所へと転移したのではなく、魔術で作りあげられた空間の可能性だ。


魔術でここが作られているのならば、思っただけでつく明かりも、無限に続く本棚も納得ができる。


空間自体を作る魔術式は確立されている。

それは生活の必需品にもなっていて、馴染みのあるものだ。

空間の入り口や媒介になるものへ魔術式が描かれ、倉庫の扉や鞄にも使われている。


収納できる広さはそれを作った人の魔力量に左右され、多少大きな鞄くらいから一部屋分くらいが一般的な大きさだ。


そして空間の魔術式は、持ち主や認証されている人物でなければその空間を開くことが出来ない仕組みになっている。


もちろん空間の中からは干渉できない。


つまり、仮にこの部屋が魔術によって作られているならば中にいるサラには、外に出る手段も連絡を取る方法もないことになる。


サラはこの部屋の得体の知れなさに、ゾワりと背をなぞられた気がした。



マイペースに更新を再開させていただいています。

週一で更新して行く予定ですが、ストックがないので、出来上がり次第投稿する予定です。

よろしくお願いします。

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