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世界大樹と狐の唄  作者: 春ノ嶺
狸と鴉の鎮魂歌
25/293

3-1

 恨んでなどいないと、それだけ伝えたい。

 言う事を聞かぬ身体を止め、喚き立てる口を御して。

 恨みも憎しみも後悔もないと。

 そうしなければ、きっと君は自らを呪うだろう。

 それでは前には進めない、明日は永久にやってこない。

 前だけを見ろ、後ろの事はもう気にするな

 恨んでなどいないから。

 それが唯一つの




















 少女は街外れにいた。

 足を動かす度に真っ赤な血が落ちていく、右手で押さえる腹の傷から、肩に刺さった何かの破片から。

 道を血で汚しながら少女は歩く、行き先もなく、足を引きずるようにして。


 ーおい、こっちに来るぞ。ー

 ー見たら駄目よ、関わったらこっちまで。ー


 どうして、と、聞きたいのはそれだけだ。

 傷付けられた事ではない、誰も助けてくれない事ではない。

 何もせず、何も関わらず、ただ静かに暮らしていたかった。それだけが願いであった筈なのに、どうして世界はそれを否定するのだろう。


 ー取り逃がしやがったな、中途半端な事すんなよ、どうせやるなら。ー

 ーそのうち動かなくなる、ほっときゃいい。ー


 ぼとりぼとりと血が落ちる、同じ分だけ寒さが襲う。

 冷たい、手が、足が、頭が、心が。


 ー早く死ねばいいのに。ー

 ー早く死ねばいいのに。ー


 冷たさに耐え切れず、少女はその場に倒れ伏した。

 ここまでだ、歩き続けても結果は変わらない。足を動かすのをやめ、腹の傷を押さえるのをやめ、生きたいと願うことをやめた。ごろりと仰向けになり空を見上げる、天では星が輝いていた。

 胸に残っていた最後の熱が失われていくのを感じながら、少女はゆっくりと目を閉じて。


 世界が真っ黒になる間際。

 見慣れた、落ち着く姿が見えた気がした。

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