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クリスティアンからサラが消えたことを聞いた時、ルードヴィヒはその言葉の意味をすぐに飲み込むことが出来なかった。
今サラがいなくなれば、ルードヴィヒはまたあの地獄のような眠れぬ日々に逆戻りだ。そして、そう遠くない未来に死を迎えるだろうことは容易に想像がつく。
ルードヴィヒには責任感が強く、自分の秘密が明るみに出る可能性よりも、自分を助けることを選んでくれたサラが、黙って去るはずがないと信じている。
自分からいなくなった可能性が低いとなれば、何かに巻き込まれたと考える方が自然だ。
つい先日にも、自身の生命力を無意識に魔力として使っていたことを考えると、サラの意思とは関係なしに何か術が発動してしまった可能性もありえる。
それこそ最悪の場合、サラの命を代償にして。
ルードヴィヒはいつでも最悪の事態を想定し、最小の被害で済むようにと考えを巡らすが、サラがこの世界から消え、あの懐かしさのある温もりに触れることができなくなると想像するだけで、胸がぐっと締め付けられるようだった。
嫌な想像を振り切るように、ルードヴィヒは資料室へと歩みを進めた。