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追記:体調不良のため再投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
「殿下、お加減はいかがですか?」
「あぁ、一晩くらい今までに比べればなんてことはない。今日はフェリクスか?」
「はい」
フェリクスが話しかけ、ソファに座っているルードヴィヒをみるが顔色は悪くない。
「殿下、昨日は申し訳ありませんでした」
「あれはお前一人の責任ではない。監督を怠ったクリスティアンにも落ち度がある。
だが、サラは魔力の使い方をよくクリスティアンから、学ぶことも必要だな」
勢いよく頭を下げるサラにルードヴィヒは頭をあげさせた。
サラのおかげで眠ることができるようになったおかげで、ルードヴィヒは1日なら眠らなくても問題ない程度には、穏やかに過ごせている。
もちろん、昨日のことはサラを失いかねない事態だったのでサラが目覚めるまでは生きた心地がしなかったが。
あれから昨日は眠っていないにも関わらず、体が思いの外軽かったことに、ルードヴィヒ自身が驚いている。
今までは眠れず焦る気持ちと体調がどんどん悪くなっていったせいで、眠れないことに恐怖すら覚えていた。
それが、サラがいるというだけで、一晩眠らずともここまで心穏やかに過ごせるものなのかと思ったくらいだ。
もちろん呪いが解けたわけではないので、サラの協力があるときにはしっかりと魔力を送ってもらい眠りにつくつもりでいる。
少し早い時間だが、昨晩は寝ていないのでルードヴィヒとフェリクスとサラは寝室へ向かった。
「では、御手を失礼します」
いつものようにサラは、眠る準備を整えベッドに横になったルードヴィヒの手を握り、目を閉じて魔力を流し始めようとしたそのとき、ルードヴィヒがサラの手に自分の手を重ね包み込んだ。
「サラ、無事で本当に良かった」
重ねられた手に驚いて目を開ければ、ルードヴィヒの甘やかな視線にサラは一瞬で頬が赤く染まった。
なんと答えていいのかわからず、サラは頬を赤くしたまま蚊の鳴くような声で、ご心配をお掛けして申し訳ありませんと答えるのが精一杯だった。
これ以上目を合わせていると、勘違いをしてしまいそうだと、サラは慌てて目を閉じ魔力を送り始めた。
いつものように魔力を送ろうとすると、思っている以上に勢い良く、ルードヴィヒに魔力が流れ混ざり合っていく。
ーーあれ?
サラは違和感を覚え、ルードヴィヒの様子を伺ったが不快感はなさそうだ。それどころかどこかうっとりとした表情を浮かべているようにも見えた。
「…やはり、心地よいな。サラの魔力が馴染みやすくなっている」
ルードヴィヒは昨日サラに口づけて魔力を送ったときの感覚が蘇り、その心地良さに浸っていた。
「そうですね、昨日までの殿下の魔力の流れとは比べものにならないくらい、感じやすくなりましたし、送りやすくなりました」
今までとの魔力の流れ方との違いに、サラは目を丸くしていた。
ルードヴィヒは笑いながら、驚いているサラの眉間を人差指で軽く押した。
「あぁ、確かに今日はお前のここにシワが寄っていないな」
先ほどと同じような甘やかな視線でルードヴィヒに見つめられ、異性にそんなことをされたことがないサラは、ただでさえ赤かった顔が首から上全部が更に赤く染まった。
ここまでされればルードヴィヒの表情や視線が甘いと感じるのは、サラの気のせいではない。
「お前は、やはり笑っている方がいいな」
サラがぎぎぎと錆びついたブリキのおもちゃのように首をフェリクスの方へ向けると、同席しているフェリクスも見たことのないものを見たようで目を見開いていた。
何事にも動じないように訓練されている騎士であるフェリクスですら動揺している。
そんな困惑した2人の視線を物ともせず、ルードヴィヒは重ねた手を優しくぎゅっと握り直すと、満足そうに目を閉じた。
「で、殿下?」
困惑するサラが声をかけても返事はなく、すでにルードヴィヒは穏やかな寝息を立てていた。
「…フェリクスさん、私殿下に何かしてしまったんでしょうか?」
「私にもさっぱりわかりません。ですがもしサラさんが何かしていたなら、問答無用で叩き切りますよ」
「いえ、断じて何か害を与えようとか何もしてないです!」
「えぇ、そうだと思っています」
「信じてくれるんですか?」
「昨日魔力の測定をするだけで、魔力枯渇を起こして死にかけていた人が殿下に何かできるなんて、これっぽっちも思っていませんので」
「うぅ、事実なだけ言い返す言葉もありません…」
「これも呪いによる影響なのでしょうか?」
「不眠の呪い以外にかかってはいないと思いますけど、魅了がかかっているってことでしょうか?」
「魔力枯渇してたのに、そんなのやる余力はサラさんにはありませんね」
「それはそうなんですけど…」
赤くなったままで涙目でしょんぼりするサラと、困惑しつつも状況を把握しようとするフェリクスが小声で話すものの結局答えなどでず、2人は穏やかに眠っているルードヴィヒが目覚めるのを待つことにした。